19:おぼえておいて
放課後、綱吉は炎真と二人教室に残っていた。先日行われた小テストで、二人は教師も頭を抱えるほどの点数を叩きだしてしまい、期末考査に向けた補習を臨時で受講することとなったのだ。
時間にして一時間ほどか。プリントに向かって同じ姿勢でいたものだから、関節のあちこちがポキリポキリと悲鳴を上げている。グッグと肩と首を回し、綱吉は手の平を天井へ向けた。
「おわ、ったー!」
「うん、僕も」
隣の席の炎真も、ホウと息を吐いて鉛筆から手を離す。
鞄の支度をしながら、綱吉は大きく息を吐いた。
「期末考査に向けてってところは有難いけど、これから帰ってさらに宿題があると思うとなぁ……」
「リボーンの宿題もあるから、大変だね」
「こうしてエンマと話していた方が楽しいのに」
「……そう?」
「うん」
綱吉がすぐに頷くと、炎真は少し俯いて小さく微笑んだ。先に鞄を持って立ち上がっていた炎真は、スッと腰を折って綱吉の顔を覗き込んだ。
目を瞬かせる綱吉の耳へそっと口を寄せ、小さく呟く。
「――」
カ、と綱吉の頬が赤くなる。大きく口を開いた綱吉がガタリと立ち上がると、炎真はヒョイと身を避ける。パクパク口を開閉させる様子を見て、可笑しそうにクスクス笑う。怒りや恥ずかしさを押し留めようと綱吉は俯く。そんな彼へ、炎真はまた顔を近づけた。
「覚えておいてね、ツナくん」
耳元で囁かれ、綱吉はバッと顔を上げる。炎真は、常の彼からは想像もできないほど大人びた笑みを浮かべた。それにさらに心臓をバクバクと鳴らしながら、綱吉はカタンと椅子に腰を落としてしまう。
ヒラ、と炎真は手を振って、座り込む綱吉をおいて教室を出て行った。
一人残された綱吉は、脈打つ耳を手の平で覆い、ギュッと鞄を握った。
「……ほん、とに」
やり場のない感情を持て余し、綱吉は熱くなる顔を冷ますように冷たい机へ額をくっつけた。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -