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工藤新一は乙女心というものを理解していない。
例えばどういう事かって?
それは俺が久々のデートで遊園地に誘った時の事だ。まず最初に新一は男二人で遊園地でデートなんて嫌だ。と言い放ったのだ。
もうここで一度俺の乙女心はズタボロになった。
しかしこんな事で諦めては工藤新一という男と付き合うにあたって色々と事を進められなくなるのでさらっと無視し日程を決め最後に「しんいちぃ…」と涙ぐみながら懇願すればなんだかんだ言って押しに弱い新一は約束を守ってくれる。

約束の日待ち合わせ時間より早くついてしまった俺は久しぶりのデートだったので凄くドキドキして新一を待っていた。そして新一は時間ちょうどに現れたそれはもう眠そうな顔で。
明らかに昨日遅くまで新刊読んでて寝てなかったなこれは!!というのが丸わかりである。しかも服装とかも結構適当な感じだし、何だよ昨日早く寝て朝早くから昨日決めておいた筈の服を選び直したりして楽しみにしてたのは俺だけだったのかよ!!!!
と、文句を言いたかったが「行かねぇのか?」とか首を傾げて聞かれてしまえば、まぁ来てくれただけ良いと思って久々のデートを堪能することに専念する。(ちくしょー首傾げとか可愛いなオイ!!)
しかしその後も新一はジェットコースターに乗ろうと誘った俺に「悪りぃ、今日頭痛いから俺パス。」とか言って俺を一人でジェットコースターに乗せたり、ちょっとした推理ゲームのようなアトラクションも「俺が解きたいからお前は口出すなよ!?」とか言って一人で夢中になったりして正直俺本当泣いてもいいかなー?な事だらけだった。
それでも我慢していた俺だが、ちょっと休憩を取ろうとソフトクリームを買おうとして注文する際新一が「バニラ一つとチョコ一つ下さい」って言った時には流石の俺も黙ってはいられなかった。

「なんで!!ふつー俺と食べるのに二つもいらねぇだろ!!??」
「はぁ?何言ってんだよ?」
「一つを二人で食べるのが良いんだろ?それとも何か、新一は俺と一緒に食べるのが嫌だってのか?」
「ちょっ!!快斗何言って////」

店員とか他のカップルが顔を赤くしたり驚いた顔をして俺らを見ているのなんて気にしてられなかった。ここまでずっと我慢していた不満が全て爆発したように怒りをぶつける。

「新一は乙女心が全くわかってない!!」
「いや、乙女心何もお前は男だろ。」
「うっさい!!今日だって楽しみにしてたのは俺だけだったみてーだし、一人でジェットコースター乗らせたり、一人で楽しんでたり、なんだよ…久々のデートで新一といちゃいちゃ出来ると思ってたのに…ぐすん」
「うわぁぁ////!!分かった分かったから泣くなよ。店員さんミックス一つ下さい!!」

出てきたソフトクリームをひったくるように手にした新一はぐずる俺の手を引いてそそくさとその場を後にした。
木陰にあるベンチに二人で腰掛け溶けかけたソフトクリームをチロチロと舐めながら新一が謝ってくるのを少し無視しつつ「ほら食べるんだろ?」と差し出されたソフトクリームをしっかり食べ新一と同じソフトクリームを食べている事に幸せを感じつつも此処で簡単に機嫌を直してはいつもと変わりないので不貞腐れた顔を作るのは忘れない。

「なぁ、快斗悪かったってだから機嫌直せよ?」
「…………」
「分かった、じゃあ快斗の乗りてーもの一緒に乗ってやるからさ!」
「…………」
「なぁ、何が乗りたい?」
「………………観覧車」
「……は?男二人で?」
「…………」

この後に及んでまだ乙女心を理解していない新一を睨みつけるように見るとはぁ…と溜め息をつきまたもや俺の手を引っ張って観覧車に乗り込んだ。
観覧車の中に男二人が向かい合って座っているという光景は傍から見たら異様な光景かもしれない、けれど俺たちは恋人なのだから全然可笑しくはないのだと俺は思う。
先程から俯きずっと黙りな俺を伺いみている新一を顔を上げると同時ににやりと目を細め笑えば新一は突然の俺の態度の変化にビクッとし顔を真っ赤にしてわなわなと震えだす。

「なっ////!!お前何が乙女心だ!!ただ観覧車に乗せたかっただけじゃねーか!!」
「いや、そんな事はねーぜ?朝からずっとほっとかれてお怒りなのは本当です。」
「だからってあんな大勢の前であんな事言わなくても良いじゃねーか!?」
「うーんあぁでもしないと新一には分からないかと思って。」
「ざけんな!もしあの中の誰かがマスコミにでも垂れ込んで新聞沙汰になったりしたらどうするんだよ!?」
「だいじょーぶだって、証拠もなんもねーんだし。まぁ最悪そうなった時は俺がきっちり責任取りますよ。」
「何か恐ろしい事になりそうだから遠慮しておく。」
「そう?それよか新一乙女心少しは理解しようとしてくれた?」
「うっ…」
「さて、観覧車の中で二人きり…俺の求める事はなんでしょうか?名探偵の工藤新一くんならこれくらいの事は分かるよな?」

ジッと新一の目を見つめ意地悪く笑ってやる。すると真っ赤な顔してキョロキョロしていた新一が大人しく目を瞑ったので観覧車が揺れないようにそっと新一の傍に近寄りふるふると震える瞼に軽くキスしてやれば「あっ…」っという声と共にこれだけでは物足りないのだというような顔をされたので実は新一も満更でもないのかもしれないと思いながら唇に噛み付くようなキスをした。
とりあえずもう家に帰ってこの乙女心を理解していない恋人に理解しないとどうなるのかを身体に叩き込んでやろうと思う。