今夜のご馳走暑い……。
こうも暑いと、流石の俺でもやる気が失せる。
何もかもが、どうでも良いような気がして、グッタリとテーブルに突っ伏していると、暑さにげんなりした顔をしたアミリアが入ってきた。
「何か冷たくて甘いものが食べたい。アイスとか、かき氷とか。」
「甘いものか……。俺は辛いものの方が良いなあ。」
うん、そうそう。
今は辛いものが良い。
こうピリッとスパイシーで、それでいて食欲が湧く、バクバクと食べられるような何か……。
「そうか、カレーライスだ。今夜はカレーが食いたい。」
「カレー?」
俺の言葉を繰り返して、暫く小首を傾げていたアミリア。
だが、ガタンと大きな音を立てて、いきなり立ち上がると、その辺に置いてあったメモと鉛筆を引っ掴んで、部屋を出ていこうとする。
「何処へ行くんだ、アミリア?」
「何処って、処女宮。」
当たり前だと言わんばかりの顔をして振り返ったアミリアが、呆れた様子で俺を見つめる。
何故、そこで呆れられなきゃならないのか。
全く持って、俺には分からないのだが。
「シャカ様にカレーの作り方を教わろうかと思って。カレーと言えばインド。インドと言えばシャカ様。」
「いや、俺が食いたいのは、そういう本格的なカレーじゃなくてだな……。」
そう、今、俺の脳内でイメージされているのは、『カレーライス』だ。
日本の食卓に上がるような、庶民的なあれ。
「どうして、アイオロスが日本の食卓事情を知っているのよ。」
「それは以前に、アテナの護衛で日本に滞在中に――。」
「言い寄ってきた城戸家のメイドさんか誰かに、お家に誘われて、そこで振る舞われた、と。そういう事かな?」
図星だ。
女の子というのは、どうしてこういう事には鋭いのだろう?
驚くべき頭の回転スピードを見せ付けてくる。
「で、食後に彼女も美味しく頂いちゃったんでしょ?」
「まさか。食べたのはカレーだけだ。それに俺は、アミリア以外には食指が動かないんだよ。」
「ソレハソレハ、ドウモアリガトウゴザイマス。」
俺としては冗談でもお世辞でもなく、本気で言った言葉なのに。
アミリアは全く信じていないらしく、返ってきたのはワザとらしい棒読みの台詞。
それには、流石の俺も少々カチンときた。
「信じてないのか、アミリア?」
「信じられる訳ないでしょう。アイオロスは、いつだってモテモテなんだから。」
それは言われて嬉しい言葉でありながら、場合によっては嬉しくない時だってある。
今がそうだ。
ガタンと、大きな音を立てて席を立つと、俺は彼女の手首を強く掴んだ。
その音と俺の素早い行動に驚き、大きく目を見開くアミリア。
「何、アイオロス?」
「カレーは取り止めだ。今夜の食事は、もっともっと刺激的なものが良い。」
そう言って、熱を籠めた瞳でジッと彼女を見下ろす。
息を呑んだ彼女が、俺から感じ取った情熱によって微かに身体を震わせている事。
握り締めた腕から、確かに伝わっていた。
カレーよりもホットで刺激的
今夜の食卓を彩るキミというスパイス
‐end‐
ロス兄さんは、常に(エ)ロスですから。
いつ何時、EROスイッチが入るか分からないので、厳重な注意が必要ですw
人馬兄さんの彼女になる人は、大変ですよね(苦笑)
2011.09.11
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