日黒降?



それに一番最初に気づいたのは、小金井と福田だった。

「日向、どうしたの?!」
「く、黒子?!」

全く別々の場所で上がった声に、自主練中だった部員達は手を止め、そしてぎょっとした。

「黒子!」

ステージ近くで座り込むのは黒子。そして彼はその水色の瞳から、止めどなく涙を流していたのだ。丁度側にいた福田は慌てて膝をつき、まだ使っていない自身のタオルでそれを拭う。

「日向!」

一年達が黒子の元に集まったように、日向の元には二年生が駆け寄っていた。彼は用事があったらしく、他の部員より一足遅れて体育館に現れた。それがたった今である。

「は、何が?」

目を見開く部員達とは対照的に、日向は怪訝そうに眉を潜めて落ち着いたものだ。

「…ち、血が…」
「は?」

小金井は震えながら指を額に向ける。日向が何気なく額に触れると、そこにはドロリとした感触があった。それもその筈、彼の額の右上からは、頭でも切ったのだろう、だらだらとした出血が見られたのだから。あまりの出血量に部員達の方が顔面蒼白だが、当の本人は掌にベットリとついた血を見ても、顔色どころか眉すら動かさない。ああ、と何かを思い出したような声を上げるだけだ。

「そういやさっきので頭ぶつけたっけ」
「さっき?!てかそれだけ?!」
「別に痛くねーし」
「いや、かなり出血してますが!?」

兎に角止血せねば。そう思い部室へ行こうと振り返りかけた伊月の脇を、水色の物体が通りすぎる。は、と思う間もなくそれは日向に駆け寄ると、抱きつくように体当りした。

「せん、ぱい…」

一層声を震わせ、黒子は泣き出す。そんな態度も、それをあやすように頭を撫でた日向の視線も、部活の先輩後輩というよりはまるで親子のようだ。

「大丈夫だって。俺は痛み感じねーもん」
「それが問題なんですって。その分、黒子の受信量が増すんスから」

呆気にとられるバスケ部員の中で、唯一平然と日向に救急箱を差し出す人物がいた。

「悪い、降旗」
「…ふ…りは…くん」
「はいはい」

すがり付く黒子の頭を軽く叩いて、降旗は日向に清潔なタオルを渡す。その場に座って手や額の血を拭う日向の隣に膝をつき、背中に黒子を張り付けた降旗は、慣れた手つきで手当てをしていく。

「はい、終了っス」
「ん、さんきゅ」
「黒子も。もう痛くないか?」
「…はい」

頷きながら黒子がぐず、と鼻を鳴らしたので、降旗ははい、とティッシュを差し出した。

「えっと…すまん、フリ」

これ、どういう状況?

恐る恐るながらも挙手して訊ねた福田に対して、全員の心の中で勇者の賛美がなされたのだった。



※痛覚麻痺の日向と他人の痛みを自動受信しちゃう黒子とそれをサポートする降旗

KUROKO

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