鬼パティシエのスイーツ教室



今年こそ!
今年こそは絶対に、他の女官達よりも目立つチョコレートを送るんだから!


「……と言う訳で、デスマスク様。私に美味しいチョコレートの作り方を教えて下さい。寧ろ、特訓して下さい!」
「オイ、アミリア……。なンで、ココで俺様が出て来ンだよ。」


気合の一声と共に、奮起して巨蟹宮に乗り込んだ私は、休日で寛ぐデスマスク様に圧し掛からんばかりの勢いで詰め寄っていた。
一人の時間を邪魔されたからか、場を弁(ワキマ)えない煩い女が乗り込んで来たからか、当たり前に不機嫌な顔をして、鋭い瞳を更に尖らせるデスマスク様。
いけない、いけない。
ココで彼を怒らせてしまっては、元も子もないというもの。


「だって、私にはもう、手作りの道しか残されていないんです。でも、自分一人で作る練習をしたところで、上達の上限は限られています。どう試行錯誤したところで、お粗末な手作りの域を出ないんです。」
「ったく……。やっぱ、アレか? シュラか?」
「私が目指しているのは、有名ショコラティエも吃驚なチョコレートを作る事。それが出来るのは、デスマスク様しかいません。人助けだと思って、お願いします!」


毎年、毎年、大苦戦なのだ。
シュラ様は、兎に角、モテる。
毎回、両手に抱えきれない程のチョコレートを貰って、前が見えずにヨロヨロしながら自分の宮へと帰っていかれる。
多分、黄金聖闘士様方の中でも、一・二位を争う量だろう。
そのくせ、無意識と言うか、無自覚というか。
あんなに大量のチョコレートを貰っていながら、自分がモテるなどとは夢にも思っていない。
あのチョコレートだって、挨拶の一環くらいにしか思っていないのだから、タチが悪いと言うか。


そんな人の目を惹くには、どうしたら良いのか?
一昨年は、世界でも有名なチョコレート店の商品の中で一番値段の高いものを奮発して取り寄せた。
でも、それを上回る子が何人もいたらしく、私のチョコは全然、目立たなかった。
それ以前に、チョコレートには疎いらしいシュラ様には、高級なものも、市場の店先で買ったものも、同等に見えていたとか、いないとか。
それをふまえて、去年は手の平に乗るくらい小さな箱の、でも中身は美味しいと評判のチョコを渡した。
値段や大きさで勝負出来ないのなら、いっそ小さなもので目を惹こうとの魂胆。
でも、結果はというと、大量のチョコ達に押し潰され、彼の目を惹くどころか、目に付く事すらなかった。


こうなれば、最後は女の子の常套手段。
手作りチョコを渡すしかない。
でも、ただの手作りじゃ駄目。
それは聖域中の誰もが一目置くような素晴らしいチョコレートでなきゃ!





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