11.







「教え無いよ。今は」
まだ。
と、聡は嫌らしく笑い、楸を睨み返した。

教えて、会っても。
今のままでは、杏はまた場所を変えるから。
と、心の中で呟く。



「聡には、アンジェは素直になるからな…」

「まあね。」

「…お前、もしかしてアンジェの事」

「まあね…って、凄むな。想うだけなら良いだろう!」

「最悪」

「なら、お前が掴んどけよ。」

「出来ないから、困ってるんだろうが!」

「じゃあ、凄むな。」



奪うだけが、恋じゃないしね。
好きだから、幸福になって欲しいから。
二人が早く元に戻れれば。

と、聡は思っている。


杏樹の心の中に、友人としての自分はいるが。
恋人としての自分はいないと分かっているのからかも知れないし。

二人が想い合っていると言うことを、強く感じているからか。

奪いたいと言う気持ちは生まれてこなかった。


杏樹の心の片隅にでも、恋と言う情があるのなら。
そう、見ていてくれるのなら。
楸を敵に回したとしても、後悔はしない程の気持ちは持ってはいるのだが。


「俺は一生片思いだよ。」

「ふ〜ん…」

「ってか、お前ホント支障きたすからやめとけって!」

「知らね…」

「明日、頭いてぇなんて言っても、しらねぇかんな!」

「あー…、分かってるって…」


テーブルの上に自分が出した以上の空の瓶を見て聡は驚く。



知らない内に冷蔵庫から出したな…



睨むように楸を見ると、まるで放心しているように、




ぼーっ





としていた。









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