デジモンクロウォ歴代登場シーンをポケスペ&BW主人公でやってみた
太一→レッド
大輔→ゴールド
拓也→ルビー
啓人→ダイヤモンド
タイキ→ブラック
タギル→キョーヘイ
目の前に立ちはだかる何体もの敵。もう傷だらけで限界の近い体を叱咤し、それでもブラックは立ち上がった。隣では彼のパートナーであるブオウが、それを見習って俯きがちだった視線をあげている。
「…まだだ…まだだぞ、ブオウ!ここで、敗けるわけにはいかないんだ…!」
ブオウの体に手をついて、ブラックは叫んだ。限界が近いのは変わらないであろうブオウも、それに答えるように大きく嘶く。その時、その声は彼らの耳に届いた。
「よく言った」
頼もしい声だ。それがつるのムチと叫ぶと、ブラック達の前にいた敵の幾つかが伸びてきた蔓によって吹き飛ばされる。立ち上る砂を含んだ風に髪を揺らしながら、呆気にとられたブラックは思わず膝をついた。ぽすっと、始めの方で攻撃の爆風に煽られ飛ばされていた帽子が、ブラックの背後から誰かによって彼の頭にのせられる。反射的にそれを押さえ、ブラックは自分の前に立つ大きな背中に目を見開いた。
「あの時…助けてくれた…」
にこり、と僅かに見える口許が弧を描く。フシギバナを連れたその青年は振り向くと、太陽のような笑顔の横に、ブラックのそれとは違う型の図鑑を並べて見せた。
「俺はマサラタウンのレッド。こっちは相棒のフッシーだ」
その名前は英雄の中に、聞いた覚えのあるものだ。呆気にとられ完璧に座り込んでしまうブラックを見て、レッドは苦笑する。すると、無事だった敵の打ち放つ攻撃がレッドの背に迫った。ブラックは危険を知らせようと口を大きく開いたが、それが声帯を震わす前に、別方向から炎が飛んできて容易くそれを打ち消してしまった。
「いいぜ、バクたろう!」
明るい声を飛ばしながらレッドの隣に並んだ少年が、少し離れたところから炎を放ったバクフーンに親指を立てて見せる。それに対し、バクフーンも嬉しそうに目を細めた。きょとんとしたままのブラックを、腕を掴んで立ち上がらせ、少年はキューで自分の肩を叩く。同じ手で持っていたのは、また別の型の図鑑だった。
「俺はワカバタウンのゴールド。レッド先輩の後輩で一番弟子だ」
誇らしげに胸を張るゴールドに、未だ頭の追い付かないブラックは生返事しか返せない。すると、また別の方向から、新たな声が聞こえた。
「すぐ調子にのるんですから」
「わぁ〜、皆揃ってるね〜」
態とらしく溜息を吐いて毒づく少年をゴールドが睨む。しかしレッドに苦笑混じりにたしなめられると、唇を尖らせながらもあっさりと身を引いた。その一連の流れを、ドダイドスを連れた少年は微笑ましげに見守っていた。
「僕はルビー。一応ミシロタウンの、ってことになるのかな。パートナーはZUZUだ」
不思議そうな視線に気づいたのだろう、少年は掌で自分を指しそう言った。もう片方の手で見せたのは、また違う型の図鑑だ。
「オイラはフタバタウンのダイヤモンド。パートナーはるー」
図鑑を取りだし、よく見るとご飯粒をつけたままの頬でにぱーと微笑む。その頃にはようやっとブラックの緊張も解け、言葉を返せるようになっていた。集まった英雄達はレッドを中心に、負傷したブラック達を守るようち立つ。英雄の前には、彼らのパートナーが。皆が位置についたのを確認するとレッドは、よっしゃ、と声をあげた。
「行くぞ、フッシー!」
「俺達も行くぜ、バクたろう」
「ZUZU!」
「るー、頑張ろうね」
トレーナーからの言葉に頷き、パートナー達は戦闘体勢をとる。照準は、目の前に立ちはだかる敵の軍勢だ。
「ハードプラント!」
「ブラストバーン!」
「ハイドロカノン!」
「はっぱカッター・ダイヤスペシャル・マッハ・ワン・アンド・オンリ〜!」
先程までより何倍も強い爆発が轟き、ブラックは身を小さくしながら、必死に帽子を押さえていた。
***
〜「俺は今から怒るゼッ☆」が裏切った模様です〜
「そんな…」
爆風で吹っ飛ばされた体を起こし、キョーヘイは愕然と目の前の惨状を見つめる。思いもかけない裏切り、そして敬愛する先輩の戦線離脱。他の英雄達は無事だが、このままではあの荒れ狂うキュレムを止める術はない。
「キョーヘイ…」
「ブラックさん!」
少し離れた場所でブオウに庇われたブラックが、最後の力を振り絞って体を起こす。
「このままじゃ終われない…誰かが次の英雄にならないと…」
「でも誰が…!」
「お前だ…キョーヘイ…」
「え…」
「受けとれ!」
反射的に手を伸ばすと、いつもブラックがかぶっていた帽子を掴めた。ハッとしてキョーヘイが彼を見やると、にやりと笑ってサンバイザーのない自分を見ていた。
「英雄には、帽子が必要なんだよ…!」
「ブラックさん…」
無理だ。自分は彼らのように、彼のようにはなれない。そう思い俯くキョーヘイだが、ブラックはそれを否定した。
「行け…今こそ―――俺を越えろぉ!キョーヘイ!」
それはいつも掲げていた目標。
「…はい!」
その声に背中を押され、キョーヘイは頷くと、帽子を頭にのせた。