炎の絆、奪還作戦(OP)



・↑とか言いつつ、単にサボが危機に陥ってそれをルフィが助ける話が読みたいだけ
・ご都合主義万歳


「ジハハハ!」
腹立たしい声が崩れゆく音と炎の揺らめく音に混じって鼓膜を叩く。グッと噛みしめた口元に伝う血を手で拭って、サボはゆらりと立ち上がった。業、と炎が彼の四肢から燃え盛る様を見て、対峙していた黒ひげはニヤリと笑った。
「革命軍参謀長ともあろう男が、とんだ無謀なことをするもんだ。亡き兄弟の仇討ちか?」
「エースの?……馬鹿言うな。初めにも言った通り、頂上戦争を忌々しいと思ってはいるが、エースの人生だ。俺がそこに文句をつけてあいつの人生を否定するつもりは毛頭ねぇよ」
「ジハハハ!そうか!」
黒ひげが高らかに笑うと、彼の背後からこの世の全てを飲みこむような黒々とした闇が頭を上げた。ゾワゾワと泡立つ肌を感じながら、サボはグッと鉄パイプを握る手に力を込めた。

女と魚人は逃がしてしまったと、部下からの報告があった。それに「そうか」と返して、黒ひげは足元に転がった男を見下ろした。肌や服の裾が、溶けるように炎となって揺らめいている。ニヤリと細く笑んで、黒ひげは男へ向けて手を伸ばす。
「―――!」
その瞬間、男の襟元から炎が燃え上がり、黒ひげは慌てて手を引いた。炎は見る間に男の身体を覆い尽くし、オレンジ色の塊を造り上げた。
触れようとしても触れられない。爪先だけでも触れようものなら墨にされそうな意志を、揺らめく炎から感じる。いつか感じた火傷の痛みに、黒ひげはニヤリと笑う口元が抑えられなかった。
「そこにいるのか、火拳」
指で帽子の鍔を持ち上げて笑う、男の姿が陽炎になって視界を掠めた気がした。

サボが持っていた筈の、ルフィのビブルカードを手にして麦わら海賊団の船に乗り込んできたのは、傷だらけのコアラとハックであった。意識不明のハックを寝かせると、チョッパーの制止もそこそこ、傷に障ることも構わずコアラは額と手を床につけた。彼女の正面に立つのはルフィで、その周囲ではナミたちがコアラの姿に息を飲んでいる。一人壁に凭れかかって腕を組んでいたゾロは、革命軍が海賊何ぞに頭を下げて良いのかと顔を顰めた。
「お願い……っ、サボくんを、助けて……!」
「!?」
「どういうこと?」
ボロボロと肌を滑る涙を、ロビンの差し出したタオルで拭い、コアラはスッと顔を上げる。
「黒ひげの、襲撃にあったの」
「!あいつ……!」
「サボくんのお陰で、メンバーは何とか逃げ出すことができた……でも、そのせいでサボくんが、捕まっちゃって……っドラゴンさんも行方不明。他の幹部も、自分の任務で手いっぱいなの……頼れるのは、あなただけ、麦わらのルフィ……!」
深々とまた頭を下げるコアラから、ナミは困惑の視線をルフィへと向ける。ルフィは少し俯いたまま、グッと拳を握りしめてコアラの嗚咽交じりの話を聞いていた。それから徐に上げられたルフィの顔は、いつも敵の陣地へ斬りこんでいくときの、静かな情熱と興奮を湛えたものだった。
「……フランキー」
「任せとけ。最速で向かってやる」
「ルフィくん……!」
「頼まれなくったって、助けに行くよ。サボは、俺の兄弟だからな」
「……ありがとう……っ!」
「礼を言われることじゃねぇって」
コアラに苦笑して、ルフィはヒラリと手を振る。それからクルーたちの方へ振り返り、ニカリと笑った。
「悪いな、また俺の我儘に付き合ってくれねぇか?」
「アンタの我儘は今更でしょ」
「しょうがねぇ船長だぜ」
「……―――行くぞ、お前ら」
「OK、キャプテン!」

「来たか、麦わら!」
「黒ひげ……サボは何処だ!」
「いるじゃねぇか、目の前に」
黒ひげの指し示す場所へ目をやったルフィたちは、彼の横で轟々と燃え盛る炎に目を細めた。
「……あの炎か?」
「けったいな炎だな。新手の牢屋かぁ?」
「……あれ、エースの炎だ」
掠れたようなルフィの呟きに、ウソップは驚きマジマジと炎を見つめた。
「あれ、メラメラの実の炎なのか?」
「あなたのお兄さんが自衛のために、ってことは考えられないの?」
「いや、エースだ」
「……あのコアラって女の話じゃあ、ルフィの兄貴は酷い怪我している筈だな」
「怪我しているのに、あれだけの炎を出しているのか?!傷に障るぞ!」
「ヨホホホホ、麗しい兄弟愛ですねぇ」
「?どういう意味よ、ブルック」
「つまり、あの炎は火拳のエース。メラメラの実の前の持ち主である彼の意志によって燃えている、そういうこと?ルフィ。サボを黒ひげから守るために」
ロビンの言葉に、クルーたちは船長へ一斉に視線を向ける。帽子に手を置いた彼は、グルリと首を傾けた。
「んー、解んねぇ」
「解らんのかい!」
「ジハハハ!大体当たっていると思うぞ。この男に意識はない、にも関わらずこの調子で燃えやがる」
お陰で牢に放り込むこともできなかったと、黒ひげは少しも困っていない様子で言った。取敢えず四方を、海楼石を仕込んだ網で、まるで鳥籠のように囲ったが、少し炎は衰えたが、消える気配は一向に見せない。
「サボを、離せ!」
「ジハハハ!海賊なら、欲しいものは力づくで手に入れるもんだろ!」
辿りついて見せろ、と声高らかに叫ぶ黒ひげを睨み上げ、ルフィは拳を握りしめた。望むところだ、と吠えるように叫び返して。


・海楼石で囲ったなら、メラメラ(悪魔の実)でできた炎は消えるだろとかいうツッコミはなしで

WJ

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