思えば、俺とアイリーンは付き合うと決めたと同時に、同棲をも始めた。
そして、大して間も空けずに結婚をして。
更には、直ぐにアイリーンが妊娠して、アイラが生まれた。


アイリーンは妻として家庭を支えるだけでなく、この宮を管理する女官としてもしっかり仕事をし、そして、アイラの育児も手を抜かずにこなす。
勿論、コイツの兄であるアイオロスやアイオリアも手を貸してくれる、他のヤツ等も何かと気に掛けてくれる。
しかし、アイリーンは女官上がりのためか、例え兄とはいえ黄金聖闘士の手を借りるなんて恐れ多いと思っているらしい。
余程の事がない限り、ヤツ等の手を借りようとはしなかったし、いつも自分で何かと努力をして、今日までやってきていた。


そんなアイリーンに、ついつい寄り掛かって、何もかも全てを任せっきりにしていた俺。
ずっと頑張ってきたンだ、何かお礼でもしてやろうか……。
そう考えたのが、半年程前の事。


だが、アイリーンのヤツは何か物を贈られたところで、あまり喜ばねぇのを俺は知ってる。
どンな高価なプレゼントより、俺が傍にいて、自分とアイラを守っていてくれるのが嬉しいンだと、そうキッパリ言いやがった。


……まぁ、そう言われて、俺もかなり嬉しかったンだが。


でだ。
そんなアイリーンのために、何かしてやろうかと思ったが、なかなか良いアイディアが浮ばねぇ。
散々頭を悩ました挙句、他のヤツ等に相談したところ、意外にもアイオリアの一言が、良いアドバイスとなって俺の心を捉えた。


「お前達、確か結婚式をしてなかったよな? プレゼントはそれが良いのではないか?」


確かに、結婚して直ぐに子供が出来ちまったし。
アイラが赤ん坊のうちは、昼夜関係なく面倒を見るのに追われて、それどころじゃなかった。
やっと落ち着いてきたかと思えば、俺の外地任務が続き、なかなか聖域に長くいる時間が取れなかったってのもある。
なンやかやで気付けば、結婚して早四年。
正式に婚姻はしてはいるものの、華やかに式を挙げることなンて出来なかった。


結婚式とウェディングドレスは、女の夢ってモンだろ?
アイリーンだって、これなら絶対に喜ぶに決まってる。
今更って言われれば、確かに今更なンだが、しかし、これ以上、良いプレゼントなンて思い付きそうにねぇ。
て事で、今回、結婚四年目にして、やっと結婚式を上げる事が出来た。
アイリーンも嬉しかっただろうが、俺だって嬉しいと思えた。
アテナの前で、皆の前で、コイツと愛を誓える事が。
まぁ、式の前までは、柄にもなく緊張し捲くってたンだがな……。


「どうだったよ、今日は?」
「とても幸せでした。私、デス様に何度、幸せを貰ったか分かりませんね。こうして傍にいられて、本当に幸せです、私。」
「そうか、なら……。」
「っ?!」


腕の中のアイリーンを、そのままソファーの上に押し倒す。
勿論、夫婦なンだから、こういうのも当たり前な筈なんだが、アイラがいる手前、最近はご無沙汰だったンだよな。
久し振りに押し倒され、得意の熱っぽい口説きオーラに晒されて、もう慣れた筈のアイリーンも顔を真っ赤に染める。


「そろそろ、アイラのヤツにも弟か妹が必要だと思わねぇか?」
「え? あ、あの……。」
「アイラも三歳になった事だし、イイ頃だろ?」
「デス、さま……。」


恥ずかしげに目を泳がせて、俺の胸に手を当て、気持ち小さく押し返すアイリーン。
だが、僅かにコクンと頷いた、その首の動きを見逃す俺じゃねぇ。
ニヤリ、口の端に笑みを浮かべた後に、軽く唇にキスを落とすと、俺はアイリーンを抱え上げ、そして、部屋の灯りを落とした。
勿論、向かう先は俺達夫婦の寝室。
大きくて柔らかなダブルベッドの上だ。


四年目に迎えた結婚式の夜。
俺達はまるで新婚夫婦のように甘く深く、そして、長く濃厚な夜を、二人きりで過ごした。



‐end‐



→後書き


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