混合小説・ダイジェスト



「よし、エントリー完了! あとは勝ち進むのみ!」
「私も、コンテスト部門にエントリーしてみた。お互い頑張ろうね、ブラックくん」
「おう! ……ん、あれは?」
「ああ、開催式ね。バトルステージでやるみたい。各地方のチャンピオンも来てるって……」
「なにぃ!」

「あれって……」
「なんで、お前が……! ――トウヤ!!」
「トウヤくんが、イッシュチャンピオン?!」
「あー……だから、会いたくなかったのにな……」

「キョウヘイがバトル部門に?」
「うん、バトル科目で成績優秀者になったから、チェレン先生がどうかって」
「はーん。まあ、バトルの様子はそこの画面で中継されるし、応援してやっか」

「おい、あれ……!」
「キョウヘイくん……じゃ、ない……まさか。でも、なんで?」
「一般人もそっくりだって言ってる……やっぱり似てんだよな、あの二人。どういう関係だ?」

「……なんで、お前が」
「……成り行きだよ。……本当はリーグチャンピオンの護衛任務だったのに、そのリーグチャンピオンが強引な人で……って、君には関係ないか」
「っ俺は、お前に!」
「冷静さを欠いてすぐに熱くなる――それが君の落第点だ、コードネーム黒の一号」
「俺は、黒の一号じゃない! ――トレーナーのキョウヘイだ!」

「双子? 家族だったのか、あの二人」
「ポケモン警察のエージェントとなるべく育てられた子どもたちだ。どういった経緯、血筋でそうなったのか知らないが、あの姿形を見る限り血縁関係はありそうだな」
「あらあら、そういう子の手元へ渡っちゃう辺り、数奇な運命よね、図鑑所有者って」
「……仲良くないみたいだな、あの二人」
「家族なのに、ね」
「……レッド」

「エメラルド、クリスさん!」
「サファイアちゃん」
「ほんとに来た」
「バトル部門に参加しているんでしょ? 調子はどう?」
「順調ったい。私の今日の分は終わって、続きは明後日なんよ」
「あれ、ルビーは? もう明日のコンテストの準備?」
「あー……それが……どっかで不備があったらしくて……ルビー、今はバトル部門に参加してると」

「なんで僕がこんなこと……まさかキャンセルできないとは……」
「あ」
「え――な、なんで、あなたが、ここに」
「リハビリだ」
(確かにサファイアが、今は武者修行中だとか言っていた……)
「お前も参加しているのか……意外だな」
「ミスですよ。ポケモンやトレーナーの体調不良以外を理由に、キャンセルはできないみたいで」
「そうか……」
「……なんですか、その丁度良いみたいな目」
「俺はよく無表情だと言われるが、よく分かったな」
「ええ。あのサファイアのお兄さんとは思えないほど」
「それだ。妹の感情を無視するわけではないが、やはりここは兄らしいことをしておいた方が良い――と、コトネさんから言われた」
「……つまり?」
「俺より強い男でなければ、妹はやれん」
「……別に、僕はサファイアとは、」
「そうか、ならこの話はここまでで」
「……〜!」

「来たのか、エックス」
「どうも……本当にチャンピオンだったんですね」
「代理だがな」
「もう、エックスったら」
「その節は、弟がお世話になったようで、ありがとうございます」
「何だよグリーン、その節はって?」
「レッド、それは……」
「…………へえ」
「……おい、何だその顔は」
「いいえ? ちょっと自分で納得しただけです」
「何をだ、何を」
「いやあ、今でも思い出しますよ。グリーンさんが恰好つけてボールを投げて結局――」
「エックス!!」
「え、何々?」
「その話、私も聞きたいわねぇ」
「……〜お前ら……!!」

「タ、タマちゃん?」
「不安がっていますよ、そのポケモン」
「えっと……あなたは?」
「僕はイエロー。ちょっと信じてもらえないと思うんですけど、ポケモンの心が読めるんです」
「え……それって、Nさまと同じ……」
「あなたの不安が、ポケモンにもうつっているんです。トレーナーが迷えば、ポケモンも迷いますよ」
「わ、私は、トレーナー……じゃ……」
「? なんでですか? 図鑑を持っているんでしょ?」
「え……」
「ポケモン図鑑はトレーナーの証。ポケモンとの絆を、一つの形にしたものでもある」
「これは、たまたま貰っただけで……」
「そうか、お前が否定するなら俺も強くは言わない。……だが、運命というものはある。こと、そのポケモン図鑑においては、どんな形であれ手にすれば、不思議とそれに巻き込まれるものだ」
「うん、めい?」
「ポケモンとの絆……そして、図鑑所有者同士の絆です」
「! あなたたちも?」
「申し遅れました。イエロー・デ・トキワグローブ、トキワ出身の図鑑所有者です」
「同じくトキワ出身のシルバー、図鑑所有者だ――まあ、望まない戦いを引き寄せることもあるのだがな」

「相変わらず、ファイアからの連絡はなし?」
「ああ……」
「ちょっと、辛気臭い顔していると、お客さんとポケモンが逃げちゃうよ」
「うっせ……」
「いっちゃんもイーブイも、久しぶりに家族に会いたいよね〜」
「……何だよ、俺が迎えに行かないから悪いみたいな顔して」
「ブルーがね、そういう人はヘタレって呼ぶんだって教えてくれたわ」
「……うっせ」
(オーキドの男はヘタレばっかりなのかしら……)

「な、なんだよ、お嬢さま。俺だけ引っ張って」
「私はすっかり失念していました。先輩方を見て気づかされました。この一大イベントはつまり、絶好のデートシチュエーション!」
「デ……デ?!」
「私のことはお気になさらず。コウキにポケウッドの女優さんを紹介していただきましたので、コンテストやバトルの特訓は二人がいなくてもできます。パールは是非、ダイヤを誘ってフェスタを楽しんでください」
「ちょ、ちょっとお嬢さま! 俺とダイヤはそんなんじゃ!」
「当たって砕けろ、恋はマンムーの突進のように攻めろ! ――と、コトネさんもおっしゃっていました」
「あの人の言葉を真に受けるのはどうだろうかー」
「では、ご武運を、パール!」

「お嬢さま、なんだって〜?」
「いや、うん……ちょっとコウキに紹介された女優さんに師事するから、二人でフェスタを楽しんでいて良いって」
「そうなんだ〜、大丈夫かなぁ。コウキくんの知り合いなら、すごい人なんだろうけど〜」
「ああ、そうだな……何だよ」
「ん〜。パールと二人っきりって久しぶりな気がするね〜」
「そうか? そうかもな」
「うん。なんか、ちょっと照れ臭いや」
「だ、ダイヤ……!」
「えへへ」
「……い、行こうぜ」
「うん」

「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん……ちょっと無茶しすぎちゃったかな……久しぶりの発作だ」
「とにかく、座ってください。ヒュウくん、お水を」
「大丈夫ですよ、ほら……」
「すごい……さっきのロゼリアも酸素マスクを取り付けていたし、訓練を受けたタブンネとラッキー以外に、こんなに適切な介護をするポケモンがいるなんて」
「あはは、ある意味、この子たちは訓練を受けたようなものだから」
「お体、弱いんですか?」
「生まれつきね。これでも最近は丈夫になった方なんだ。初めての土地で、気候に身体が慣れてなくて……昔はしょっちゅうこういったことがあったから、僕のポケモンたちは、応急手当くらいはできるようになったんだ」

「ハルカ、ヒカリ!」
「セレナ! こっちよ」
「ご愁傷様かも」
「うう……」
「良いじゃない、今日は女同士で楽しみましょう」
「そうそう。で、隙を見て突撃しちゃえば良いかも。同じ島にいるんだから」

「シンジ、ヒロシ、ジュン! アランにシューティーまで! みんなバトル部門に参加していたのか」
「久しぶり、サトシ。僕は、ポケモンレンジャーの手伝いで会場の警備にね」
「おう、久しぶり! 俺とシンジは勿論参加だ! シンジは家の手伝いも兼ねているみたいだけど」
「……フン」
「俺も、プラターヌ博士の手伝いだったのだが……ダイゴさんに、ちょっといろいろと」
「そうなのか」
「……ちょっと、紹介もなしに話を続けないでくれるかい」
「ああ、悪い。ヒロシに、シンジにジュン、それからシューティーとアラン。皆、俺が旅している中で出会ったライバルだ!」
「……ほお」
「へえ……」
「はあ……」
「サトシ、その紹介の仕方はまずい気がするぞ、主に一部に対して」
「まあ、僕は気にしないけど……」
「何が?」
「相変わらずだね、サートシくんは」

▽事件発生

「あれは……ポケモン?」

「な!?」
「いきなり場所が変わった……?」
「強制テレポート――この人数と範囲、かなり強力なエスパーポケモンか!」

>KANTO section VS ボルトロス
トウヤ「トウコちゃんたちはどこに……!」
アクア「いっちゃん、下がってて。お願い、カルカン!」
ソウル「くそ、ヒビキ……! メガニウム、急いで合流するぞ!」
ユウキ「これは、俺も予想外だ」
ルビー「僕もですよ……まさかあなたと、こうして戦うことになるなんて」
サファイア「私だって、見ているだけじゃなかと! きるる!」

>JOTO section VS トルネロス
カルム「カロスチャンピオンとして、ここは割らせない!」
トウコ「行くわよ、メアリアン! 押し切れ!」
ホワイト「わ、私も! ポカちゃん!」
シゲル「僕は一戦を退いた学者なんだぞ!」
シンジ「ち、使えない奴だ」
イエロー「この泣き声……あのポケモンからじゃない。もっと近くから聴こえる……」

>HOUEN section VS ビジリオン
コトネ「伝説だかなんだか知らないけど、このコトネさまをなめないで!」
セレナ「その石に触っちゃだめ!」
キョウヘイ「俺は、アイツとは違う!」
メイ「ねえ、もし、あなたのポケモンがもうプラズマ団によって……」
ファイツ「え、メイさん?」
ヒュウ「メイ?」

>SHINOU section VS コバルオン
レッド「この寒さは、一体……!」
ダイヤ「な〜んか、また面白くない感じがする……」
ラクツ「あれはコバルオン……? どういうことだ、ケルデマル」
クリス「伝説のポケモン? どうして、私たちに敵意を向けているの?」
ラルド「く……! 俺の土が効かない……!」
エックス「……こもったままじゃいられないね」

>ISSH section VS ランドロス
コウキ「これは……皆、悪夢に侵されている……?」
リーフ「起きているのは俺たちだけ、か?」
ヒビキ「一体何の目的で……」
ジュン「まさか、あのポケモンの仕業か?!」
ブルー「やっぱりこうなっちゃうのね〜」
シルバー「……俺は、行かなければならない。道を塞ぐなら、退けるのみ!」

>KALOSU section VS テラキオン
グリーン「この動き、俺たちを見定めている……誰かを捜しているのか?」
ゴールド「イッシュの伝説に、捜される心当たりはないっすよ」
パール「何だってんだよ!」
ブラック「くそ! こんなときに……!」
アラン「何であろうと、倒す!」
ハルカ「私たちも負けてられないかも!」
ヒカリ「みんなの楽しみを邪魔するなんて、許せない!」

>??? Section VS キュレム+???
サトシ「あれは……キュレム?」
ヒロシ「この寒さの原因は、あれか?」
シューティー「全く、常識的じゃない!」
プラチナ「寒さには慣れています。お気遣いなく」
ミツル「けほ……僕だって、やれることがある筈だ」
ワイ「エックス……何を考えているの?」

「これは……――絶好のリベンジチャンスだ」
「コ、コウキさん?」
「ダークライの悪夢のトラウマを、ここで払しょくする! ――レッツプレイ、ノクターン!」
「……悪夢のトラウマを、それを打ち消す性質のポケモンで対抗するんじゃなくて、悪夢そのもの――ダークライ――を操ることで払しょくするなんて……お前も大概、力で押し任すタイプだよ、コウキ。そう思わないか、クレセリア?」

「イッシュ神話とカロス神話……ポケモンによる破壊と創造の二つの神話が、実際の歴史だとしたら……!」
「コバルオンたちもトルネロスたちも、戦争からポケモンたちを守っていた……神話にある最終兵器を使おうとしている人間が、図鑑所有者の中にいるってことか?!」

「リーフからのメールに気づいて来てみれば……これはどういう状況?」
「ファイア! お前は遅すぎんだよ!」
「取敢えず、あれが敵か」
「そのポケモンは……!」
「――いけ、デオキシス」

「おい、メイ――お前、あのゴチルゼルはどうした?」
「……」
「お前が小さいときから大切にして、プラズマ団に浚われた、けどやっと取り戻したって言っていたゴチルゼルだ! どうしたんだよ!」
「――チルダは、取り戻せる。『取り戻せる』って言ったのよ。やっと、その方法を見つけたから」

「早く気づけば良かったんだ。いつもならボールから出しているコーラル――ニンフィア――を、僕は兄さんが帰って来てから一度も見てない。腰にボールは六つ揃っているから、入れたままにしているんでしょ? どうして?」
「……エックスたちが巻き込まれた騒動の少し前だよ。兵器の材料として、コーラルが奪われたのは」

「この島自体が、神話にあった最終兵器の再現――!?」

「たくさんのポケモンたちが集まるこの場で、私は大切なポケモンを取り戻す――!」
「衰弱したコーラルを救うには、もうこれに賭けるしかないんだ!」

「やっぱり、あなたは……――」
「……久しぶり、ファイツくん。しかし、再会を懐かしんでいる暇はない」
「うん。……ありがとう、助けてくれて」

「キュレムと一緒にいるのって、ゴチルゼル?」
「あのゴチルゼルは、一体――」

「アンタに、何が分かるんだよ!!」

「会うたびに口煩いお節介を、ポケモンタワーで見かけたことがある」
ポツリと溢されたファイアの言葉に、図鑑所有者たちは目を瞬かせる。ただリーフは、何かを思い出すように眉を顰めた。
「ただの観光だ、なんて軽口を叩いていたそいつはそれ以降、旅立ちの日から大切に育てていたラッタのことを口にしなくなった」
「ファイア……」
「戦いは苦手だなんて言いながらも、リーグ準決勝まで上り詰めた女の子を、俺は知っている」
今度は、アクアが柳眉を下げて目を伏せた。
「彼女は準決勝で、共に育ってきたブースターが後遺症の残る傷を負ったことを気に病んで、トレーナーを引退した」
「……ファイア」
「俺は、ポケモンを喪ったこともないし、自分のポケモンが怪我や病気で衰弱したこともない。君たちの気持ちは分からない」
「なら――!」
「けど、君たちの友だちや家族の気持ちは分かる」
ファイアへ噛みつこうとしたカルムとメイの爛々とした瞳が、見開かれる。
「落ち込む相手へ言葉が届かない歯がゆさも、立つ力を与えられない悔しさも……後から知った寂しさも、全部分かる。俺が、そうだったから」
ファイアは持ち上げた手をギュッと握った。
「大切なポケモンを喪った悲しみも、喪いそうになる絶望感も、分からない――けど、隣で立っていた人間が持つ寂寥感と口惜しさは良く分かるんだ」
「ファイアさん……」
「言ってくれれば良かった、手を伸ばしてくれれば良かった、引き留めてくれて良かった! 言ってくれなきゃ分からないんだ! 一人で隠れて泣き声を押し殺す力があるなら、それをぶつけてくれれば良かったんだ! そうじゃなきゃ、分からないことだってあるんだよ!」
珍しく上ずったファイアの声が、天を貫いた。

「ゴチルゼル……?」
「チルダ、なの? なんで……チルダ……」

「あれは、ただのゴチルゼルじゃない……!」
「まさか、幽霊……?!」

「……キョウヘイ」
「ああ……分かっている。手を組もう、ラクツ」
「この悲しい戦いを、終わらせる」




>まだ迷い中なので、一つの可能性。

失敗した。やはり、人間にすべて任せるべきではなかったのだ。取り戻すべきものは、人間のものではなく、我ら――ポケモンたちのものであるのだから。
「世界をあなたへ返しましょう――世界を追われた我が王よ」

「もう一つの世界に封じられた王様って、もしかして〜?」
「な! なぜお前が!」
「ここがツッコミどころだよ〜、せえの!」
なんでやね〜ん! ――間延びしたダイヤの声と共に、大きな咆哮が大気を揺らす。ぐわりと空が割れ、ズルリとした巨体が現れた。ただただ見開かれる瞳に向かって、大きな尾が振り下ろされた。
「ギラティナは、それを望んでないってさ〜」


ポケモン

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