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私以外の皆は電話した。だけど、聞こえるのは、デタラメな情報ばかり、私の家にかけても、皆と同じだと思う。
私は、座って、未だに電話ボックスの中に入る、丈さんを見ていた。
「もう、諦めて、移動しようぜ。」
太一さんは、元気だな…。私は、疲れた。
「ちょっと、待て!」
と、歩き出そうとする太一さんをヤマトさんが、引き止めた。
「こっちからかけられなくても、向こうからかかって来るかも知れないだろ!」
と、ヤマトさんは、言った。確かに、また、かかって来るかも知れない。
「ここで、待っていたって時間の無駄だよ。」
「少しは様子を見ろといっているんだ?!皆、疲れてるんだぞ!」
ヤマトさんが、そう言って、太一さんは、皆を見た。
「お昼もまだでしたね…。」
「そうだなぁ。お昼まだだったもんなぁ。」
そう言えば、お昼近い時間だ。時間は分かんないけど…。
ヤマトさんと光子朗君のお陰で、休憩になった。
「誰か食べるもの持ってない…?私が、持ってるのは…あれ?」
空さんは、そう聞いて、腰に片手をのばす。そして、いつの間にかついていたあの変な機械を取り出した。
「カノンもあるよ?」
「え?本当だ。」
ココロモンが、背負う鞄をつつくので下ろして、見た。私は、鞄の横、そこに付いていた。いつついたのかな?
「皆、持ってたのか…。」
「どうやら、これは…。」
光子朗君のお腹の音がした。それから、あの機械から、話は戻る。
「私が、持ってるのは旅行用の救急セット。それに、針と糸くらいよ。」
「僕は、ノートパソコンとデジカメ、携帯電話。ここへ来て、どれも使えなくなってるんです。」
「光子朗君も?私も、携帯使えないんだ。」
私は、黒い画面の携帯をみながら、ついでに、持っているものを言った。
「他は…スケッチブックと筆箱です。」
良かった。スケッチブックが濡れてなくて…。
「よくもってくるよなぁ〜。」
「太一さんは?」
と、太一さんが、光子朗君の持ち物を見ながら言う。光子朗君に何を持ってるのか聞かれた太一さんは、ズボンのポケットから、何か出していった。
「これだけ。単眼鏡。」
「俺も食べ物はもってないな……。」
ここまで、食べ物は誰ももってないみたい。ヤマトさんがそういったあと、もってるよとタケル君が自分鞄の中身を見せた。
中身いっぱいにお菓子が入っていた。
「貴方うちの子供会の子じゃあ、なかったわよね?」
「うん。夏休みだから、お兄ちゃんの所に遊びに来たんだ。」
ミミちゃんの問いに、元気よく答えて、ヤマトさんをみる。
なんで、ヤマトさんを兄なのか、太一さんと光子朗君がひそひそ話してた。
「ミミちゃんはなにもって来たの?そのバック大きいけど……?。」
空さんが、ミミちゃんの持っている鞄を見て言った。ミミちゃんは、鞄を下ろして、中身を次々に、出していく。
「えっと、コンパス、固形燃料でしょ…釣糸セットに…。」
他にも、サバイバルナイフや、ライト、キャンプ道具が出てきた。凄く意外だ。
「結構、本格的なサバイバルセットだな…。」
「これ?ミミちゃんの?」
「ううん。パパの。」
ヤマトさんがそう言った後、私は、ミミちゃんに聞いた。
「せっかく、キャンプに来たんだもん。パパの道具借りてきたの。内緒で。」
「内緒って、ばれてるんじゃ……。」
「大丈夫よ。」
とびきりの笑顔でそう言ったミミちゃん。
大丈夫の理由を聞きたい。
「普通、こんなのキャンプに持ってこないぞ?」
太一さんが、素直な感想を言う。私も、思います。
「でも、これからは、役に立つな。」
「そうね…。」
この先、何が有るのか分からないし……。ヤマトさんと空さんがそう言って、頷きあった。
「ところで、丈は、食べ物なんて……もって。」
太一さんの一言で、私も、電話ボックスの丈さんを、みる。肩の白い鞄をよく見てみると…赤い字で…かかれた文字が……。
「あぁ!あれ、非常食だ。」
皆が丈さんをみる。
「おい、丈!非常食、持ってるじゃないか。」
「え?なんで僕がそんなの持たなくちゃいけないんだ?」
太一さんが続けて叫ぶと、受話器を持ったまま、丈さんが、返事をした。
「だって、そのバック!」
「え、あ、そうだ!これをミミくんに届けにいくところだったんだ。」
光子朗くんに指摘されて、鞄に気づいて、受話器をちゃんと戻してから、ミミちゃんの元へ
「ミミだって。」
「私?」
「ミミくん!君は非常食当番だったろ?ちゃんと管理しなくちゃダメじゃないか?」
「えー、だって、重たいし。」
そう言えば、ミミちゃんって、非常食当番だったな。
グゥゥゥゥ
「あ……////。」
「カノンの音だね。」
私のお腹の音が争いを止めた。
「ココロモン。言わないでほしかったな…。」
私は、ニコニコ笑うココロモンにそう言った。その間に、太一さんが、丈さん達に声をかけて、お昼になった。
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