ズルい。
そう思う心も、揺れるベッドの上で薄れ溶けていく。


アイオロスはズルい。
私を翻弄して、いつも自分のペースに持ち込んで。
アイオロスは、いつもズルい。


でも、この何物にも代え難い歓喜の渦に飲まれると、好きだという想いばかりで埋め尽くされて、そんな事は忘れてしまう。
どうでも良くなってしまうの。
アイオロスが私の事を愛してくれればそれで良いって、そう感じてしまう。


心も身体も彼でいっぱいに満たされ、愛されていると分かれば満足で。
ゆっくりとだったり、激しかったり、何度もだったり、濃くて深い一度だったり、その時によって愛し方は変わるけれども。
アイオロスの与えてくれる刺激に、歓喜に、切なさに。
私は奔放に声を上げて、自分が凄く感じていることを伝えるばかりだった。
そうすれば、彼はもっと良くしてくれるって、知ってるから。


「もっと声を上げて良いよ、アナベル。ココは俺の宮だ。誰にも聞こえない。」
「は、あ……。あ、ああぁ……。」


誰かに聞こえたら駄目なの?
私達、恋人同士でしょ?
なんて、一瞬だけ思ったけど、スパートを掛けるアイオロスに心の中も身体の奥も乱されて、私は直ぐに何も考えられなくなった。


こうして日毎に好きになっていく。
アイオロスしか見えなくて、彼の事だけ想って。
好きだと言われれば、同じだけ好きだと揺らめく全身で返そうとしたりして。
意識の遥か先、身体の中心に湧き上がってくる震えにも似た快感に、抱いていた疑問すら忘れてしまうの。
この喜びが通り過ぎてしまえば、また同じように同じ疑問を彼にぶつけるクセにね。


「アイオ、ロス……。好きっ。あっ……。」
「もっと言って、アナベル。俺を好きだと。」
「好き……、あ、好きっ!」


終わりない戯れのような愛の海に溺れて。
辿り着く先は唯一無二の幸せな場所だと信じたい。
私を不安になんてさせないで。
いつも好きだと言って抱き締めて。


「アナベル……。」
「アイオロス……。あ、あっ!」


そして――。


気付けば深い眠りに落ちていた。
彼の腕の中で、力強い心音に抱かれて。
眠りの世界からゆっくりと意識は浮上したけれど、目は開けられそうになかった。
身体も意識も疲れ果て、また眠りの森へと誘われそうで。


ふと、私を抱き締めるアイオロスの腕の力が弱まる。
そして、額に唇の感触。
そのまま瞼へ、鼻へ、頬へ、こめかみへ。
最後に辿り着いた耳元に、小さくチュッとキスを施した後、微かな声が呟く。
まさか私が聞いているなんて、これっぽっちも知らずに。



俺なしでは生きられなくなればいい



彼の腕の中で聞いた言葉に、胸がドキンと大きく音を立てて鳴った。
アイオロスに気付かれたかもと思ったけど、彼は最後に唇にキスを落として、自分も枕へと沈んだ。


今更だ。
とっくの昔に彼なしでは生きられなくなっている。
もうこれ以上、私の心を攫う必要なんてないのに。
こんなにも彼を愛しているのだから。



‐end‐



お題配布サイト:
「確かに恋だった」





再び登場、策士・ロス兄さん。
彼はこういうズルい大人だと良いとか、勝手に妄想してます(笑)
二人の時は仲良くしてくれる男の人に、人前だと冷たい態度とかとられると妙に気になったりしませんか(私だけ?)
そんな心理を上手く利用するロス兄さん。
こういうロス兄さんに一人で勝手に萌えたりなんかしてます^^

2008.09.06



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