刀剣桜鬼



・とうらぶ×薄桜鬼
・イメージとしてはソウルイーター的な何か
・アニメ後、死んだ彼らが魂を審神者に拾われて異空間に集められた設定

手足が、沼に浸かったように重い。頬に触れる雫は、血よりも心地好い温さ。
「……見えますか、皆さんの掲げる、『誠』が……」
嗚呼、見えるよ。すぐそこに。
そう言ってやりたいのに、次から次へと零れる雫を拭ってやりたいのに、四肢どころか指の一つも動かない。ふわふわとした感覚と、泥に沈みこんでいくような倦怠感。じわじわとそれらに浸食され、意識は消えていった。

次に目を開いたとき、土方は見慣れぬ場所に立っていた。壬生寺に移る前の新選組屯所より広いか。綺麗に整えられた庭園と、端の見えぬ家屋。その縁側に、土方は立っていた。
夢から覚めたばかりのように、頭は靄がかかっているようではっきりしない。
「ここは……」
「あれー、土方さんじゃないですか」
ゆるく辺りを見回す土方の耳に、よく聞き知った癇に障る声が届いた。首を回せば、予想に違わぬ男が、後ろ手組んでニコニコとこちらに笑いかけてくる。
「総司……」
眉間に皺を寄せた土方は、沖田の傍らに藤堂や南雲や原田、そして風間の姿を見つけた。土方の複雑な表情に苦笑し、原田は縁側の柱に背を寄せた。
「ここは……」
「僕がいて、平助がいる……ってことは、ここは死後の世界ってやつじゃないですか?」
揶揄するように沖田は笑い、縁側に座って足をばたつかせた。
「否」
そこへ、ビードロのように澄んだ声が響く。
土方たちの視線が、庭先へいつの間にか現れた牛車へ向かう。御者も牛もいない牛車の傍らに立つのは、天狗のような恰好した童と青い袈裟姿の童のみ。
牛車は風に吹かれるように車輪を回し、土方たちの前で止まった。
すらり、と牛車の御簾の端から白い手が伸びて、土方たちに指を向けた。
「死後の世界ではございませぬ」
牛車の中から、その声は聴こえていた。
土方たちは常のくせで咄嗟に足を肩幅に開き腰に手をやったが、そこに得物はなく、渋く顔を歪めた。
「御安心を。我は貴殿たちに危害を加えるつもりはございませぬ。その御力をお借りしたいがため、ここに御呼びしたまでのこと」
「力を借りたい?」
「顔を見せず、名乗りもせず、か。それが人に物を頼む態度なのか?」
挑むように揶揄するように、南雲はせせら笑って牛車を見つめた。
手はす、と御簾の奥へ下がった。
「申し訳ございませぬ。姿を見せぬは決まり故、ご容赦を。名もお教えできませぬ故、審神者とお呼び下さいまし」
「審神者……もしや、神職の者か」
だとしたら、名乗れぬのも得心がいく。風間はゆっくり腕を組んで、原田とは別の柱に背を預けた。彼の言葉を、審神者と名乗った人間―――声からして女人らしいが―――は曖昧に流した。
「それで、俺たちに頼みたいことって何なんだ?」
藤堂が訊ねた。
審神者は少し間を置いて、口を開いた。
「我らは、貴殿たちが生きた時より何千も未来の世界から参りました」
その時代では、歴史修正主義者という派閥が跋扈しているという。時を遡って歴史を変え、未来を変えんとする彼らを止めるために、審神者たちもまた時を遡ってきた。
「我らは刀剣に付喪神を宿し、『刀剣男士』として部隊を作り、戦っています」
牛車の傍らに立つ童たちも、元は短刀であった付喪神であるという。
「貴殿らにも、刀剣男士たちと共に戦場に出てほしい」
「僕らにまだ武士として戦えってこと?」
沖田の笑みを含んだ言葉に、審神者は何も答えなかった。
代わりにまた御簾から手を伸ばし、す、と宙に線を引いた。
童たちが小さく頭を下げる。ビードロのような光の球が、ふわふわと浮かび、土方たちの手元で弾けた。
とさ、と彼らの前で足をついたのは、見目も恰好も千差万別な男たちであった。
「……何、これ」
「何これとか酷くねー?俺ら、アンタの愛刀なんだけど」
「正確には、『だった』かな……久しぶり、沖田くん」
赤い爪で黒髪をかき上げる男と、見覚えのある浅葱羽織を着た男が顔を覗きこんでくる。沖田は顔を顰め、身を引いた。
「兼さん兼さん、土方さんだよ」
「うっせぇ、国広。はしゃいでんじゃねぇよ」
「……兼さん、泣いてるの?」
「泣いて、ない」
「……おい、説明しろ」
大男と少年に服の裾を掴まれた土方は、ヒクリと額を引き攣らせて牛車を見やった。
「彼らは生前の貴殿らの愛刀……沖田殿の右が加州清光で左が大和守安定。土方殿の右が泉守兼定で左が堀川国広でごさいます」
「はあ?!」
一等大きく反応を見せたのは藤堂だ。彼は物珍し気にこちらを見つめる少年に、眉を顰めた。黒い洋風の帽子をかぶった少年は、にっかりと笑う。
「他の方々の愛刀は、我の力不足故、付喪を降ろすことができませんでした。そのためこちらで、皆さまの特性にあった刀剣を選ばせていただきました」
「蛍丸でっす」
「蜻蛉切と申します」
「同田貫正国だ」
「……骨喰藤四郎」
四者四様の挨拶を見せる彼らに、藤堂たちはポカンと口を開くことしかできない。
取敢えず、纏わりつくこの二人を何とかしてほしい。肌に触れるほど染み込んだ涙や鼻水にウンザリとしながら、土方は溜息を吐いた。


土方→和泉守、堀川(何も言うまい)
沖田→加州、大和守(同上)
藤堂→蛍丸(小柄同士。さすがに新選組隊士に短刀はどうかと思って)
原田→蜻蛉切(御手杵と迷った)
斎藤→大倶利伽羅(無口)
永倉→山伏(国広兄弟好きなので)
風間→同田貫(風ノ章特典小冊子より)
薫→骨喰(何となく)
山崎→薬研(医者なので)

・斎藤と永倉と山崎は一足先に戦場に駆り出されている
・ラスボスは土方の死亡により悲しみがパンクした鬼姫の千鶴
・千鶴の刀は山姥切で本丸にいる小夜や山伏と仲良かったけど闇落ちしたとかなんとか

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