9.夜も更けて



夕食後。
私達は、まったりモードに突入して、ノンビリと時間を過ごしていた。
シュラ様とアイオリア様は、私がコロコロと転がす毛糸のボールを奪い合いながらじゃれ付き、カプリコちゃんはデスマスク様の隣をちゃっかりとキープして、スリスリと脇腹に頭を擦り付けて甘えている。
可愛い猫ちゃん達を眺めているのも楽しくはあるが、流石に、ちょっと飽きてきたというか……。


「ミャッ。」
「はいはい。何ですか、シュラ様?」


飽きただなんて思っていたのを見透かされたのか、シュラ様が膝の上へと乗ってくる。
すると、アイオリア様も構って欲しいと言わんばかりに腕に擦り寄ってきた。
う〜ん……、構って上げたいのは山々ですが、何も面白い遊びが思い浮かばないんですよねぇ……。


「ミャミッ。」
「取り敢えずは抱っこをしろと?」
「ミミッ。」
「アイオリア様も?」


仕方ないので二匹まとめて抱っこする。
が、両腕が塞がってしまったので、これでは余計に何も出来ない。
構って上げるどころか、私が二人の顔に頬を擦り寄せる程度が関の山だ。


と、その時。
バタンと扉の開く大きな音が響いた。


「ミミャッ!」
「ミミイッ!」
「やはり、まだ猫のままか。以前より早く戻るかと思っていたのだが……。」
「よぉ。頭は治ったのか?」
「フシュー、ヴグググ……。」
「フシュー、グギギギ……」


現れたのはアフロディーテ様だった。
ガサガサと癖のある髪ごと後頭部を撫でつつ、私達の方へと近付いてくる。
腕の中の猫ちゃんは、彼の姿を見た途端に毛を逆立て、歯を剥き出しにして低い唸り声を上げ始めた。
変わらずの威嚇モードだが、飛び掛かったりしなくなっただけ、まだマシよね。


「その言い方は止めてくれ、デスマスク。まるで私の頭が悪いみたいじゃないか。取り敢えず、痛みは治まった。瘤は残っているが、まぁ、平気だろう。」
「災難でしたね、アフロディーテ様。」
「本当だよ、アンヌ。あの破天荒男が教皇補佐だっていうんだから、聖域のこの先が思い遣られる。」
「ミギャッ!」


猫ちゃん達を抱っこしたままアフロディーテ様の前へと近寄ったので、彼が黒猫シュラ様へ向かって手を伸ばす。
当然、激しく嫌がる素振りを見せて避けようとしたが、私の腕の中では思うように身動きが取れずに、不本意ながらも、されるがまま頭を撫でられているシュラ様。
物凄く不機嫌で、顰め面で、不貞腐れ顔なのですけど、猫ちゃんって、こうまで表情を崩せるものでしたっけ……?


それを見ていたアイオリア様は、同族(同猫?)意識からか、それまでの小競り合いから一転、シュラ様を助けようと、パシパシと猫パンチを繰り出してみるものの、アフロディーテ様には全く相手にされずに、あっさりと腕を払われてしまった。
すっかり無力になってしまった事が、余程、無念だったのか。
猫ちゃんが、こんなにも悲しい顔が出来るのかという表情で、眉(らしき部分)を下げるアイオリア様。


「そんなに悲しまなくても……。」
「ミミィ……。」
「あ、そうか。私が抱っこしているから得意の雷電攻撃も出来ないんですね。あ、シュラ様は駄目ですよ、聖剣を振り回しちゃ。私が怪我をしてしまいます。」
「ミミャミャッ!」


同じ無念でも、こちらはプリプリと怒りを滲ませた無念さ。
グリグリと頭を撫でられている事が腹立たしいのか、腕の中のシュラ様からは「グギギギ!」と、激しい歯軋りの音が響いていた。





- 1/9 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -