遅刻(220530)
朝日の白さで眩しい屋外。室内は朝の挨拶や支度の音で、ほど良い騒めきがゆったりと流れている気がする。
兄のロードワークと同じタイミングで起床し、日直のためいつもより随分早く登校していた京子は、自分の席に座っていた。日付と時間割を日誌へ記入し、「良し」とペンを紙から持ち上げる。これで朝できる分の仕事は終わってしまった。授業の準備もとうに済ませ、始業までの数分は手持ち無沙汰となる。閉じた日誌を挟むように肘を置き、行儀悪く顎を乗せる。
親友は委員会の仕事で、始業開始ギリギリにならないと教室へはやってこないだろう。他に親しく話すクラスメイトもいるが、と思って京子はチラリと視線を動かす。
ある程度まとまって談笑に耽るクラスメイトの中、ポツンポツンと目立つ穴がある。朝日に銀の髪を透かせた男子は、周囲をシャットアウトするような雰囲気で真剣にノートへ目を落としている。その斜め後ろの席では、黒髪の男子が腕枕にすっぽり頭を沈めているし、その隣ではこっくりこっくりと炎色の頭が揺れている。
思わず、京子はクスリと笑みを零した。
そう言えば、まだ彼が来ていない。今京子が見回した男子たちと、京子を繋げてくれる潤滑油のような男の子。
時計を見る。始業開始の五分前。「おはよう」と委員会の仕事を終えた親友が手を振って、自分の席に座っていく
ふと、京子は首を回して窓の外を見やった。この席からは、校門がよく見える。担任が教室へ入って来る。あと、一分。
「あ」
バタバタと手足を動かしながら、柔らかい栗色の頭が校門から伸びる塀の影から見えて来た。がんばれ。小さく呟く。あと、三十秒。
あ、とまた声が漏れた。校舎の方から黒い影が一つ、駆けてくる栗色を迎えるように門へと向かっていた。
微笑ましいなぁと京子の口は和らいだ。
――キーンコーンカーンコーン。
「起立、礼」
チャイムを合図に、京子は声を張り上げる。着席する際、もう一度チラリと門へ目をやった。
門まであと半歩という場所で立ち止まってしまった栗色へ、黒い影が何かを振り上げるように駆けだすところだった。
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