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光子郎君から、聞いた話によると、あの電話ボックスを設置した人間を探すらしい。今は、太一さんを先頭に、海岸に沿って歩いている。歩いている隣には広く青い綺麗な海…。こんな景色はじめてだ…。
「綺麗だね。」
「カノン、嬉しい?。」
「うん。」
隣で歩くココロモンにそう言った。今すぐにでも、ここで、スケッチブックを開きたい。歩きながらスケッチ出来ないかな?
「カノンさん。」
「何?光子郎君。」
「歩きながら描かないでくださいね。危ないですから。」
その考えは、光子郎君に読まれてた…。私は、慌てて、鞄を背負い直した。
「なぁ?アグモン。」
太一さんが、立ち止まり、アグモンに聞いた。さっき、何故グレイモンからアグモンに、戻ったのか。
「ボクにもわかんないや…。」
その答えを聞いて、太一さんは、崖から落ちそうになっていた。アグモンがしっかり支えていた。
グウウウウッ
「?!」
何かのうなり声が聞こえた私は、振り向いた…その時、大きな岩を突き破って、黒いサイが出てきた。
「なんだ?アレは?。」
「モノクロモンや。でもおとなしいデジモンやさかい、心配いりまへん。」
と、テントモンは、そう言ってるけど……全然、おとなしそうに見えないよ…。今にも襲ってきそうな勢いだ。
私達は急いで、その場から少し離れた。モノクロモンの方を見てみると、もう一匹増えていて、頭をぶつけ合っていた。
「仲間同士で闘ってる。何故だ?」
「縄張り争いでっしゃろ。」
光子郎君の言葉に、テントモンが答えた。
「そんなことより、早く逃げましょ。」
「早く早く!」
「あ、待ってよ。パルモン。」
「ま、待ってよ。ココロモン。」
パルモンとココロモンが森の奥の方へ、走っていく。私達も、ココロモンを追いかけた。
「もぅ…ダメぇ…ハァ。」
「もぅ、大丈夫だよな…ハァハァ…。」
今日は、走ってばかりだ…。先頭を走っていたパルモンとミミちゃんが…走っていた足を止めた。太一さんが後ろを見て言った。ちなみに、パルモンと先頭を走っていたココロモンは、今、私の隣にいます。
「ココロモン…大丈夫…?」
「だ、大丈夫…コ、ココロは、平気。」
大丈夫に見えないよ…ココロモン。
「タケル、足大丈夫か?」
「うん。」
「見せてみろ。」
ヤマトさんは、タケル君を座らせて、怪我がないか見た。見ると、右膝を擦りむいている。
「痛そう…。」
「空!消毒液と絆創膏、持ってたよな?」
「えぇ。直ぐに手当てを…。」
「待って!」
ヤマトさんは、その怪我をみて、消毒液と絆創膏を持ってる空さんに言った。空さんは、腰のポーチから道具を取り出そうとしたら、ココロモンが何故か止めた。
「タケル、怪我見せて!」
「うん。」
「痛い?。」
「大丈夫だけど、ちょっと、痛い…。」
「じゃあ、ココロがおまじないするね。」
タケル君の所へ行ったココロモンは、怪我をみて、おまじないするねと笑顔で言った。
「ヒーリング。」
ココロモンの額の宝石の部分から、優しい緑色の光が出て、タケル君の怪我の場所を包んで消えた。
「痛くない…?」
光が消えてから、タケル君は、そう言った。怪我の場所を見ると、もう怪我が治りかけていた。
「ココロの“ヒーリング”は、怪我を治すことが出来るの。」
「すごーい。ココロモン!ありがとう。」
「良かったね、タケル。」
「うん。」
お礼を言われて、ココロモンは、照れていた。
「ココロモンは、癒しの力を持つ珍しいデジモンなんですわ。」
「へぇ…。」
「何でも治せるの?」
「いや、ココロモンの癒しの力じゃあ、あのくらいの傷しか治せまへん。」
テントモンが、ココロモンの事を教えてくれた。光子郎くんが尋ねると怪我は、かすり傷位しか治せないと答えた。でも、ちゃんとはなおってみたいで、そこは、空さんが手当てをしてる。
「どうして?。」
「ココロがちょっと、疲れてたから…。」
テントモンに聞いたが、戻ってきたココロモンがそう答えた。私は、ココロモンを抱っこして頭を撫でたら気持ち良さそうに目を細めた。
「お疲れ。ココロモン。」
「気持ちいい〜。カノン。」
その時の空はもう、赤くなっていた。
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