この調子なら、暫く好き勝手にさせておいても問題なさそう。
私もそろそろ疲れてきました。
お茶でも飲んで一服したいです。


「お茶を淹れるのかい、アンヌ? 私も手伝おう。」
「でも……、シュラ様達に誰も付いていないのは心配です。」
「大丈夫だろう。あれでも教皇補佐だしね。」


視線の先には、ソファーに座り込んで真剣に映像を眺めているアイオロス様の姿。
これだけ夢中になっていれば、あのアイオロス様でも何か仕出かす可能性は低い。
ミャッミャと声を上げてエクササイズを見ている猫ちゃんと、顎に手を当てて食い入るように眺めているアイオロス様と。
猫と人なのにソックリです。
いや、正確に言えば、どちらも中身は黄金聖闘士様なのですけどね。
この光景だけを見ていると、とてもそんな凄い人達とは思えませんが。


「さぁて、お茶お茶〜。熱くて濃いお茶が飲みたい。ミルクをタップリ入れてさ。」
「糖分も少し補給したいです、私は。」


疲れているからでしょうか、無性に甘いものが食べたいと思うのは。
結局、エクササイズに夢中なアイオロス様と猫ちゃん達をリビングに置き去りにし、アフロディーテ様と共にキッチンで紅茶を用意する。
ケトルの中でシンシンと沸くお湯。
鼻歌混じりに火を止めて、ティーポットにドボドボとお湯を注ぐアフロディーテ様。
私は一昨日、大量に作っておいたマフィンを、レンジで温めてお皿に三人分。
猫ちゃん達には猫のオヤツ用の鶏ササミを用意して、と。
はいはい、お茶の時間ですよ、美味しいオヤツですよ〜。


「そうだ、アイオリア! パンチ・パンチ・ストレート!」
「ミッ、ミッ、ミー!」
「おおっ、上手いぞ! 流石はアイオリア!」
「ミャッ、ミャッ、ミャー!」
「おっ! シュラのパンチは鋭いな!」


お茶を乗せたトレーを持ってリビングに戻ると、アイオロス様と猫ちゃんが無邪気にじゃれ合っていた。
というか、トレーニングですか、それ?
真ん中に陣取ったアイオロス様が、両サイドから繰り出される猫パンチを、パシパシと両手で受けている。


「何だい、アレは?」
「さぁ……。猫ちゃんのマッチョになりたい願望を叶えて上げようと、スパーリングの相手になっているとか……。」
「そんな訳ないだろう。」


呆れた溜息を吐きつつ、アフロディーテ様はマフィンの乗ったトレーをテーブルに置いた。
お皿をテーブルに並べながら、彼等の様子をチラチラと眺める。


「はい、アイオリア! パンチ・パンチ・アッパー!」
「ミッ、ミッ、ミー!」
「はい、シュラ! パンチ・パンチ・フック!」
「ミャッ・ミャッ・ミャー!」
「アイオロス……、忘れてないよね? その猫、シュラだから。猫でも両手に聖剣持ってるから。」


パシンッ、パシンッ、ズシャッ!


「ギャッ! あ、危ないなぁ、もう! 手の平が少し切れちゃったじゃないか。避けるのが遅かったら、手首が落ちていたかもしれないだろ? 気を付けろよ、シュラ。」
「ミミャッ!」
「いや、キミが気を付けなきゃ駄目だろ、アイオロス……。」


見事に忘れていたんですね、シュラ様が猫聖剣を放てるという事を。
切り傷にフーフー息を吹き掛けるアイオロス様の前で、右前足を真上に突き上げて見せた黒猫ちゃん。
折角、油断したところを狙ったのに、ヤツを仕留められなかったか。
そう言いたげに、悔しそうに「シャー!」という唸り声を上げた。





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