その道の先に | ナノ

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春…桜の季節、マウンテンバイクのペダルを力強く回しながら、私は、総北高校の正門坂を立ちこぎをしながら進んでいく。そして、何故か、後ろでいろいろと騒がしい声が聞こえる。そんなに、女がマウンテンバイクを乗るのは珍しいんだろうか?と、その時…一台の自転車がサッと通ってから、小さな声で囁かれた。

「座れ……見えてるぞ。」

「え……?」

その通った珍しい自転車を見ながら私は、その自転車の主の言った意味を考えてから……ハッと気付いて座る。そのまま、さっきよりもペダルを多く回す。降りたらもっと恥ずかしい。


(入学初日に、恥ずかしい……。)

そういえば、さっき教えてくれた珍しい自転車にのっていた人にお礼を言わないと……その人も身長は少ししか違わなかったけど男だった気がする。もう追い付いたんだけど……抜くのも恥ずかしいのでそのまま付いていくことにした。







「えっと…さっきはありがとう。」

流れるままに、隣に止める事になった。やっぱり男の子で、おとなしそうな印象を受けた。無口なのか、私の言葉には、頷くだけだった。他に話題は無いかなと思いながら、彼の自転車が目についた。マウンテンバイクとは違い、泥除けとかがないし、タイヤも細いし、ハンドルも変わってる。

「その自転車、格好いいね。何ていうの?」

「ロードレーサー…。」

「ロードレーサー?」

「自転車競技用の自転車の事だよ。」

私が彼に聞き返すと、別の男の子の声が聞こえた。無口な男の子とは、違い口が軽そうな感じの男の子だった。

「そ、自転車競技用の自転車。」

「へぇ、だからかっこいいんだね。」

「ははっ、そういえばさっき見てたけど、君達、結構登るね〜。同じ中学?」

「ううん、初対面。あったばっかりだよ。私は、優希。小野田 優希。」

「俺は、手嶋純太。お前は?」

「青八木…一。一は、一番の一。」

「手嶋くんに青八木くんだね。よろしく。」

私は二人に両手を差し出した。それを見て、2人は顔を見合わせてから、それぞれ手を差し出してくれた。

「あぁ、よろしく。」
「…よろしく。」


これが、私と2人の出会い。そして、彼らがきっかけで、私はロードレースの世界を覗く切っ掛けになる。




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