まさかこんな展開に



真っ白な湯煙に曇る浴室で、額からは蒸気の雫がポタポタと滴る。
いや、流れ落ちるこの水滴は、熱気による汗なのかもしれねぇ。
身体の極一部、小さなその一点で繋がった二人の肌は、茹で上がりそうなまでに熱を帯びていた。


「ふ……、あ……。ああっ、あっ!」
「何? オマエ、ココがイイのか?」
「ち、違っ……、ああっ!」


身体と身体がぶつかり合う淫らな音が、湿気にくぐもった浴室内に響く。
俺は見下ろすアレックスの白い背中に右手を滑らせた。
ブルリと震える身体は、予想外の肉付きの良さ。
一見、華奢で痩せている女に思えるが、こうして何も身に着けてねぇ姿を見ると、女らしいエロい身体の持ち主だと分かる。


「イイって言えよ、アレックス。俺にココ、ガンガン突かれて感じてンだろ?」
「ああっ! あ、あっ!」
「マトモに答えらンねぇくらいイイってか。ホント、エロいな、オマエ。」
「で、デス……、マ、スク……、さまっ! あっ!」


なンでこンな事になっちまったンだか……。
感じ易いアレックスの奥を狙って激しく突きながら、心の中ではボンヤリとそンな事を思う。
手ぇ出そうなンて夢にも考えねぇ程、色気の欠片もねぇ女なンだがな。
正直、俺の好みじゃねぇし、興味の対象にすらなンねぇ相手。
それが……。


――ドンドンドンッ!


「あ? なンだぁ?」
「で、デスマスク様っ! た、助けてください!」
「アレックス? うわっ、汚ねぇ! 何してンだ、オマエ?」
「恥ずかしながら、そ、そこで滑ってしまいまして……。」


ゆったりノンビリした休日。
それを破ってけたたましく叩かれる部屋のドア。
渋々、出てみれば、真っ白な筈の女官服をベチャベチャの泥塗れにしたアレックスが、半泣きの状態で俺を見上げていた。
聞けば、巨蟹宮の前の巨大な水溜まりで足を滑らせ、雪解け水の縁に溜まった泥の中にダイブしてしまったらしい。
この冬は聖域にも随分と多く雪が降り積もった。
その雪が、寒気が緩むと一気に溶け出し、今や十二宮全体が水浸しの泥だらけ。
普通に歩くだけで、誰の足下にも泥跳ねの跡が残るという悲惨な状態ってワケだ。


「しゃあねぇ。シャワーぐらいなら貸してやる。着替えは……、Tシャツなら着れンだろ。」
「ありがとうございます。あ、あの……。」
「あ?」
「の、覗かないでくださいね。」
「誰が覗くかっての。無駄口叩いてねぇで、とっとと入れ。」


とは言ったものの、人間ってのは暗示に掛かり易い生き物だ。
覗くなって言われりゃ、覗きたくなるのが男だろ。
て事で、覗き見のワリには堂々と、しかも、勢い良く力いっぱい浴室のドアを開けたところ、呆然とした顔を俺に向けてシャワーに打たれるアレックスの無防備なエロい身体に、クラッとキちまった。


後はただ欲望の赴くままに突き進むだけ。
ニヤリと笑った俺が無言で服を脱ぎ捨てたのを見て、呆然から驚愕の表情に変わったアレックス。
有無を言わせず浴室に押し入り、力尽くでアレックスを抱いた。
ま、抵抗らしい抵抗も大してなかったンだが。


「あっ! も、駄目ぇ……、っ!」
「クッ。オマエ、締め過ぎ。」
「だ、だって……。凄く良い……、からっ……。ああっ!」
「中に出すぜ。イイだろ、アレックス?」


返事はなかった。
それを肯定と捉えて、全力でラストスパートを掛けた。
反響する淫らな音と嬌声が、耳の中から俺とアレックスを犯し、興奮を最高潮に高める。
もう、これ以上は先延ばし出来ねぇ。


「あっ! あっ、ああー!」
「クッ、アレックス!」


アレックスの奥の奥、最も感じる場所を目一杯力強く突き、俺はビクンビクンと跳ね上がる身体の中で全てを解放した。
こンなに激しく、こンなに気持ち良いセックスは、いつ振りだろう。
思い掛けない相手との、思い掛けない相性の良さを知り、俺は驚きを隠せないままに、グッタリするアレックスの身体を引き上げた。
そして何故か、絶頂に潤んだ瞳をしたアレックスを見た瞬間、荒い息を吐く唇に全力で口付けていた。



ハプニングから始まる恋ってヤツか?



‐end‐





Hから始まる恋と置き換えても可です(ティーンズラブかよ)
予期せぬトコから恋に落ちる蟹さまを目指してみました、と言いつつ、タダのエロです(苦笑)
ギリギリ三月中に書き上げられて良かったわぁ。

2018.03.31



- 6/6 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -