勘違いされやすいけどピュアなんです2





「涼ー!」
「げ…」

俺は風紀委員に提出する書類を生活指導室に持っていき、食堂で一息つこうかと廊下を歩いていたら、うるさい声をあげて転入生がバタバタと走ってきた。
一瞬顔を顰めるが、転入生に手をぐいぐい引っ張られて一緒にこっちに向かってくる御園生の姿を見つけ思わず顔が緩む。

「食堂行くのか!?俺達も行くんだ!一緒に行こうぜ!な、楓!」
「はっ…はぁ、…え?あ、うん…?」

転入生に無理やり走らされたのか上気した頬ではあはあ息を乱している御園生やばい。
俺がじっと見ていると御園生は気づいたのか少し戸惑いながらしながら首を傾げる。

「…?か、かいちょう?」

見つめられたせいか少し照れたようにはにかみながら俺の名前(正確には役職名だが御園生は俺を会長と呼ぶのでもうそれが名前でもかまわん)を呼んだ。
ぎゃぁあああああ小悪魔めぇえええ可愛いぃいいいい

「おい涼!何楓のこと見てんだ!?俺のこと見てろよ!」

転入生は俺の返事も聞かず、ぐい、と俺の腕に腕を絡ませてきた。
おいやめろ!せっかくいい気分だったのに!
俺は振りほどこうと腕を引いた。
しかし、俺が振りほどくよりも先に、転入生の体が後方にぐらりと揺れて、俺の身体から離れた。

「御園生…?」

転入生を俺から引きはがしたのは御園生だった。
転入生は引きはがされたその勢いのまま後ろによろめくが、なんとか踏みとどまり、御園生をキっと睨んだ。

「楓!?何するんだ!急にひっぱったらあぶないだろ!?」
「あ、…お、れ…?」
「せっかく涼と会えたのに邪魔するなんてお前最低だな!」

邪魔してんのはてめぇだよくそが!!!と思いつつ、言葉に出さず御園生を見つめるが、御園生は御園生自身今の自分の行動に驚いているようで、目を見開いて少し震えていた。
え、どうしたどうした!?今にも泣きそ…

「ご、ごめんっ…!」
「御園生!?」

御園生は俺と目が合った瞬間に弾けたように走り去った。
俺も後を追おうと一歩踏み出しかけたところで後ろにぐんっと引かれた。

「おい涼!あんなやつほっとけよ!お前が好きなのは俺だろ!?」
「は!?」

尚俺の腕に巻きつき頬を染めながら意味の分からない主張をする転入生に俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。
ヤダ何コイツきも!!
俺は全力で腕を振りほどき、転入生を突き飛ばした。

「意味わかんねぇこと言ってんな!好きじゃねぇしむしろ嫌いだよ!触んな!!」

それだけ言い捨てて俺は御園生の後を追った。
後ろでまだ何か騒いでる声が聞こえたが無視だ。
ちょっと言い過ぎたかなとも思わなくもないが無視だ。
俺は全速力で校内をかけまわり御園生を探した。

「小田切様!音楽室の方へかけていきました!」
「まじか!ありがとう!」

途中現れた俺の親衛隊の子が御園生の行先を教えてくれて、俺は再び全速力で音楽室を目指した。



「みそのお…?」

静かな音楽室に入ると、教室の隅でしゃがみこみ丸くなっている御園生の肩がビクリと跳ねた。
俺は静かにドアを閉めて御園生の元へ歩いて行った。

「御園生どうした?急に走ったり…」
「ご、ごめんなさい…」
「ん?」

しゃがみこんでいる御園生に並び、俺もしゃがんだ。
こんな近くに御園生が!いいにおい!等と内心興奮はしつつも、俺は微かに震えている御園生に出来る限りの優しい声で話しかけた。
すると御園生は少し顔をあげて俺に謝罪の言葉を発した。

「俺、邪魔した…」
「………ん?」

そう言いながら御園生の瞳からぽろ、と涙が零れた。
良く見れば目元が赤くなっていて、ずっと泣いていたことが分かる。
え!?何!?何を泣いている!?何ゆえ!?
しかもごめんて何!?邪魔したってなに!?
俺は御園生の言葉が理解できず混乱した。
御園生はぽろぽろ流れる涙を一生懸命ぐしぐし拭いながら言葉を続けた。

「会長が、いつも…アイツに会いに来てるの分かってます…アイツのこと好きなのもわかってます…。いつもは我慢できたんです」
「………え、っと…御園生?」
「でも、さっき、さっき…せっかく会長がっ…俺のこと見てくれたのに、アイツが邪魔したから…ついっ…」

御園生はそこまで言い切るとさらに大粒の涙をぼろぼろと流し、ひくひくと嗚咽をもらしながら泣き始めた。
んっと…ん?えっと…アイツって転入生のことだよな?で、俺が転入生に会いに行っていて、転入生のことが好き…………ん!?

「御園生、誤解、誤解してる…」
「ふ、っ…ぇっ…へ?」
「俺、転入生好きじゃないし、むしろくっそ嫌いなんだけど…」

一体なぜそのような誤解が起きたのか分からないが、俺の言葉に御園生はぼろぼろ流れる涙をそのままに目を見開いて固まった。
俺ははぁ、と一度ため息をついてからポケットに入っているハンカチを取り出して御園生の目元をぬぐった。

「そんなに泣くと、目が溶けるぞ?」
「か、いちょ…あの、アイツが好きじゃないって…え…?」
「好きじゃねぇよあんな育ちの悪い下品なやつ…」
「で、でも…っ、前食堂でキスしてたし…よく、会いに来てて、会えるたびいつも嬉しそうで…俺、…あの」

御園生は全く状況が呑み込めていない困惑した表情でおろおろとしながら必死に言葉を紡いでいた。
その様子が何だか可愛いくて。ていうか可愛くて。まじ可愛くて。俺は思わずふっと笑って御園生の頭を撫で回してしまった。

「わっ!?」
「あのキスは事故だし、俺が会いに行ってたのも、会えて嬉しかったのも、転入生じゃない」
「…?」

もう涙は止まったのか、それでもまだ涙の跡残るその瞳できょとりと俺を見上げる御園生。
御園生を平凡だなんて誰が言い出したんだ。
もう今にも襲いたいほどにくそ可愛いしくそえろい。
だが御園生とこれまでそうたくさん話したことも無い俺にそんな勇気はなく、撫でまわしていた手を御園生の頬に下ろし、するりと撫でてから離した。

「このハンカチ分かる?お前が渡してくれたヤツ」
「…あ」
「ずっと返してなくて悪かったな。手放したくなかったんだ…」
「え…」

やっと何となく理解したのか御園生の頬がうっすらと赤く染まる。
ああちくしょう可愛い。

「会長、あの…」
「ああ、一個訂正しないとな」
「?」
「転入生が嫌いだと言ったこと」
「…あ…」

俺の言葉に御園生は傷ついたような表情を浮かべ、再びしゅんとうなだれた。
やはり転入生が好きだと勘違いを再発させたのだろう。
それでそんな顔してしまうなんて、そんなの、俺に好きだといってくれているようなものじゃないだろうか。
俺は御園生とは対照的に浮上に浮上し、上がり続けるテンションを押さえられずに御園生を抱きしめた。

「んえ!?」
「転入生は嫌いだが、アイツのおかげで御園生に会えたんだから、少し嫌いくらいに訂正しておかないとな」
「!」

ぎゅ、と抱きしめたままそう言うと、御園生は一瞬びくりとはねた後、おずおずと俺の背中に手を回してきた。
あああああああもう本当天使可愛いあいしてる!
こうなれたのも転入生のおかげかと思うと、少し嫌いから苦手くらいにしてやってもいいかな、と頭の片隅で思った。
まさか俺の天使が俺の腕の中にいてあまつさえ抱き返してくれるなんてこんな至福あるだろうか。
そうだな、とりあえず








これから先どうしたらいいかを誰か教えてください




(ああ小田切様が困惑なさってる!)
(御園生のことばっかり考えてた割に両想いになることなんて微塵も想像してらっしゃらなかったから!)
(お可愛らしい!ああ助けて差し上げたい!)


END


実は会長×平凡好きでうへうへ書いてて気が付いたら長くなってた。
リクに不憫かヘタレだと嬉しいなって可愛いことが書いてあったからヘタレ!不憫!ヘタレ!不憫!と唱えながら書いていたらよくわからない人になってしまって無念です。

こんな感じで大丈夫でしょうか…びくびく。
ユウ様リクエストありがとうございました!!








「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -