心操くんと尾白くん



あんたを入学試験で見たよ。
そう言うと尾白は心底驚いた顔をして、会場一緒だったか? と首をかしいだ。やっぱりヒーロー科さまの目に雑魚は止まらなかったかと揶揄すれば、不快感露わに顔を顰め、尾で頭を叩いてくる。俺としては不本意な出会いなので、覚えていてもらえなくて結構だった。

普通科の入試はヒーロー科のそれより遅い。遠くで頭を持ち上げる仮想敵を見上げつつ、申し込んでおいて良かったと感慨なく思った。できるだけのことはしながら、使えそうな人材がいないか辺りへ視線を走らせる。身長ほどの尾を持つ人間はこの時代じゃ特に珍しくもなく、さして気にするほどではなかった。
へまをしたのだ、端的に言えば。俺は目測を見誤って、仮想敵に吹き飛ばされた。くるくると宙を舞いながら、これはさすがに骨折かなと呑気に思っていたところだ。よ、と軽い荷物を持ち上げるような声が聞こえ、俺は生暖かいものに身体を絡め取られた。
大丈夫か?
そいつはそんなことを聞きながら、俺をそっと地面に立たせた。第三の手のように尾を引き寄せ、俺が無傷なのを確認すると、そいつはまた走り出す。ぼんやりその背中を見つめていたら、要領が悪いのか間が悪いのか、そいつは仮想敵破壊へ向かおうとするたび、吹き飛ばされた受験生たちを尻尾で捕まえては、安全なところへ下ろしていた。やつにとってみれば、飛んでくる瓦礫を避けるのと同じつもりなのだろう。得てしてそれは、やつの救助ポイントへ加算されていったのだ。

つまりやつの得点の一部は、俺である。
追求が鬱陶しくて入試でのできごとを話すと、尾白は全くピンと来ない様子だった。しかし成程、と腕を組んで頷いた。
「心操のお陰で合格できたのか」
さすがに一発殴った。


WJ

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