夜景を眺めながら、二人で並んで座るソファー。
雰囲気を醸し出す仄暗い照明と、部屋を彩るクリスマスの飾り。
チラリと視線を送ると、アンディの横顔が微笑んでいるのが見えた。
多分、同じ事を思っているのだ。
そう思うと、嬉しくて、何故か甘ったるい。


あぁ、これが恋人と過ごす『クリスマスの魔法』とか言うヤツか?
だったら、この魔法はずっと解けなくても良いな、そう思いながらアンディの肩を抱く。


あ、そうか。
そう思ってしまう事が、魔法に掛かっている証なんだな。
彼女の頬に唇を寄せながら、再び苦笑いが込み上げる。
今日は何度、この笑みを浮かべただろうか、もう分からなくなってきた。


「あ、アイオロス! また、その顔!」


油断していたらアンディに頬をつねられて、更に深まる苦笑。
怒ったのか冗談半分なのか、つねった頬をグイーっと引っ張った後、手を離した彼女は、目の前のテーブルにその手を伸ばした。


「それは? 酒、か?」
「うん、柚子のお酒。城戸邸のメイドさんが教えてくれたの。とても美味しいからって。で、飲んでみたら本当に美味しくて、アイオロスも気に入れば良いなと思って……。」
「あぁ、良い香りだ。独特な柑橘系だな。うん、俺も好きだよ。」
「良かった……。」


味は女の子向けだな、ジュースみたいで飲み過ぎてしまいそうだ。
そう呟いたら、アンディはクスクスと笑った。
アイオロスが酔っ払うなんて有り得ないと、そう言って。


「きっと、この香りを嗅ぐ度に思い出すんだろうな、今日の事。」
「??」
「香りの思い出って強く残るだろう? 柚子の香り=今日の思い出。今、俺の中に、そうインプットされてしまった気がするんだ。だから……。」
「ずっと忘れない?」
「あぁ、忘れたくても忘れられない。」
「忘れたいの?」
「いや、ずっと大切な思い出だ。」


グラスに残った柚子酒を一気に飲み干し、他の誰にも見せない熱い眼差しを彼女へと送った。
お酒のせいか、照れのせいか、薄く頬を染めたアンディは恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに俺の首に腕を回す。
朝からずっとお預けだった熱い口付けを交わした後、おもむろに彼女を抱き上げれば、俺の足が向かう先はただ一つ。
真っ白なベッドに縺れて沈み、後はただアンディと二人、深い夜の海へと泳ぎ出す。
そんな聖なる夜のひと時。



This smell reminds me of only you



小さくて真っ白で滑らかで、そんなアンディの身体を俺の大きな身体で包み込んで。
魔法を掛けられた心と身体は、何度も何度でもアンディを求めて止まない。
ギシギシと深いリズムを刻むベッドの軋み音が、熱に浮かされた耳に心地良かった。



‐end‐





あああ!
二十四日のうちに上げたかったのに、日付越えてしまったぁぁぁ!!
これもそれも暴走しそうになるロス兄さんがいけないんだ!(人のせいにするな)
結局、山羊さんではなくロス兄さんになってしまいましたが、益々高まっていく(エ)ロス熱。
もういっそロスが最愛です! って言った方が良いんじゃないかと思えてきたとか、ココだけの話です^^

2009.12.25



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