青峰×ロスタイムメモリー



▽拳を離した話

いつの間にか影は消えた
溜息ばっかが溢れていく
寝転がって 一人夢見ていた
歩道橋の階段の上 荒んだ僕らは歩いていた
夏の温度が目に残っていた

「つまらないな、やめてしまおうか」
君にそう言った
「駄目です」なんて言って
君は僕の襟を引いた
「そうだよな」
僕はちょっと笑って君の拳(て)をとった
『本当のところは?』

「最強」なんかじゃ満たされない
張り合いないから腐っていく
現れてくれれば良いのにな
何回やっても僕は負けない
期待感ばっかが募っている
当然今日も 好敵手(それ)は来ないのにさ

「五月蠅いな、黙れ、黙れ」って拳を
振り上げ、ただ殴って
何もしないでただ、のうのうと 惰眠を貪った

「夏が夢を見せるのなら、
どうか変わり始める前へ」
汗で滲んだ日々が 空気を揺らして
脳裏を焦がしてく

16歳になった少年
また何処かで待っていたんだ
カゲボウシ 滲む姿を思い出して
炎天下に揺らいだコート
笑っていた君が今日も
「行きましょう」って言って ユラユラ消えた

「心配だよ」と泣きそうな顔
隣人には関係ないさ
解ったようなフリをしないでくれ

朦朧 今日も適当でいよう
昨日のペースで歩いて行こう
退屈で死なないように

叶わない夢を願うのならいっそ
掠れた過去を抱いて 覚めない夢を見たい
当然のように閉じこもって

「それじゃあ、明日を失くしてしまうよ」

それならそれで良いさ
つまらない日々を殺すように
手を止め、『一人』を選ぶから

16歳、腐った少年 また今日も願っていたんだ
呟いた君の言葉に しがみついて

「お前だって
どうしたって勝てやしないよ」なんて
呟いて息を静かに吐いた

戻らないあの日が痛くて 誰も触れないで

「聞いているの」と彼女は問う
理由はなんだか解っていた
望んでいたものがすぐそこにあった

最高潮 走り出す少年
「あの頃」に戻っていたんだ
煌めくその笑顔は 懐かしくて

「負けたのか、俺は」なんて
「次は勝つから」なんて
向い合って拳を ぶつけ合った
カゲボウシが そんな僕を 見つめていたんだ

KUROKO

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テーマ「人外ファンタジー」
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