甘味とスパイス
(鹿鳴)
太陽の光を集めたような金糸に、顔を埋める。背中から回した腕に力を籠めて鼻から息を大きく吸うと、ナルトは擽ったそうに身を捩った。
「シカマル?」
「…良い匂いすんな、お前」
首を傾ぐナルトの旋毛に口付けて、ゆっくりて唇をずらす。項に辿り着いて汗ばんだそこに舌を這わせると、鼻にかかった声を漏らしてナルトの体が強張った。
「…しょっぱい」
「言うなってばよ」
ぱしりと額を叩かれる。直ぐに離れて行くその手をとって口づけた。ぴくりと反応するナルトから漏れる声は甘い。けど汗ばんだ肌はしょっぱくて。仄かに香るのは、太陽みたいな暖かさ。こんな極上の料理は何処に行ったってない。目の前の彼以外。
「ほんと、お前って…」
正面から引寄せて、耳元で囁いて、耳朶を甘噛する。途端真っ赤に赤面する様子でさえ愛しくて、笑みを浮かべた唇を彼のそれに重ねた。
―――旨そう
低く甘く呟かれた言葉を反芻しながら、ナルトは悔しい思いで自分を押し倒す男を見つめた。
(お前だって…)
指の間を滑り落ちる黒髪も。甘い低音も。眉間にちょっと皺を寄せる笑顔も。全てこちらを煽る。
(俺にとってはスパイスだってば)
調子に乗るから、本人には言ってやらないけど。
2011.08.13