為す術もなく思い出を風化させる
(牙+鳴、天+螺+李、砂兄弟)



色は匂へど散りぬるを
我が世誰そ常ならん
有為の奥山今日越えて
浅き夢視し酔いもせず




インターホンを押して待つこと一分。
出てきたアイツの顔は酷いものだった。





咎なくて死す・惨





「おー、うまそー!」

手土産の団子を渡して上がった部屋は、久々に訪れたにも関わらず何一つ変わっていなかった。
相変わらずの汚さに眉を潜めつつ、皿に盛られた団子を挟んで机に座る。
出された茶を啜りながら、俺は団子を頬張るナルトを見つめた。

シカマルの結婚発言に、ナルトは地味に堪えているようだった。
二人が相思相愛なのは親しい奴等の間では周知の事実で、知らないのは本人達だけ。
だから今回の事はショックに違いない。
事実目前のコイツは何時も通りを装っているつもりが失敗している。

「…シカマルはいいのか?」

ふと訊ねれば、ナルトはあからさまに動揺して団子を落とした。
それを指で摘まんで口に運ぶナルトに更に続けて言う。

「好きなんだろ」

今度は喉に詰まらせたらしい。
噎せるアイツに茶を渡す。
暫くして落ち着いたナルトは顔を赤くして頷いた。

「引き留めなくていーのか?」

「そんな…迷惑だってば」

湯呑みを両手で包み、その緑の水面を見つめる。
その何処か達観した顔を見つめ、俺は頬杖をついた。

コイツの言いたい事は大体解る。
つまりは性別だ。
一番単純で、其故難解な問題点。

「でも良いんだってば」

もう吹っ切れたから。
そう言って下手な笑顔を浮かべる。
俺も気づかない振りして、笑った。

「じゃあ食べ行こうぜ。失恋記念だ」

「奢りか?」

嬉しそうにナルトの顔が綻ぶ。
単純なヤツだ。

「馬鹿割勘だ」

また笑えるまで、俺が傍に居てやるよ。



***



投げた苦無は真っ直ぐ的に当たる。
けれど中心からは外れてしまっていて、テンテンは舌打ちした。

「精が出ますね」

顎に流れる汗を拭っていると背後からそんな言葉を投げ掛けられる。
振り返るとネジとリーが立っていた。

「二人に敗けてられないからね」

嘘だ。
体を動かしていれば、嫌なことを忘れられるから。
只それだけ。

二人から視線を的に戻し武器を構える。
投げたナイフは中心から右に逸れた。
苛立ちながら次のナイフを取り出す。
それを投げようと振り上げた腕は、ネジによって止められた。

「体が固いぞ。それに慌てすぎだ」

「そうです、テンテンらしくない攻撃ですよ」

真剣にこちらを見つめる四つの瞳に、不覚にも涙腺を刺激された。
潤む瞳を知られたくなくて俯くと、頭を撫でられる。
とても、暖かかった。

「テンテンは真面目ですね」

「あまり溜め込まないことだ」

二人はテンテンとテマリの関係を知らない。
それでも変化を感じとってくれた。
仲間だから。

「…ありがとう」

お陰で、決心できそうだ。



***



砂漠の空を鳥が旋回している。
それを屋上から見上げていた我愛羅の背後に、カンクロウが降り立つ。

「テマリ、来週には帰ってくるってよ」

「…そうか」

同盟国へ嫁入りして行った二つ違いの姉を思い浮かべ、我愛羅は立ち上がる。
その様子を見ていたカンクロウは眉間を深くした。

「本当にいいじゃん?風影のお前が言えば上の奴等だって…」

「テマリがいいと言ったんだ。俺達が口出す権利はない」

カンクロウは返す言葉も無く、仕方なしに頭をかいた。

「…結構薄情じゃん。恋人を捨てて」

テマリに恋人がいることを、弟である彼らは知っていた。
だから願ってしまうのだ。
彼女の幸せを。

「…どんな道でも、テマリが選んだ道だ。俺は精一杯支えるつもりでいる」

弟として。

その一言を風にのせ、我愛羅は踵を返す。
カンクロウは思わず苦笑した。

「俺だってアイツの弟じゃん!」

素直じゃない姉を支えてやりたいのは、同じだ。
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