「そろそろ、教えてくれても良いんじゃない?」
「あ? 何がだ?」
「何かあったんでしょ。戻ってきてから、ずっとおかしいもの。」
「俺がオカシイのは、今に始まったコトじゃねぇだろ。」
「また、そうやってはぐらかす。言う気がないなら、言いたくなるまで髪の毛を引っ張って毟っちゃうけど、良い?」
「ちょ、ヤメロ! ふざけんな!」


慌てて髪の毛を押さえながら向きを変えたデスは、私の膝に頭を預けたまま仰向けに私を見上げた。
目と目が合う。
いつも自信満々の紅い瞳が、一瞬だけ波打つ水面(ミナモ)のように揺らめいて、その僅かな瞬間に、彼の戸惑いをハッキリと感じ取ってしまう私。
何かがデスを混乱させている、そして、戸惑いの中で迷っている。


私はスッと身を屈めて、デスの唇に掠めるようなキスをした。
ホンの一瞬だけ触れ合って、直ぐに離れてしまった唇は、キスの名残だけを深く私達の間に残す。


「ミカ?」
「ねぇ、言って欲しい? 私に『愛してる』って、言って欲しい?」
「……。」
「言ったら、教えてくれる? デスが、何を迷っているのか。」


小さな逡巡。
そして一旦、瞳を閉じるデス。
閉じた瞼の向こう側で、今も紅い瞳が揺れている事が手に取るように分かる。
私はそっと銀の髪を撫でる事で、彼の心を落ち着かせて上げたいと思った。


「言ってくれ。頼む、オマエの口から聞きたい。『アイシテル』と、ミカの口から……。」
「愛してるよ、デス。ずっとずっと、デスの事だけを愛してきたし、これからも愛してる。例え、デスがまた私の傍からいなくなっても、それは変わらないから。」


言えば照れ臭いものだと思ってたのに、意外とすんなりと言葉が出てきて、自分でも驚いた。
瞳など見つめては言えない、ぶっきらぼうに呟くのが精一杯だろうとの予想は大ハズレ。
私は驚く程に優しく、微笑すら浮かべて、膝の上のデスに愛を囁いていた。
恥ずかしさなど、何処かに置き忘れたかのように。


「ミカ……。」
「ん?」
「ありがとうよ。」
「うん。」
「次は、そう簡単には死なねぇから。オマエを残しては死なねぇ。」
「うん。」
「俺もオマエを愛してる。ずっと愛してるからな。」
「うん。ありがと、デス。」


こうして言葉にして伝え合う事が、こんなにも嬉しいだなんて思わなかった。
まるで初めてデスとキスをした時のような高揚感が、この胸に一気に押し寄せる。
湧き上がる熱い想いを堪え切れずに、再びデスの唇に口付ければ、今度は深く深く互いの唇を貪り合った。
唇から溶けてしまうのではないかと思える程に、性急で激しい、それでいて甘さたっぷりのキスの嵐。


「駄目、デス……。ココじゃ、盟が来ちゃうかも……。」
「ちっ、しゃあねぇ。」


いつの間にか体勢を入れ替え、私をソファーの上に組み敷いていたデスが服に手を掛けたところで、残っていた最後の理性が待ったを掛けた。
いくら家族同然だとしても、盟にこんなところを見られるワケにはいかないもの。


デスが力強く私を抱え上げる。
そして、向かう先は、たったひとつ――。





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