フラグクラッシャーの陰謀


聞いてください。
俺の恋人直樹くんが冷たいです。

数日前、腐男子友達の直樹から突然告白された。
ノンケだったのにお前が好きになったから責任取れ的なこと言われたんだ。
恋人絶賛募集中だったし、なによりその告白にすごくときめいたから俺はオッケーした。つまり俺と直樹は今現在恋人のはずだ。
はずなのに、アイツは相変わらず俺に冷たい。っていうか酷い。
直樹は腐男子のくせに美形で、クラスでも人気者だリア充ばくはつしろ。
だからクラスにも友達は多いし、チワワ達も寄ってくる。
そこまではいいんだ。俺、束縛強い方じゃないし。俺のこと好きでいてくれるならある程度までなら周りと仲良くするのだっていいさ!俺だってするしな。
でも、違うんだ。
何度も言うが直樹は俺に冷たい。
宿題は見せてくれないしメロンパンは分けてくれないし相変わらずおっさんのゲロみたいな存在だとかいうし。おかげで俺の心はズタボロだよ。
だけど、俺以外には優しいんだ。
何それどういうこと。
友達だった時からそうだったけど、今は恋人なんだし、俺に優しくすべきじゃないの!?ねぇ、俺がおかしいの!?
そんなわけで俺は傷んだ心を癒すべく、裏庭で絶賛おサボリ中。
本当は裏庭で生BLウォッチングでもしようと思ったんだけど生憎誰もにゃんにゃかしてなかった。ガッデム。

「おいそこの平凡」
「ほぁ?」

一人不貞腐れて草をぶちりぶちり抜いていると上から突然声をかけられた。
顔を上げるとそこにはまさかの我が学園の俺様何様生徒会長様がいた。
うわー!イケメーン!!!!

「今授業中だろ。てめーココで何してやがる」
「は!」

ぎゃぁああああそうだった俺今サボり中だった!!
会長だきゃっほいとか考えてる場合じゃなかった急いでタイムマシンを探さなければ。
俺は会長の言葉に一気に青ざめて勢いよくガバリと立ち上がる。

「すみません!ちょっといじけてただけです失礼しますた!」
「ちょっと待て」
「ぷぎゃー!捕まった!オワタ!どうか退学だけは勘弁してくだせぇえええ!!!」

捲し立てるように謝って急いで退散しようとしたら腕をがしりと掴まれた。
俺はもうパニックすぎて半泣きだ。

「っぷ、」
「ふぇ?」
「あははっ、ははっ」

俺がおろおろとしていると会長から笑い声。
おそるおそる会長の顔を見ると笑っていた。
うわー!イケメーン!!!!

「授業サボってたくらいで退学にするわけねーだろ、ふ、はははっ」
「あ、え、そ…そうですよねー…はは」

会長は俺の手を掴んだまま、反対の手で腹を抱えて笑っていた。
そんなに笑われるとは思っていなかったから嬉しいような恥ずかしいような。嬉し恥ずかし恥ずかしさ7割ってところだろうか。

「はぁ、笑った…」
「あ、あの…じゃぁ、俺…もう戻るんで…手を離し」
「嫌だ」

俺は手を離してもらおうと手をぐ、と引くと、会長はさらに力を込めて掴み直してきた。
ちょ、痛い。痛いぞさすがに。あれ、ちょっとミシミシいってないかこれ。

「あの…」
「もう少しここにいろよ。俺に付き合え」

俺様ーーーーーーーーーーーー!!!!
どうしよう生俺様をこんな間近で見れるなんて!!ちょっと俺息荒くない!?はあはあ
言ってること自分勝手でうぜーけどイケメンだから許す!会長やべーよこれどうしよう萌える。

「で、付き合うのか、付き合わないのか。まぁ拒否権ねぇけどな」
「つ…付き合います…」
「よし」
「っ!」

俺が了承の返事をすると、会長はニコっと笑って俺の頭をガシガシと撫でた。
うわ、どうしようときめいた。
俺様のくせに甘やかすとか…なんて卑怯な技を使ってくるんだこの人。
直樹に冷たくされて傷心中だった俺の心は異常なまでに会長のナデナデにときめいていた。

「お前小せぇな」
「普通ですよ。会長がでかいんです」
「顔もクソ平凡だしな」
「会長がイケメンすぎるんです」
「ふっ、何だそれ」

うーわーもうだめこの人かっこいいよ。さすがモテるだけあるよ。人気ランキングNo.1なだけあるよ。
笑いながら相変わらず俺の頭をさらさらと撫で続ける会長にときめきの導火線が体中を走っていた。

「そういやさっきお前いじけてるっていってたな。平凡すぎていじめにでもあってたのか?」
「違いますよなんですかその理由!」
「じゃぁ何でいじけてたんだよ?」

言えよ。と命令口調で、でも優しく言う。
もうそれだけでなんでも言うこと聞きます殿状態である。

「こ…恋人が…冷たくて…」
「恋人?お前みたいな平凡に?夢でも見てんのか?」
「ちくしょう!どいつもこいつも!俺のことなんだと思ってんだ!」
「平凡」
「間違いねぇーー!!」

せっかく優しいと思った会長までなんてことをおっしゃるんだ。酷い。
だがしかし言っていることはあながち間違ってもいない。

「でも…」
「あ?」
「本当に夢だったのかも…」

直樹に告白されたなんて。
恋人欲しすぎて見た、俺の勝手な夢だったのかも。
だって、直樹は本当に俺に冷たすぎる。
俺は、恋人とイチャイチャしたかったのに、直樹とはそんなこと一度もしてない。
これ付き合ってるって言わないよな。
俺は目頭がじわりと熱くなるのを感じた。

「おい平凡…」
「ふ、ぇ…俺はどうせ平凡だよー…」
「おい泣くなって」
「っ!」

ぐしぐしと溢れそうになる涙を拭っていたら、突然腕を引かれて抱きしめられた。

「か、いちょ…」
「そんな恋人捨てちまえよ」
「へ?」
「俺が…」
「おい!!!!!」

会長が耳元で何か言いかけた瞬間、背後から聞きなれた声が響いた。
驚いて振り返ると、そこには案の定、直樹がいた。ただし予想外に息を切らして。

「直樹…!」

俺は思わず顔を綻ばせたが、直樹はなぜかものすごい怒っているような顔でズンズンとこっちに近づいてくる。

「これはこれは会長様じゃないですか。こんにちは」
「お前は…」
「ソイツに何してくれてんですか。はなしてください」
「わっ…!」

直樹は会長にニッコリ笑いかけると、いまだに会長の腕の中にいた俺の手をぐい、と引っ張った。

「お前もこんなとこで何やってんだ。行くぞ」
「あ、えっ、ちょ…っ直樹!?」

俺はそのまま会長を振り返る暇ももらえずぐいぐいとものすごい勢いで直樹に引っ張られていった。


「直樹!直樹ちょっとさすがに手痛い!」
「おい」
「っ」

人気のない場所まで来て、手が痛いと訴えるとぱ、と放された。
同時に聞いたこともないほど冷たい声で呼ばれ、俺はビクリと跳ねた。

「なに、会長なんかに抱かれてんの、お前」
「ちょ、その言い方だと語弊が」
「黙れ」

やだどうしようめっちゃ怖い。
こんな直樹みたことねーよどうしたっていうんだ。

「許さないっつったろ」
「な、なにが…」
「俺以外、フラグ立たせんの」
「え…」

ものすごい不機嫌顔のまま直樹は言った。
え、ちょっと待って、これって

「まさか直樹…ヤキモチ…!?」
「調子乗んな、下痢便野郎」
「悪化した!?」

ゲロより酷くないかそれ。
でも今はそんなことよりも、直樹が嫉妬してくれたかもしれない事実の方が大事だ。
だって今調子乗るなとか言われたけど、これは絶対ヤキモチだろ。

「えへ…えへへ」
「なんだよ、気持ち悪い」
「俺さー…」
「あ?」

俺はニヘラニヘラと笑いながら直樹に近づく。
直樹も引かないで俺の腰に手を回してきた。
うわぁどうしよう何これ嬉しい。

「直樹が冷たいから、すっげ傷ついてたんだけど、今のでもうどうでもよくなった」
「そう…」
「うん。ふへへ、直樹、すき」
「はいはい」

俺の告白にぶっきらぼうに答える。
きっと直樹はツンデレなんだ。
だから俺にだけ冷たかったんだ。そう思えば納得できる。
ああ、何だなんだ。俺の早とちりと思い違いか。
俺は幸せな気持ちのままぎゅーと直樹の背中に腕を回した。








フラグ折られました


(このー!ツンデレめっ)
(俺、ヤンデレ好きって言わなかったっけ?)
(…………え)


END

5月拍手お礼文



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