僕と彼の生まれ変わ理論
(赤黒)
「テツヤは生まれ変わったら、何になりたい?」
日の傾きかけた時間。赤い光が満たしつつある教室は、不思議な程静かで。そこに二人しかいない所為なのだろうが、何故か世界に二人だけになってしまったかのような。そんな錯覚が黒子を襲う。
「生まれ変わったら、ですか」
心なしか傾いているようにも感ぜられる中、淡々と黒子は反復する。すると赤司は満足そうに頷いた。
「人間以外がいいのでしょうね」
「そうだね。その方が面白そうだ」
黒子は顎に手を当てる。
「猫、ですかね」
「無難だね」
「悪かったですね。赤司くんは?」
「僕?僕は…」
とさり、と。それほど離れても、かと言って近くにもいなかった筈なのに。赤司はいつの間にか黒子の目の前に居て、その体を床に押し倒していた。
沢山の机の脚の隙間から覗く床は、夕日の所為で変色している。
「テツヤといられるならなんでも良いよ」
「…常套句ですね」
「ついでに言えばテツヤを真っ先に食うか殺すか出来る動物」
「……」
骨まで愛してる。
そんな愛の言葉が目の前の男から漏れるとは思わなくて。黒子は不覚にも胸を高鳴らせた。自分達は可笑しいのだと、頭の隅で理解しながら。
「…やっぱり人間がいいです」
「奇遇だね。僕もだ」
爽やかに笑いながら、赤司は黒子の唇に自身のそれを重ねた。
(ただ…)
それを素直に受け止めながら、黒子は彼の背後に広がる無機質な天井をぼんやりと眺める。
(貴方とちゃんと結ばれる為に女に生まれ変わりたいと言ったら…)
気持ち悪いと言われるだろうか。男が良いのだと。
馬鹿を言うなと怒られるだろうか。どんな姿でも構わないのだと。
それを確かめるのが怖いから。
黒子は瞼を閉じ、赤司の赤い髪に指を絡めた。
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1000HIT記念小説二位の赤黒です
リクエスト有り難う御座いました
2011.10.26