相互記念
「主将。」

黒子の影の薄さには慣れたつもりだったが、集中しているときなんかに後ろから話し掛けられると未だに驚いてしまう。

「ぅおっ?!黒子?!」

狭い部室でオレは一人あわてて黒子の前に立ちはだかった。びっくりした何事だよ!

「…………。」

数秒、何か言いたげにオレを見上げた。が、本題を優先しようと思ったのかすぐにいつもの無表情になって(といっても表面的には大して差はない)、オレに淡々と訴えた。

「小金井先輩が二号を洗ってあげたいって言っているんですけどいいですか?」

その言葉にオレはああ、と昨日を思い返す。どこでやんちゃしてきたのか、昨日の練習が終わったあと体を泥だらけにして帰ってきたのだ。それはもう、滴るくらいの勢いで。一日たった今だって毛並みが薄茶に変色している有様だった。
それを見て少し愕然としていた時の黒子の顔を思い出して少し笑いそうになってしまう。一番洗ってやりたいのは小金井ではなく自分だろうに。

「カントクの許可は貰えたか?」

聞けば、世話できることがうれしくのか、肯定を示す声は弾んでいる。目を少し和ませて口角をほんの少し緩ませる、笑顔。黒子の無邪気な笑顔。普段は無表情な彼の歳相応な表情に、日向の心も浮き立った。

「じゃ、すぐ行くぞ−−−−コガはほっとくと何しだすかわかんねーからな。とめる水戸部も増長させる木吉もいることだし。」

本当は小金井が心配ではなく、もっとはじける黒子の笑顔が見たかったからだったけれど、あえて言わずに黙っておこう。















2010.11.27
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