今年もそういうことで
(日黒)
冬の朝は寒い。それが日の出前なら尚更だ。白い息を吐いて、黒子は体を震わせた。
「寒…」
隣を歩いていた日向がボソリと呟く。マフラーに顎を埋め、黒子も小さく同意した。
「……」
日向は横の、鼻を赤くして震える後輩を一瞥し、白い息を盛大に吐き出した。小首を傾げるように彼を見上げた黒子は、ぐい、と手を引かれバランスを崩した。
「悪い」
ぽす、と黒子を受け止め、日向は彼を立たせる。掴んだ左手は、離さぬまま。
「……!」
は、として黒子が顔を上げると、日向は既に前方を見つめていた。その横顔を、人工灯とは違う光が照らして。彼の視線の先を見やれば、灰色の海から白金の光が溢れ出していた。
「黒子」
思わず見惚れていた黒子は、その声で我に返る。少し上にある先輩の顔を見上げれば、逆光で陰ったそれがニカリと笑みを浮かべた。
「今年も宜しくな」
寒さの所為か、彼の鼻頭は赤い。何故だか笑みが溢れて、黒子の頬が熱くなった。
「不束者ですが」
title HENCE
2012.01.01