3.





週末は雨の空。
憂鬱になりながらも、仕事はしなくてはいけない。



秘書と言う名目上、外部との接点が多々ある。
だが、それはほんの一部で、殆んどは雑務ばかりだ。





「杏樹。住み心地はどう?」

「凄く良いよ。あの物件は本当に借りて良かったよ。有難う、由香。」



由香が、今住んでいる場所を提供してくれた友人。
親が、地主で方面の土地をアパートにして貸したりしている。



引っ越しが絶えない杏樹が度々お世話になっていたりする。



「杏樹好みの物件。探すのに苦労したわよ。丁度新築賃貸があったから、そこにしてみたの。」



「…本当に有難う。」

「あんたって。よく引っ越すわよね?」




ズキン…




心が騒ぐ。
彼の顔が頭に浮かんで消えた。
何事も無いように、笑顔を作る。



「色々な所に住むのが好きなの。」



由香は少し溜息と吐き
「まぁ、いいけどね。」
と笑った。





杏樹は空を見上げた。
しとしとと、雨が降っている。

「雨ね。」

由香がそれに答えるように呟いた。





「そうだね。」
書類を整理し始めた杏樹は、空から視線を外した。








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