休日デートは曇り模様



今日は久しぶりの休日。
天気予報を信じれば、外は爽やかに晴れ渡った朝。
……になる筈だったのに。


カーテンを開けてみれば、空には見渡す限りの陰鬱な雲が広がっている。
雨は降ってないようだけれど、いつ降り始めてもおかしくない雰囲気。
それに、まだ朝だというのに、何でこんなにどんより暗いのだろう。
薄ぼんやりとした世界の中で、秋色に色付いた木々だけが、やけに色鮮やかだった。
風に小さくカサカサ揺れる赤・黄・金色の葉っぱ達が、モノトーンの世界に揺れる様ばかりが、沈みきった心と瞳に眩しい。


「あ〜あ、ガッカリ……。」
「おい、コラ。人の宮でデケェ溜息吐いてンなよ、アリア。幸せ逃げンじゃねぇか。逃げたらどうしてくれるンだ、あ?」


残念な気持ちのままに大きな溜息を吐いたら、背後からデスさんに頭を叩かれた。
静かな宮に響くパシーンという小気味良い音。
だけど、音の大きさとは裏腹に、痛みは殆どない。
それはデスさんなりの優しさなのかもしれない。
でも、何も頭を叩かなくたって良いのにと、不満だけが胸の中で大きく膨らむ。
大体、この不気味な宮に幸せがやって来るのか、それすら怪しいと思うんですけど、私は。


「やっとの思いで、もぎ取った休日なんですよ。昨夜の天気予報だって、お天気だって言っていたのに。」


折角のデート、目一杯お洒落もしている。
千鳥格子模様のふんわりとしたワンピース、マスタード色の鮮やかなストール。
そして、今、一番お気入りの可愛いバレエシューズ。
折角のメイクもファッションも、いつ降り出すか分からない雨に怯えながらじゃ、何もかもがつまらないもの。


「デスさんは、気にならないんですか?」
「気にしたところで、しゃあねぇだろが。」
「そういうトコロは男の人って良いですよねぇ。」
「女が気にし過ぎなンだよ。ま、そンなトコロが女らしいっつーか、可愛らしいンだがな。」


それって、私が女らしいと、可愛いと思ってくれているって事?
でも、こういうリップサービスはお得意なイタリア人。
上手い事を言っておいて、私の機嫌を取ってるだけなのかも。


「濡れたら濡れたでイイんじゃね? そン時には、俺が新しい服、買ってやるし。上から下まで一式全部。」
「上から……、下まで?」
「おう。勿論、下着は俺好みのヤツな。脱がす時の楽しみってモンがなきゃ、高い金出して買ってやる意味ねぇし。なぁ、アリア?」
「ま、またそんな事ばっかり!」


結局、辿り着く結論は、いつもそこなんだから。
この人は、いつもそう。
私と過ごす時間の中で、そういう事を致している時が一番、生き生きしてる。
でも、最終的な目的はソコだとしても、そうだと知っていても。
そこに辿り着くまでの時間、会話も、買物も、食事も。
彼が与えてくれる何もかもが楽しくて、嬉しくて、甘ったるいから。
ついつい流されて、どんな事をされたって許してしまうのかもしれない。



彼の演出に、赤く色付く心の中は



「百歩譲ったとしても、Tバックだけは絶対に履きませんからね!」
「ンだよ、オマエ。アレは男の浪漫なんだぜ? ったく、しゃあねぇ。黒の透け透けレースベビードールで我慢してやるか。アリアの胸は見掛けによらず豊満だからな。間違いなく似合う。」
「そ、それも嫌ですっ!」


こんな彼だけど、雨が降り出せば、ちゃんと私が濡れないように庇ってくれるって、知っているんだ。



‐end‐





デスさんが、ただのERO親父化してます^^;
原稿明けなので、欲望に忠実に、甘くかつ色っぽいドリ夢でも書こうと思っていたのに、出来上がってみれば、甘さも色気もないという(死)
デスさんって書き易いキャラではありますが、EROは書き難い。
私の中のデスさんは『見た目ヤンキーな中身フェミニスト』な人だからなのかもしれませんが。

2012.10.28



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