4.





外には大きな看板。
最近大手ブランドと契約した碓氷楸夜が写っていた。
嫌でも、視界に入ってくる。




「碓氷ねぇ…」
由香の言葉に肩が震えた。
「なんか、いけ好かないのよね。」


ふぅ…
と、由香は小さく溜息を吐いた。



「由香は、春崎悠が好きだからでしょう?」
「だってねぇ、年下が好みなんだもん。一度くらい付き合ってみたいわね。」



夢見る乙女の様におどける由香を見て、杏樹は微笑んだ。







私も、昔はそんな風に夢を見ていた。
だけど、それを実際に体験すると寂しかった。
辛かった。
何故と、心に不安が残って止まらなかった。



だから、自分から離れたのだ。
誰に言われたのではなく、自分から逃げ出したのだ。







「何?いきなり静かになって。」
由香が、困ったように話しかけてきた。

「えっ……?……ぁ…なんでもないよ?」

杏樹は小さく首を振り、答えた。

「そう?なら良いんだけど…」
と、由香は言う。







もう一度、外を見た。
楸夜の看板に自然と目が行く。
降り注ぐ雨は、私の心を映しているかの様に。









本当の彼の綺麗な笑顔は、とても魅力的だ。









彼の笑顔を見ていると、やはり私たちが離れて長い時間が経ったと言う事を思い知らされた。
私の知っている彼は、余り笑わない。
何時も、周りに沢山の人がいたけれど。
彼が笑ってくれるのは、私と親友と言える人のごく一部の前だけだったから。



私の知っている限りは…








だけど、看板に写っている笑顔は、知らない人の様な鮮やかさだった。








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