赤い×印だらけのカレンダー
(黒子受け)
※LIGHT様リクエスト『木吉&火神&若松&笠松の4人で黒子に片想いなほのぼの純粋話』
※松松コンビと黒子は幼馴染み



カレンダーの数字に×印をつける。赤く丸をつけた数字は、24。今つけた数字は、22。今日は23。

クリスマスに向けての、カウントダウンだ。





火神は腕を組み、ベッドの上で胡座をかいていた。目の前には、携帯電話。ある人物の番号を入力し、あとはボタンを押せば通話可能という状態。しかし、その格好で三十分以上が経っていた。意を決して、携帯電話を取り上げる。親指をボタンにのせ、力を―――――

「…っ動け!」

指に力は入っている。しかし、ボタンを押すために働かないのだ。いくら念じても、指はそれ以上動かない。

「……」

肩を落とすと同時に、溜息を吐く。何を気張っているのだ。相手はクラスメイトであり、チームメイトであり、相棒だ。何時ものように、然り気無く、普通に。

「…なんて言えば良いんだ?」

火神は今、明後日に控えた、クリスマスに、ある人物を誘おうとしている。彼と、共に過ごしたいという思いから。

「…てか、誘ったとして、何をすれば…」

何時も一緒に、放課後はマジバへ行っている。他に何かすることはあるのだろうか。これも見ようによってはデートである。しかし、クリスマスは別であるというか。好意を持っている相手と、特別な行事を共に過ごしたいというのは、普通の感情である。

「…はあ」

火神は溜息と共に、ベッドに倒れこんだ。枕に顔を半分埋め、右手に持った携帯電話を開く。

「…」

画面に写った相手の名前に、我知らず頬が火照った。

パタン、と携帯電話を閉じる。

体を反転させて、天井を見つめる。唇に、冷たいそれを触れさせた。

「…黒子」

何故か、あと一歩が踏み出せない。理由なんて、解りきっている。自信がないのだ。相棒という立場にいても。彼に勝てるという自信が。

黒子に、頼れる先輩として慕われる、彼に。





木吉は深い溜息を吐いて、頬杖をついた。

開いた携帯電話の画面には、たった今届いた級友からのメールが表示されている。

「…応援は有り難いんだけどねぇ、リコ」

それを素直に言えたら、苦労はしない。彼女から届いたメールの内容は、恋人とクリスマスを過ごす為のデートスポット一覧。いずれも、二人で訪れれば永遠の絆が約束されるという、有名どころばかりである。確かに、そこに意中の彼を誘うことが出来れば、どんなに良いか。

「…けど、なぁ…」

その一歩が、踏み出せない。

平均より大きいと言われるこの手で、触れたら、すぐに壊れてしまいそうな、細い身体。頭を撫でる度、脆く崩れてしまいそうで、壊れ物を扱う時のように、ドキドキした。その胸の高鳴りが恋愛感情だと気付いたのは、最近のこと。

やはり、クリスマスには、喩え恋人という関係でなくとも、二人で過ごしたい。彼が、自分のことを『頼れる先輩』としてでしか見ていなくても。

一歩を踏み出せないのは、アレが原因だろうか。

「…なんだかなぁ…」

苦笑と共に溜息を溢す。

怖いのだ。相手が、先に別の人物に振り返ってしまいそうで。

ぶっきらぼうで、実は思いやりのある、彼に。





「だぁ、畜生ぉ!」

若松は苛立ちのまま、携帯電話を放り投げた。

「なんだ、電話の一つくらい…!」

一喝し、携帯電話を手に取る。電話番号を入力して、さあかけるぞ―――――というところで、何時も止まってしまう。

「…いやいや、相手は幼馴染みだぞ。なに緊張してんだ、若松孝輔!」

昔から家族ぐるみで遊んでたろ。今年は単に二人きりでクリスマスを過ごしたいってだけだ。

―――――二人きり。

その単語で、身体中が熱くなる。

幼い頃から共にいた彼に対して今更自覚した感情が、自分を不自由にする。普通に、今まで通り接したいのに。いや、寧ろそれ以上の関係に進みたいという思いもある。

簡単なことなのに、答えを出せない自分が嫌になる。こんな時、冷静な一つ年上の幼馴染みが羨ましい。きっと嫉妬だろうけど。

「…はあ」

肩を落として、携帯電話を閉じる。

何時も劣等感を感じる。

面倒見の良い先輩に。





笠松は白い息を吐いた。マフラーに顔を埋め、肌を刺す寒気を和らげる。携帯電話を開いて時刻を確認すると、部活が終わった時間だ。間に合ったらしい。

今日は12月24日。明日のクリスマスに、幼馴染みを誘う為、遥々やってきたのだ。

昨日までは家で携帯電話を前に、唸っていた。切羽詰まった今、四の五の言っていられない。間接的にダメなら、直接当たって砕けろ、である。

しかし、考えることは皆同じだったようで。

「…よお」
「…幸さん」

もう一人の幼馴染みである若松の姿を、校門に見つけた。彼の隣に並んで校内を見れば、見慣れた水色の頭が歩いてくる。両脇を固めるのは、高身長の赤髪と茶髪だ。

「…考えることは皆同じ、か」

小さく呟いて、笠松は彼らの下へ向かう為に足を踏み出した。

後ろから若松の追ってくる足音が聞こえる。





勝てる自信はないけれど、彼を渡す気もないから。

まずは明日の予定を決定させようか。

「―――――黒子、明日―――――」

君が、この手を取ってくれますように





2010.12.23
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