咎なくて死す後日談?
※NLcp多量
※子供がいます
※新猪鹿蝶どーすんだというツッコミはスルーで
俺には父と母が二人ずついる。
それがおかしいことだと気がついたのは、つい最近の話だ。
「テマル、起きろ!」
毎朝俺の布団をひっぺがすのは、口煩いお袋。夜遅くまで本を読んでいたからまだ寝ていたいのに、彼女はそれを許してくれない。
「ご飯出来てるよ」
部屋に顔を覗かせたのは、料理の得意な優しい母ちゃん。彼女の作る点心は俺の大好物だ。
「眠…」
食卓につくと、気だるそうな親父が欠伸をしながら現れる。昨夜彼の部屋の灯りが消えたのは、俺より遅かった筈だ。
「あー!遅刻するってば!」
四人の中で一番忙しいらしいもう一人の父ちゃんが、今日も騒がしげに廊下を駆け抜けて行く。ここだけの話、彼はこの里で一番偉い人なのだとか。
俺、奈良テマルがそう家族を紹介すると、友人達は目を丸くした。
「おかしいわ!」
憮然と言い切ったのは、春野サラサ。母親譲りの桜色の髪を揺らして首を左右に振っている。
「ねぇ?イノイ」
「…ん」
話を振られ、一つ年上の秋道イノイは曖昧に頷く。断定しないのは彼女が優しいからだ。
「おかしいって!」
姉貴もしっかり言えよ、と背中を叩くのは、弟の秋道チョウノ。性格が入れ代わった姉弟だな、とは彼らの両親を知る人皆が思うことである。
「普通に考えておかしいだろ…」
これまた一つ年上の日向ヒナジが、呆れたように溜息を吐いた。
「おかしいのか?アレイ」
俺は首を回して、丁度茶菓子を手に部屋に戻ってきた猿飛アレイに訊ねた。俺達より十程年上の彼は上忍で、今居る家の家主だった。
アレイは苦笑し、茶菓子を俺達の囲む机上へ置く。自分も腰を下ろしながら、そうだな、と頷いた。
「普通は父親と母親が一人ずつだからな」
ふーん、そーゆーもんかねー。てな具合で生返事をしていたら、解ってんのか、とチョウノに睨まれた。
「だから、あんたのお父さんとお母さんはどちらか片方なのよ」
痺れを切らしたようにサラサが机を叩く。はっきりしなさいよ、なんて俺に怒られても。
「父親はどー見てもシカマルの親父さんだろ」
そっくりじゃねぇか、と言いながらチョウノは菓子を口一杯に頬張る。慌てて俺も菓子に手を伸ばした。
「じゃあお母さんは…」
「…ナルトの父ちゃん」
イノイの言葉を遮り俺は呟く。一斉に皆こちらを見てくるが、そうとしか考えられないだろ。
「お母さんは女よ!」
「馬鹿か!」
「だってラブラブだぜ?」
キスなんて珍しくもない。そう言えば、場の空気が冷えた。皆が沈黙する中、一人理解していない俺の菓子をかじる音と、アレイの「あの馬鹿教師…」と言う呟きが響いた。
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テマル(12)…シカマルとテマリの息子
イノイ(13)…イノの娘。チョウノの姉
チョウノ(12)…チョウジの息子。テマルの親友
アレイ(22)…アスマと紅の息子。シカマルの弟子
ヒナジ(13)…ネジとヒナタの息子
サラサ(12)…サクラの娘