to you
(誠凛と黒子)
これ上げるわ!
大分伸びた襟足を一つに縛って、彼女はニコニコと笑った。手渡されたのは、バレンタインなどに女子がよく使う半透明の袋で、可愛くラッピングされたその中には、黒い炭のようなものが入っていた。多分食べ物なんだろうけど、その何かを聞けなくて、お礼を言いながら、処理の仕方を考えた。
『H』
手出せ
眼鏡のレンズを光らせながら、彼は言った。言われる通り手を出すと、小さなキーホルダーを乗せられた。鎧姿の人間をデフォメル化した、ガチャガチャでよくありそうなタイプ。
伊達政宗だ
胸を張って言う彼は、そういえば戦国好きだった。
『A』
はい
試合中アイコンタクトの多い彼は、手帳サイズのノートをくれた。日記帳風な装飾のそれは、三食の内容や、一日に歩いた歩数を記録できる、所謂ダイエット手帳。
体調管理用に使え
なんだか彼には隠し事が出来ない気がしてくる。有り難く受け取った。
『P』
はい!
猫目の彼は、元気良く手をつき出した。
味は悪くないと思うぞ!
器用貧乏と自負している彼が作ったクッキーは、犬の形をしていた。
『P』
……!
無口な彼は、オズオズと四角い箱を差し出した。何でもケーキを作ってくれたとか。夕食後を楽しみに思いながら、丁重に礼を言った。
『Y』
はい、どうぞ
細い目で弧を描いて、彼は微笑んだ。シンプルな水色のブックカバーは、丁寧に青いリボンがかけられていた。
欲しがってたろ?
否定出来なくて、ちょっと肩を竦めた。
『B』
今日誕生日なんだってな!
陽気な彼はいつもの飴を差し出した。
やるよ!
袋ごとくれたけど、この黒飴は以前断った筈なのだが。
『I』
ほい
同級生の部員では一番面倒見の良い彼は、新しいボトルカバーをくれた。前に新しいのを買うか迷っているとぼやいていたのを覚えていてくれたらしい。
『R』
明るい彼は、鈴付きのミサンガを振って見せた。腕に着けるタイプで、彼曰くリストバンドと併用して欲しいと言う。
だって、そうしたら見失わずにすむだろ
猫ですか、というツッコミは黙っておいた。
『T』
ん
坊主頭の彼は、昼休みに購買で焼そばパンをおごってくれた。初めて食べたけど、中々に美味しい。今度、自分でも買ってみよう。
『H』
わん!
黒い尻尾を振りながら、彼は駆けよってきた。口に加えていた彼用のおやつを置いて、こちらを見上げてくる。くれる、ということらしい。彼の頭を撫でると、また吠えた。
わん!
『D』
お前、今日誕生日なの?
放課後、マジバでいつものバーガー山盛りにかかじりつきながら、赤髪の彼は訊ねた。今更かと思いながら、肯定する。
ふーん…
彼は一つのバーガーを頬張って、気の無い頷きを返してきた。
ほらよ
そう言って投げて寄越したのは、バーガー。山の中から取り出した一つだ。
やるよ
そう言って、新しいバーガーにかぶりつく。彼の底なしの食欲に感心しつつ、礼を言って包みを開けた。そういえば、前にもこうしてバーガーを貰ったな、なんて思いながら。
『A』
プレゼントに同封された、12のカード。僕は自分で白紙のカードに、ペンを走らす。多分、これで正解の筈だ。
『Y』
『HAPPY BIRTHDAY』
黒子ハピバ誠凛バージョン
2011.02.01