朝チュンヒーロー

チュンチュンと小鳥たちが歌う爽やかな朝。
目覚めると腹の上には男…それも知った顔が乗っていました。


「はぁっ…成瀬…」
「え…は…?」

俺は覚醒したててぼんやりしている頭をフル回転させ、眼鏡がなくて若干ぼやけてる視界を出来るだけ目を細めて焦点を合わせる。
何が起きているのか分からず固まっていると、俺の腹に乗っている奴がそろりと俺の頬に手を伸ばしてきた。

「っ…!?」
「寝起きもかっこいい…」

サラリと流れる傷んでいない茶色の髪、陶器のように白くて滑らかな肌、外国の血が混ざっているのだろう色素の薄い瞳。うっとりとこちらを見つめているのは間違いなく美形ホイホイと名高い転入生だ。
転入生は俺が目覚めていようが関係ないのか自分勝手に俺の腹の上で俺のことを撫で回している。
ちなみに転入生は何故か下半身裸っていうか上に一枚纏ってるシャツってそれ俺のではないだろうか。
俺は動揺しすぎて逆に落ち着き払ってしまっている自分の現状をどうにかしようととりあえず眼鏡をかけるためにサイドボードに手を伸ばそうとした。
したのだけれど手が動かない。
いや待てどういうことだ。

「ああ、動けないだろ?ちゃんと縛ってあるんだ」

ニコリ、と美形ホイホイの噂は伊達じゃないとでもいうような可愛らしい微笑みで恐ろしいことを言い放った。
ちょっと何言ってるかわからないですね。
俺はどうにか振りほどけないかと体を捩ってみるが、腹の上に寺田が乗っていて動くのもうまくいかない。
ていうかアレ…これ足も縛られてないかコレ。

「や、寺田…これ一体何、どういう…」
「成瀬がいけないんだぜ…?」
「は…?」

寺田は俺の顔をじ、と見つめて両手で頬を包み込むように掴んだ。
俺がいけないって何でだろうか。
とりあえず昨日は酒も飲んでないしここは俺の部屋だし、白澤の時のような粗相はしていないはずだ。
まぁあの粗相は結果的にオーライだからいいとして、この現状は全く理解できません。
俺は昨日は普通に寝たはずだ。
部屋の鍵もちゃんとかけたはずだ。
なのになぜ寺田はこんなところに居て俺はこんなことになっているのか皆目見当がつかない。

「俺だって、成瀬のこと…大好きなのに…白澤なんか選ぶから…」
「いや…え?」

寺田はそのまま俺を睨み付けるように見つめたまま腹の上から下半身の方に移動していった。
確かに以前白澤が、寺田も俺のことが好きだとかなんだとか言っていたような気がする。
いや待て今そんなことはどうでもいい。
寺田は下半身の方に移動したと思ったらゴソゴソと俺のスウェットに手をかけている。
らめぇえええええそれはらめぇえええええええ

「ちょっ、寺田落ち着け!それはさすがにいくない!いくないと思うな!俺は!」
「うるさい!心が手に入らないなら身体だけもらったっていいだろ!」

いくないいいいいいいい!!
やばい、白澤がKY野郎とか言ってめっちゃ嫌っていた意味が分かってきた。
コイツKYとか以前になんか色々駄目だぞ。
とりあえず助けてくれだれか!
ていうか本当縛り方尋常じゃなくキツイ!
さっきからギッチギッチ食い込んでくる。
そんなことをしている間にも暴れる俺に苦戦しながら寺田がスウェットを下ろそうとしている。
エマージェンシィイイイイイイ!!!!

「寺田ぁああああ!」

ガァアアンと物凄い音を立てて部屋の扉がかっ開いた。
今度は何だと思ってそちらを向くと、ものすごい形相の白澤が立っていた。

「白澤…!?」
「成瀬っ…!」

俺は何が起こっているのか理解できず目を見開いてとりあえず白澤の名前を呼んでみた。
途端に白澤は顔を綻ばせてこちらに走ってくる。
ああ、今日も朝から俺の恋人本当美人。

「何しに来たんだよ白澤!邪魔すんな!」
「てめぇが何してんだ!俺の成瀬を放せ!」

確かに美人なんだが今はそんなことをぽやんと思っている場合ではなかった。
俺の下半身から飛び降りた寺田は突然白澤に蹴りかかった。
白澤はそれを華麗にかわしながら負けじと殴りかかり、二人の攻防戦が始まった。
いやいやいや待って、俺を置いていかないで。
俺はベッドの上で手足を拘束され、情けなくも大の字になってスウェットが若干ズリ落ちた状態で放置された。
泣いてなんかいない。

「はいはい、お二人さんその辺にしといてくださいねー」
「!?」

先ほど白澤が開け放った部屋のドアから今度は副会長様が現れた。
副会長様の登場に、俺を放ってドンパチやらかしてた二人はピタリと止まった。

「とりあえず風紀委員長さんを助けてあげたらどうです?白澤」
「あ!ご、ごめん成瀬…!」
「いや…」

副会長様の言葉に白澤ははっとして、寺田から離れて俺の元へやってきて手足の拘束を解いてくれた。
痕が残っている…酷い。

「な、なんで邪魔するんだよ天道…!」
「俺があなたのことを好きなのをわかっていてそれを聞いてくるんですか?」
「っ…」
「成瀬なんてドヘタレ野郎諦めて早く俺に乗り換えなさいって言ってるでしょう。さぁ、俺の部屋に行きますよ」
「や、やだっ…!成瀬!成瀬!好きだー!」

痕が残って若干痛む手首をさすっている間に副会長様が寺田を無理やり引っ張って部屋を出ていった。
その際にきちんとドアも閉めていった。
出ていくギリギリまで寺田が何か騒いでいたけれどもう聞かなかったことにしたい。

「成瀬、成瀬っ、何もされてないだろうな…!?」
「いや、されてはないが…」
「よ、よかった…」

そう言いながら半べそで俺に抱きついてくる白澤。
どうしよう本当何この生き物。可愛い。
俺はさっきまでキチガイ転入生によって与えられたストレスが、癒されていくのを感じた。

「なんか、俺もごめんな。まさか突然襲われるとは思っても…」
「でも…」
「ん?」

突然腕の中の白澤がしゅん、とした。
俺は少し距離を取って白澤の顔を覗き込む。

「俺も…最初は…既成事実作ってやろうとか…そんな感じだったから、あんまアイツのこと言えねぇなって…」

綺麗な眉をハの字にして目に見えてしゅんとしている白澤。
もう本当何この人は何なの。
俺はふ、と笑って白澤を抱きしめ直した。

「でも俺は、それでお前のこと好きになったから、よかったと思ってる」
「成瀬…」
「寺田なんて目じゃない。白澤、本当可愛い」
「っ…」

ぎゅ、と俺の背中に腕を回してくる白澤。
本当可愛い。もう可愛いしか言えない。

「あ、でも…」
「え?」
「今日の白澤はかっこよかったよ。助けてくれてありがとう」
「!お、お前には負ける…」

そう言って赤くなる白澤。
ああ、駄目だ…







やっぱ可愛いわ、この人



(きょ、今日学校サボって…このまま二人でいねぇ…?)
(何だそれ、誘ってるのか?)
(うん…)
(!?(小悪魔めぇええええ))



END

おはぎさんから、朝チュン関係続編のリクエストでした!
成瀬がヘタレっぽくなっちゃってどうしよう。
申し訳ない…
こんなんで大丈夫でしょうか…ガタガタ
一万打企画参加ありがとうございました!





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