06:てをのばして
「俺の誇りは君だよ」
悲しみの記憶と偽りの事実――それらを混ぜこんだような黒い渦へ飲み込まれようとする中、全てを吹き飛ばす夕焼け色の炎。それを放った手はボロボロに擦り切れていて、ただ見ただけでは頼りなさが際立つだろう。それでも、そのときの炎真にとって目の前に伸ばされた手は、世界中の誰より頼もしく、そして眩しい手だった。
「一緒に戦ってください」
小さな一軒家に揃った、個性的な面々。彼らに比べれば、自分など小さな存在だろう。事実、この中の集団の一つには手も足もでないほど圧倒された。
膝を抱えた手にキュッと力が入る。隣に座るアーデルハイトが、炎真の様子に眉を顰めた。
ふ、と口元が緩むのが抑えきれない。
「でもツナくんは勝ち目がないなんて顔してないよ」
吸い込まれそうになった炎真の身体を引き上げ、過去の絆を取り戻してくれた手。
その手が、今度は炎真の力を必要として伸ばされている。それを、とらない理由はなかった。
綱吉と炎真の目が合う。炎真が笑みを見せると、綱吉も少し口元を緩めて頷き、すぐに表情を引き締めた。
「――今度はこっちからしかけるんだ!」
大空へ、今度は炎真が手を伸ばす番だ。
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テーマ「人外ファンタジー」
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