ある休日の昼下がりリビングで本を読んでいた俺は飲んでいた珈琲が空になったので新しいのを注ぎに行こうとした所、もはやBGMと化していたTVドラマが目にはいった。
いつもなら特に目もくれない恋愛ドラマだったが何故か気になり少し見てみる事にした。
内容はまぁ恋愛ドラマにありがちな【付き合っていた恋人が記憶喪失になり、色んな試練を乗り越え再びくっついてハッピーエンドを迎える】的な話だった。
普段の俺なら全く興味すらわかない内容だったが最近キッドの仕事が忙しいようで中々会えない恋人が自分の知らないうちに恋人が記憶喪失になっていたらどんな顔をするのか?それが見てみたくてほんの少しの好奇心から記憶喪失になったフリをしてみる事にした。
決行は次にアイツが俺の家に来た時だ。
その日まで俺が快斗を知らないと言った時のアイツの顔を想像して笑ったりしていた。
(傍からみたら明らかに怪しい奴だが一ヶ月も俺を放っておくアイツが悪いんだ。俺だって少しは会いたいだとか思ったりもするのだ。)

そしてついに待ちにまった日が来た。
快斗はいつも勝手に家に入って良いと言っているのにも関わらず毎回律儀にインターホンを押す癖がある、今日もその通りにインターホンを押してきたので俺はその場で少し待つように言いドアを開けに行く。
さて、ここからが俺の演技の見せ所だ。


「はい。」

ほんの少しだけドアを開け外の様子を伺うように顔をだす。

「よ!!新一久しぶり、元気だったか?」
「あの……どちらさまでしょうか?」

にっこりと太陽の様な笑顔を浮かべて話しかけてくる快斗に思わずこちらまで笑ってしまいそうになるがここは我慢してあくまでもあかの他人に接するような演技を続ける。

「……は?何言ってんの新一。」
「ですから申し訳御座いませんがどちら様ですかと。」

快斗の表情が変わっていく様を見逃さないように訝しげな表情を保ちつつも快斗の顔から視線は離さないようにしていると先ほどまで浮かべていた愛想の良い笑顔が一瞬にして消え酷く無表情になった。
キッドの時でさえした事がない、何処かに感情を落としてきたような顔をした。
こいつのこんな表情を見たことがなくて俺は何か嫌な予感がし、背中が寒くなった…

「新一…俺の事本当に分からないの?」

俺の肩を掴み目をジッと見つめ問うて来る快斗にこのとき嘘だと、ちゃんと覚えてると言えば良かったのに良く分からない意地をはってしまい知らないフリを続けてしまった。

「わ…かりま…せん。」

そう答えた瞬間背中に激痛が走った。

「いっ!!??」

一瞬何をされたのかよく分からなかったが自分が押し倒されている事に気づきそうしたであろう人物を見ようと顔を上げたが俺の上に乗り上げた快斗によって唇を塞がれ見ることが出来なかった。

「んっ…んぅ!!ふっ……うぅ!!」

こんな一方的なキスは初めてで、苦しくて何がなんだか分からなくて必死に快斗の名前を呼んで制止を試みるものの快斗には全く届いていなくてあっという間に服を脱がされ素肌に触れられる。急速な愛撫にさえ反応してしまう自分の身体が恨めしい。

「やっ!かいと…やめ……いやだ!!」

さっきから快斗の表情が全然見えなくて怒っているのかどうかも分からずそれが酷く怖い。
顔をみたいと思って言葉にしようとするも再び口付けられて敵わなくて何とかしなければと思うが上手く脳に酸素が回らず頭が真っ白になっていくだけだった。
快斗の熱い昂りが自分のなかに入ってくるのを感じながらもどろどろになった思考ではどうする事も出来ず快斗の頭にしがみつくので精一杯だった。

「…ぃち…おれのことわすれないでよ…しんいちぃ」

しかし夢か現実かよく分からない意識のなかでみた快斗はとても辛そうに壊れたおもちゃのように泣きながら何度も何度も俺の名前を呼び続けていた。
その時に俺はやっと気づいたのだ。自分が快斗にとても酷いことを言ったのだと…
何故俺は気づけなかったのだろう、こんなにも、こんなにも快斗が俺を思ってくれている事に。
もし俺が快斗に忘れられたらどう思うのか、何故そんな簡単なことも分からずにあんな事を言ってしまったんだろう…

「ごめん、快斗ごめん…」

俺は快斗に早く元に戻って欲しくて、いつもみたいに笑いあったり、ふざけあったり喧嘩したりしたくて揺さぶられながらも快斗の髪を撫でて抱きしめてただ謝り続けるしか出来なかった……






「ん……ぃと?」

差し込む日が眩しくて目を覚ました俺はどうやら昨日はあのまま意識を失ってしまったようで咽がからからで体中痛かった。しかしきちんとベットに連れてきて身体も綺麗にされているようで流石俺の快斗。って思うあたり周りにバカップルと言われても仕方ないと思った。

目の前にある快斗の頭はふわふわだった髪が汗で少ししめっている。
二度と離さないとばかりにぎゅっと抱きつかれていて好き放題抱かれた身体が痛くいやでも昨日のことを思い出す、しかし涙でぐちゃぐちゃな顔をして眠る快斗の顔をみたら昨日無茶苦茶にされ一瞬ながらも快斗を怖いと思った事などどうでも良くなってしまった。
この男が愛おしい…それだけだった。
こんな風になるくらい快斗のなかで俺の存在が大きかったのかと思うと嬉しくて仕方なかった。

快斗が目を覚ましたらまず何て言おう?
いつもの様に「バ快斗!!」って叫んで怒ろうか、それともちゃんと話して素直に謝ってキスでもしてみようか?
たまにはそれも良いかと思い髪を撫でながら寝顔を見つめていた俺は突然目を覚ました快斗によってまたもや唇を塞がれ前者をとる羽目になったのだが………








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友人の誕生日に押し付けた話。
本当は監禁エンドの予定でしたが誕生日に監禁話ってどうなの?って思い直した結果がこれだよ^^^^^
しかしその友人にはやはり監禁エンドの方が好きな様ですww