in the SHIPU
橋の下へ隠れていたシルバーたちの元にも、アクマの手が伸びていた。複数のアクマが合体した巨大なアクマが、町を踏み潰していく。シルバーやクリスたちが応戦する間、橋の下でプラチナは祈るように指を組んでいた。
「プラチナさん、無理をしないで下さい」
自分のマントをそっとかけ、ラクツは傍らに膝をついた。彼と同じファインダーの白い制服を着たファイツとヒュウも、案じるように見つめている。ファイツは少々躊躇うように目を動かした後、ラクツの反対側へ座ってプラチナの手を両手で包んだ。プラチナは驚いて目を瞬かせたが、ふわりと口元を緩めて礼を言った。
「お礼なんて……僕たちファインダーはあなたたちのように戦えない。感謝したいのはこちらの方です」
ラクツの言葉にヒュウは顔を歪め、橋の向こうで繰り返される爆音と風を見つめた。嘗て生まれ故郷で見た光景と重なる。壊された故郷の仇討ちのために教団へ入団したというのに、選ばれなかった自分は、あのときと何も変わらぬまま、見ているだけしかできない。ヒュウは脇に垂らした拳を握りしめ、「くそっ」と呟いた。
「いいえ、私こそ、サポートしかできません。……今も、ダイヤたちの力にもなれない」
「え……?」
「私が今、皆さんにかけたのは過去に負った傷を吸いだしたもの……船にかけていた、いつでも最善の状態に回復させるものではありません」
それは、新しく負った傷には効かないものだ。ただリングに宿った、吸いだした時間によって、彼らの生存を知ることしかできない。
(ダイヤモンド……パール……)
ここではないどこかと、今橋の外で戦う騎士たちへ祈りを捧げるように、プラチナは目を閉じた。



「僕たちはブルー討伐の命令を受けていたんだけど、さ〜っぱり見つからないんだよねぇ」
ピエロのようなファンキーな恰好をした男は、やれやれと言った風に首を振る。傍らの女は腕を組み、ニヤリと笑う。
「だから、その憂さ晴らし、アンタたちに付き合ってもらうわ」
二人がそれぞれ作った指鉄砲を同時に跳ね上げると、そこから飛び出した青い球がレッドたちを狙った。氷の球のようなそれを、別方向から飛んできた火球が相殺した。爆風を振り払うようにキューを振って、ゴールドはニヤリと笑った。
「手前らなんか、俺一人で十分だ」
――カリン&イツキvsゴールド

「ダーイヤ!」
扉を開いた瞬間、飛びついて来たのは赤い髪の少女。真っ直ぐ飛びつかれたダイヤは驚き、目を瞬かせる。レッドたちも驚いて言葉が出ない。どうしたら良いかわからず硬直する面々の前で、ニッコリと笑ったマーズは腕を回したダイヤの首を引き寄せ、こともあろうか、
「再会のちゅー」
唇を重ねてきたのだ。レッドたちは唖然とする。張本人のダイヤも、解放された口をポカンと開けたまま放心している。
「ダ、ダイヤぁああ!」
「しっかり、しっかりしてください!」
レッドとルビーが慌てて肩を揺するが、あまりのできごとに反応が鈍い。グリーンは心の中で合掌し、パールには黙っていようと決めた。
――マーズvsダイヤモンド

「ダメだ、ダイヤモンド!」
崩れかけた鎧姿のダイヤが、光に溶けて見得なくなっていく。あんな壊れかけのイノセンスと傷だらけの身体で、五人でも苦戦を強いられた相手へ敵うわけがない。グリーンに引っ張られる形で扉へ飛び込んだレッドは、部屋へ戻ろうと必死に腕を伸ばした。
「……レッド!」
グリーンはその手を掴み、レッドの顔を自分の方へ向けさせた。
「大丈夫だ」
「……グリーン……」
「ゴールドもダイヤも、俺たちも、みんな揃ってホームへ帰る。誰も諦めてなんかいない」
お前だってそうだろう、とグリーンはレッドの頬を撫でる。レッドはそっと自分の手を重ね、鼻を啜った。
「……諦めるのは、絶対に嫌だ」
「僕たちもですよ」
ニュ、と二人の間を割くようにルビーが顔を出す。ブラックは少々不憫そうに顔を歪めていた。ルビーはさり気無くレッドの手をとり、階段を昇った。エスコートするような彼に、グリーンは口元を引き攣らせる。
「おい」
「あまりいちゃつかれると、ちょっとだけゴールドさんが可哀そうなので」
グリーンの睨みをニコニコと受け流し、ルビーはパッと手を放した。それはそうと、とルビーはレッドを見やった。
「ダイヤは呑気だけど、やるときはやる子ですよ。ゴールドさんも。信じて待ちましょう」
ルビーはニッコリと笑って、階段の先にある白い扉を開いた。
目も眩むような閃光がしたと思っていたが、扉を潜ってしまえばそこはどちらかと言えば薄暗い部屋だった。広々としたホール。柱が立っただけの壁は、外の風景を見渡せるようになっている。街で見上げた塔の最上階だ。ホールには美味しそうな食事の並んだ長いテーブルが置かれていて、そこに二人が座っていた。一番奥に座っていた青年がルビーたちに気づき、ヒラリと手を振る。
「やあ、待っていたよ」
「N……」
「座って食事でもどう?」
「……ミツルくん」
ナイフとフォークを置き、Nは紙ナプキンで口元を拭う。
「最後の扉はここの上にある――正真正銘、ラストバトルだよ」
ブラックたちはゴクリと唾を飲みこみ、汗の浮かんだ手の平を握りこんだ。
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -