【松】ワンダーラストワールド(未完)



・オンリーショップ、へそウォ他のアリス派生
・アプリゲームふるぼっこコラボ時の衣装設定
・七つの大罪(漫画)
・チョロおそ、カラトド、十四一、イヤチビ


澄んだ湖面に真っ直ぐ垂らされた糸は、先ほどからピクリとも動かない。岩に手をついて足を組み、彼は退屈だと溢した。「ん〜?」気持ちの良い日光を浴びて思わず歌っていた鼻歌を止め、釣り竿を持ち上げる。湖から引き上げた糸の先には、びっしょりと濡れた白い封筒がついていた。封蝋のとれかかったそれを見て、彼は溜息を吐く。
「懲りないよねぇ」
ふわり、と彼は立ち上がり、湖面にそっと素足を乗せる。ずぶずぶと沈んでいく様子は見せず、彼は濡れた手紙を摘まみ上げた。
「こんな手紙で釣れるものなんて、そうそうないよ」
「でも釣れただろう?」
きょとんとこちらを見る瞳へ、「バーン」と立てた人差し指を拳銃に見たてて振りあげる。手紙を口元へ当て、彼は呆れたように笑った。
「ばっかじゃないの」
ひら、と白い大きな羽根と桃色の小さな羽根が、まるで花弁のようにして湖面へ浮かんだ。

【#1】

アカツカ王国の国境近く。見得る範囲に村もないだだっ広い緑の丘に、その店はポツンと佇んでいた。『おでん 酒も有り』と書かれた旗を風にはためかせ、店内からは賑やかな笑い声を響かせる。グラスのぶつかりあう心地良い音に、店の二階で眠っていたおそ松はゆるりと目を覚ました。
「……ここ、は」
身体を起し、ぼんやりとした目で部屋を見回す。こぢんまりとした部屋だ。ベッドはおそ松が寝ていたのもの一つだけだが、他にも住人がいるらしく、天上には革をなめして作ったハンモックが吊るされていた。さっぱりとした家具は華やかさに欠け、男所帯を匂わせる。
「起きたザンスか?」
頭を掻いていたおそ松に、そんな声がかかった。首を回すと、歯が特徴的な男が入口に凭れかかり、腕を組んでおそ松をジロリと見やっている。かっちりとしたウエイターの恰好をした男は、顔色は良さそうだと呟いておそ松へ水の入ったコップを差し出した。
「ここは?」
「はいぶりっと亭。おでんメインの居酒屋ザンス」
思ったよりも喉が渇いていたらしい。一息に水を飲み干して、おそ松は口元を手で拭った。男はさらに、自分はここのウエイターを務めるイヤミで、他にオーナーシェフのチビ太がいると告げた。
「で、俺はどうしてここに?」
「店先で倒れていたザンス。そのまま放置すると、営業妨害になりかねないザンスから」
仕方なくだと言い、次いでイヤミは名を訊ねた。おそ松は素直に名乗り、礼を述べる。イヤミは礼なら案外お人好しなシェフへ言えと手を振った。
「しかしどうして倒れていたザンス」
「ん〜……」
頭を掻き、おそ松は胡坐をかいた状態でグーッと上体を逸らす。
「なんでだろう……何か探していた……いや、逃げていたのか……?」
「まだ寝ぼけているザンスか」
それに可笑しな恰好だと、イヤミはベッドに座るおそ松の恰好を眺める。赤を基調としたスカートエプロン、首元には緑の石と赤いリボン。声や口調からしても男であるのに、恰好は女性のものだ。おそ松がスカートの裾を掴むと、縞模様のハイソックスと肌の境目が覗く。本当の意味で目に毒だと、イヤミは顔を背けた。
「おい、イヤミ、人がはけたから賄いを……って」
慌ただしい足音を立てて扉を開いたのは、イヤミより小柄な男だった。恰好からして彼がシェフのチビ太なのだろう。チビ太は起き上がるおそ松の姿を見つけ、顔に喜色を浮かべた。
「なんでい、目が覚めたのか」
「そうみたいザンス」
「じゃあ、お前も食うか?腹減っているだろ?」
言われて、おそ松は空腹であることに気づき、コクンと頷いた。
二人に連れられて降りた一階の酒場は、チビ太の言う通り人がはけきってガランとしていた。カウンター席に座るよう促されたおそ松は、物珍しさに辺りを見回しながら曖昧に頷く。ふと、彼は壁にかかったポスターに目を止めた。
「……」
「それ、気になるザンスか」
隣に並んだイヤミがポスターとおそ松を見比べて、やはり似ているとぼやいた。
くすんだ色をした紙に描かれていたのは、フリルのワンピースとエプロンを身に着け、頭にリボンを巻いた人間の姿。その頭上には、『WANTED』という文字が掲げられている。目を閉じてはいるが、その顔はおそ松と似ているようだった。
「まさか、本人じゃないザンスよね」
本人だとしたら大問題だ。アカツカ王国全域に配布されたこの手配書の人物は、罪状こそ明確にされていないものの、大罪人であるとされている。それほどまでの大罪人が行き倒れるなど、イヤミには考えられないが。
おそ松は首を横に振った。
「あれは弟だ」
「弟?」
「何番目かな……名前も忘れたけど、俺の弟だ」
「……随分そっくりザンスね」
平然と答えるおそ松の様子に何を思ったか、イヤミは吐息を溢してカウンター席の方へ向かった。おそ松はもう一度ポスターを見上げ、イヤミと同じようにカウンター席へ座った。
「探しているのは、あの弟ザンスか?」
「他にも。六人兄弟なんだ」
チビ太の出す練り物や野菜、玉子の入った煮物を息で冷ましながら頬張り、おそ松は指を折った。全員顔は同じだからある意味見つけやすいかもしれない、そう言って笑うとイヤミが呆れたように顔を顰めた。カウンター席の向い側で頬杖をついたチビ太が、行く宛はあるのかと訊ねると、おそ松はまたすぐに首を振った。
「なら、オイラたちと一緒に行けば良い」
「チビ太!」
面倒事はごめんだとばかり、イヤミが声を荒げる。オーナーは自分だと、チビ太は悪戯っぽく笑って見せる。その言葉に反論が思いつかないのか、イヤミは練り物にかぶりついた。
「店はどうするんだ?」
「店ごと移動すんのさ。ここはそういう店だ」
チビ太はクルリと人差し指を回した。ごご、と地鳴りがし、店が揺れる。チビ太に促されておそ松が窓の外を覗くと、一階である筈なのに地面との距離が遠くなっている。そのまま、景色がゆっくりと動いていった。
「店が動くのか?!」
「おう!オイラは妖精族のバンシー。この店はオイラ特製なのさ!」
バンシーがどのような妖精なのかおそ松には分からなかったが、とにかくすごいということは胸を張るチビ太の様子から察し、「おー」と拍手をした。
「居候するなら、しっかり働いてもらうザンスよ!」
空にした食器を重ねながら、イヤミが少々苛立ったように言う。「居候のお前が言うな」と言いながら、チビ太も働かせることには同意のようだ。おそ松はげんなりと顔を顰めたが、拒否権はないのだろう。「早速皿洗いザンス」しかしその前にと、チビ太から包みを投げ渡された。着替えて来いと言われ、おそ松は大人しく二階へ戻る。数分後、再び顔を見せたおそ松の姿に、チビ太は満足げに頷き、イヤミは「馬子にも衣裳ザンスね」と呟いた。
「イヤミのお古を少し裾上げしたやつだけど、そっちの方が動きやすいだろ」
前をチャックで止めるタイプの赤いノースリーブと、灰色のゆったりとしたズボン。ゆるく腰に巻いたベルトを弄りながら、おそ松は「まあな」と笑った。
「あっちの服も、良ければ少し手直ししてやるよ。ほつれもあったしな」
「おー、あんがと」
「さっさと皿洗いするザンス」
イヤミに急かされ、おそ松は渋々キッチンへと向かった。

「アリスを見つけた?」
凛とした声。真っ赤なドレスを翻し、女王は通信機の役割を果たす鏡へ詰め寄った。本当なのかと念を押す様に気圧されながらも、鏡の向こうの人間はまだ不確定要素はあるが目撃証言を得たと説明する。ようやっと納得したのか、女王は鏡から身を離し、玉座へ腰を下ろした。
「なら早く確認をとって捕えてちょうだい。このまま放置しておけないんだから」
耳元で涼やかな音を立てる耳飾りをそっと撫でて、女王は目を細める。
「―――アリスは、世界の異分子なんだから」



サラサラと流れる水の音が、森々とした谷川に響く。川辺に膝をつき、腕を伸ばして水を掬う。冷え切ったそれを口に含み、喉を潤す。立派な帽子を傍らに置き、ほっと息をつく。顎に垂れた雫を手で拭い、ふと水面をじっと見つめていると、嘗て見た花弁のような羽根が浮かぶ光景が過った。
「……どこにいるんだ」
キラリ、と胸元で金の首飾りが日に煌めいていた。

【#2】

「何で、イヤミたちは協力してくれんの?」
キッチンへ注文の品を取りに来たイヤミは暫し立ち止まったが、すぐに皿を手にすると、手を動かせとおそ松を肘で突いた。渋々泡だらけの腕を再び動かし始めたおそ松へ、苦笑したチビ太が気にするなと囁いた。
「元々、旅をしながら店をやるって決めていたんだよ。お前の兄弟捜しはそのついでだ、バーロー」
その理由も楽観的でお人好しすぎるような。少々腑に落ちないまま、おそ松は泡のついていない腕で痒みに痺れる頬を擦った。
「そもそも、なんで旅なんか」
「んー、イヤミの方が旅をする理由があるって」
「口より手を動かすザンス」
チビ太の言葉を遮り、顔を覗かせたイヤミは追加注文だと紙を置いてまたホールへ戻っていく。チビ太は応と返して、鍋の蓋を開いた。出汁と具材の匂いをたっぷり含んだ湯気がおそ松の鼻を擽って、腹を鳴らした。
「……あんまり余計なこと言わないでチョ」
皿洗いに精を出すおそ松の姿を横目に、イヤミはこっそりとチビ太へ耳打つ。なんでい、とチビ太は眉を顰めた。イヤミは少々目を吊り上げ、チビ太へ顔を近づけると声を潜める。
「厄介事はごめんザンス!」
「……それ、オイラの方が言う権利あるんじゃねぇのか?」
ニヤリと笑うチビ太に、イヤミはグゥと言葉を飲みこんだ。チビ太は満足げに頷き、開いた扉へ向けて満面の笑みを向けた。
「へいらっしゃい!」

おそ松にその情報がもたらされたのは、昼のピークを過ぎようやく賄いにありつけた頃であった。
「俺にそっくりな男を見た?」
イヤミは頷き、賄いのパイを頬張った。
「この近くの村に一昨日から泊まっている旅人が、そっくりらしいザンス」
それも奇妙な旅人のようで、気が向くと何時であっても「三時のお茶会だ!」と上機嫌に茶会を興じるというのだ。時間にルーズなのか、変わり者なのか。泊めている宿屋の主人ですら、関わりたくないらしい。
「手前の兄弟はそんなに変わり者なのかよ?」
「ん〜。変わり者なのは認めるけど、そんな奴いたかな?」
スプーンを口にくわえて腕を組み、おそ松は首を傾ぐ。取敢えず様子だけ見ることになり、夜の仕込みがあるチビ太を店へ残して、おそ松はイヤミと共に村へと向かった。
イヤミたちがおそ松を拾った場所よりも王都に近づいたここは、山の梺に位置する。木々の生い茂る山を超えれば王都が姿を現すのだと、イヤミは説明した。小さな村の背後にある山を眺めていたおそ松は、「へー」と吐息を溢した。
「早くするザンス」
足の止まるおそ松へ声をかけ、イヤミはさっさと村へ向かう。おそ松も、慌てて後を追った。
ずしん、とおそ松の背後で地鳴りが響く。思わず足を止めたおそ松の頭上に影がさす。地鳴りに足を止め振り返っていたイヤミは、そこにあった姿に目を見開いた。
「!」
「だ、よーん」
酷くしもぶくれた輪郭の人間―――いや、あれは巨人族か。二階建ての店ほどもある巨体が屈み、おそ松へ向かって手を伸ばそうとしている。イヤミは慌てておそ松を肩へ担ぎ、駆けだした。
「何だ、アイツ!巨人!?」
「ちょっと黙っているザンス!」
舌を噛むと叫んで、イヤミは小さな崖になっている段差を飛び降りた。
巨人族は戦闘民族と言われ、傭兵として雇うところもあると聞く。しかしこのような田舎で、しかも一人で人間を襲うような野蛮さはなかった筈だ。村の警備をしているのだろうか。いや、こんな酒と畜産だけが名物の村に警備などとは考えにくい。試しに村から離れるように逃げているが、巨人が足を止める素振りはない。厄介だと、イヤミは歯噛みした。
「こんなことなら、他の武器を持ってくるんだったザンス!」
イヤミは足を止めて振り返り、腰の短刀を引き抜いた。それから膝を折ってその場にしゃがみ、短刀を思い切り地面に突きつける。バチリ、と静電気が走ったかと思うと、稲妻が亀裂のように地面を這い、巨人の足元から天上へ向けてつき上がった。
「ダヨーン!!」
悲鳴を上げて、巨人はバッタリと倒れる。イヤミは短刀を引き抜いて鞘にしまい、さっと立ち上がった。
「すげー……イヤミ、何者?」
「チミには関係ないザンス」
早くここを去ろうとしたイヤミだが、直後頭上にさした影に頬を引き攣らせた。まさか、あの雷撃で気絶しないとは。煤けた手を伸ばす巨人から逃れようと、イヤミは地面を蹴った。そのときだ。雷撃とは違う色の閃光が、視界を通り過ぎていったのは。
「……今のは」
「……」
髪を乱すほどの風に目を眇め、イヤミは背後を振り仰ぐ。おそ松はじっと目を凝らして、巨人を見つめた。動きを止めた巨人は、ズシン、と大きな音を立てて倒れこんだ。仰向けになった巨人はすっかり目を回しているようで、動く様子はない。
「大丈夫だったか?」
巨人の影から現れたのは、奇抜な高帽子をかぶった男だった。彼は帽子を少し持ち上げてイヤミたちを見つけると、顔を輝かせた。その、どこかで見た覚えのある作りの顔に、イヤミは眉を顰める。
「ブラザー!」
「……カラ松?」
やはりそうか、とイヤミは大きく息を吐いた。

「会えて嬉しいぜ、ブラザー」
カラ松はパチンと指を鳴らす。チビ太はヒクリと青筋を浮かべ、おそ松は腹を抱えて笑いだした。イヤミはすっかり疲れた様子で茶を啜り、顎を机に乗せた。
「本当にコイツが手前の兄弟なのか、おそ松」
「あっはっはー。そうなんじゃねぇ?」
「その通り。俺こそ次男、カラ松さぁ!」
自前だというティーカップを持ち上げ、カラ松は「フッ」と笑う。笑い涙を拭い、それよりもとおそ松は居住まいを正した。
「お前、今まで何していたんだ?その恰好も」
おそ松の指摘に、カラ松は立ち上がって、片方の手を腰へ片方を頭へおいた。カードのワンポイントがついた高帽子に、紳士に似たベストとジャケット、胸には少々不釣合いな金の首飾りが下げられている。
「マッドハッターと呼んでくれ」
「お前にピッタリだと思うよ」
「フッ、そうだろう」
狂っている、という点だろうことは、イヤミとチビ太には察せられた。今まで何をしていたのだとおそ松が再び問うと、カラ松は可笑しなことを言うと小さく笑った。
「お前が言っただろう、これからは別々に行こうと」
「……へ?」
「いや、言ったのはチョロ松だったか?まあ誰でも関係ないだろう、俺はアイツで俺たちは俺、俺たちは六つ子なんだから」
「六つ子……」
噛みしめるように、おそ松はその単語を呟く。カラ松は漸くおそ松の様子に気が付いたようで、眉を顰めて帽子を取った。
「まさかお前……忘れたのか?」
「いやぁ……何となく顔と人数と名前っぽいものは覚えていたんだけどなぁ〜」
あっはっは、と先ほどより乾いた声で笑い、おそ松は頭を掻く。カラ松は眉を顰め、少々不機嫌そうに拳を握りしめた。
「……東の森へ行くぞ、おそ松」
「へ?なんでまた」
「あの巨人は追手だ。どちらにせよ、今夜中にはここを発たなければいけない。それに、そこにもう一人いる筈だ」
俺たちの弟が。カラ松の言葉に、おそ松は目を見開き、どくりと脈打った胸を掴んだ。頭に浮かんだ名前を肯定するように、カラ松が首を振った。
「―――チョロ松」

ふ、と薄い煙が零れ、天へ向けて立ち上っていく。それを目で追いながら、柔らかい背凭れに身体を沈める。
「……また来るのか、おそ松」



「お前は何でできているのかな」
その昔、戯れのように訊ねられたことがあった。
カエルとカタツムリと仔犬?お砂糖とスパイスといろんな素敵?溜息と流し目と嘘の涙?リボンとレースと甘いかんばせ?
歌うように踊るように、透明感のある煙が漂って、身体の周囲を取り巻いた。こほ、とそれに咳を溢すと、それを塞ぐように長い指が唇を撫でていった。
「紅引いて、睫毛を伸ばして、白粉塗って、ちゃあんとアリスらしくしてるじゃん」
上出来上出来、と笑って声の主は身を引く。そのどこか上から目線である物言いが、癇に障った。
「さてアリス、お前は何でできているのかな」
そのとき何と答えたのだったか、よく覚えていない。

【#3】

ミルク色の霧が取り囲む森。村からほど遠く離れたここは、旅人や行商人でさえ方角を見失うため寄りつかないのだとか。木々の葉は季節を忘れたように生い茂り、霧がなくとも内部は薄暗いだろうことを想像させる。着いたとカラ松は森の入口に立ち、高い木を見上げた。
「説明するザンス」
彼と共に店から出て、イヤミは腕を組んだ。カラ松は奇異なものを見るようにイヤミを振り返った。
「何故、お前に説明しなければならない」
「ここまで連れてきてやったのは誰ザンス」
「お前じゃなくてオイラだろ、バーロー」
背後から聴こえてくる野次は無視だ。イヤミの肩越しに、店の窓辺に肘をつくチビ太を一瞥し、カラ松は意図が読めぬと前置きした。
「だから、俺とおそ松だけで行くと言っただろ」
「巨人に襲われたのはミーもザンス。ミーは説明を聞く権利があるザンス」
「俺もハッキリしたことは言えないが、あれは俺たちを捕えようとした追手だ」
満足かと言いたげなカラ松に、イヤミはそれだけでは足りぬとゆるく首を振った。どうしたものかとカラ松は頭を掻いた。
「いーじゃん、一緒に行けば」
二人の問答にすっかり退屈したおそ松は、欠伸を溢す。あれだけ面倒事を嫌っていたのに食い下がるとは、イヤミの考えていることは分からない。そう呟けば、おそ松の隣に並んで成り行きを眺めていたチビ太は、あの男はそういう輩だと笑った。
「オイラと旅しているのも、そういう性分からだしな」
「?それってどういう、」
「チビ太、おそ松!行くザンスよ!」
結局同行するということで決着がついたらしい。森の入口へ立つ二人のところへ、おそ松たちは慌てて向かった。
まだ少々納得していない顔のカラ松を先頭に、おそ松たちは霧の深い森を進む。キョロキョロと辺りを見回しながら、おそ松は「なぁ」と前を行くカラ松へ声をかけた。
「こんなところにいるのか?その……」
「チョロ松か?三番目だから、お前の二番目の弟になるか」
いる筈だと言って、カラ松は道なき道を迷わずに進んでいく。

「訳の解らない奴だ。あれだけ面倒事に巻きこまれるのは御免だと言っていたのに」

OTHER

×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -