絆堅固
(水金)
※匿名様からのリクエスト『水金でほのぼの書き初め』
「よしっ!」
ジャージ姿で腰に手を当てる小金井の前には、長い一枚の和紙と、その横に並べられた習字セット。小金井の隣に立つ水戸部も、ジャージの袖を捲って、同意するようにコクリと頷いた。
「やるぞ、水戸部!―――――書き初めだ!」
誠凛高校の冬休みの宿題の一つに、書き初めがある。新年の目標を好きに書いてこいというもので、その為お手本などない。従って独創的な作品が冬休み明け、校舎の廊下に並ぶことになる。その所為で新年早々、からかわれる者も出てくるのだが、それはまた別の話。
まあ、兎に角新年明けまして、小金井は水戸部を誘って宿題を片付けようとしているわけである。要約すると。
「けど新年の目標って何がいいかな」
床に胡座をかいて、小金井は座り込んだ。水戸部も首を傾げながら、正座する。
『家内安全』?なんか年寄り臭い。『健康第一』とか『勉学向上』とか。やっぱり『目指せ、日本一』だろうか。どれもピンとこないのは何でだろう。
ふと、小金井の目に、首を傾げる水戸部の姿が入った。
「……」
「……?」
じっと見つめていたら、何事かと見つめ返された。
「んにゃ、なんでもない」
にへらっと笑う。更に、首を傾げられた。
「さっさと書こうぜ」
筆を手に取ると、水戸部が肩越しに様子を伺ってくる。普通に上手い字で書かれた書き初めに、水戸部の頬が弛んだ。
「やっぱこれかな!」
ね、と振り向けば優しい笑顔で首肯された。
『ずっといっしょにいられますよう』
絆堅固
(七夕じゃないのよ?)
(あ!)
(…!)
(…まあ、二人らしいけどね)
2011.01.01