不思議な事があるものだわ。


前の手紙が届いてから、まだ一週間しか経っていない。
なのに、カミュからの新たな手紙が届くなんて。
しかも、いつものと比べても、とても薄く、厚みがない。
私は午後の便で届いた手紙を手に、呆然としていた。
どうしてか、それを開ける事が怖くて、手に持ったままで立ち尽くす。


何か急な知らせでも?
いや、急な用なら、手紙にこだわる必要はない。
だったら、何なのだろう?
少しだけ震える手で、カミュからの手紙を開く。
そして、開いた私の目に飛び込んだのは、いつもと同じ彼の文字だった。
流れるように美しく、それでいて一文字一文字が大切に書かれた、力強い文字。



目を閉じれば君が浮かぶ。
だから今日は、眠れない。




これは、どういう意味?
私は封筒の中に入っていた、たった一枚の手紙を凝視した。


裏を捲る。
他には何の文字もない。
封筒の中を覗き込む。
他に何も入ってはいない。


たった二行の手紙、他には何の言葉もない。
それが何を意味するのか?
前触れもなく、突然、送られてきた手紙の内容が、私には全く読み取れなかった。
カミュは何が言いたかったのだろう?
何を伝えたかったのだろう?



***



小さな村の外れにある雑貨店で、私は働いていた。
雑貨店と言うと聞こえは良いが、要は日常品を扱う商店だ。
石鹸や洗剤などの日常消耗品から、文具や、ちょっとした食料品もある。
ここは村人の生活に欠かせないお店。
だから、カミュや氷河クンとも知り合う事が出来た。


「アイリスお姉ちゃん。カミュから、手紙が来たんだね。」
「どうして分かったの、ヤコフ?」
「だって、その封筒の宛名。カミュの文字だよね。」


流麗なカミュの文字は、離れたところから見ても一目瞭然だった。
薄青い色のシンプルな封筒も、カミュが好んで使っているもの。
私の手にしていた手紙をチラリと一瞥しただけで、ヤコフには誰が書いたものだか分かったようだ。


「何て書いてあった? そろそろ戻ってくるって?」
「秘密。内容は秘密よ。」
「秘密なの? あ、そうか。いつもと違う手紙なんだね。前の手紙から二週間経ってないし。恋人同士のラブラブなラブレター?」


期待でキラキラ目を輝かせながら見上げてくるヤコフに、私はクスリと小さく微笑んだ。
そうか、ラブレターなのかもしれない。
たった二行の短い恋文。
そんな洒落た事をしてくれる人だとは思わなかったけれど、だからこそ、とても嬉しい気分になった。


でも、この手紙に対して、何て返事を書いて良いのやら……。
見当違いの返事を送っても、カミュの機嫌を損ねてしまうだけだろうし。
そもそも返事を書いた方が良いのかすら分からない。
カミュは、何を思って、この手紙を書いたんだろう。





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