「大体、いつになったら告白するおつもりなのですか? うかうかしていると、他の誰かに掻っ攫われてしまいますよ。」
「そうか? だが、ちゃんと牽制はしている。他の奴等が手を出す隙などはない。」


とてもそうは見えないんですが、私の見えない・知らないところで、色々と手回しをしているのでしょうか。
それにしては、シュラ様の生活振りからして、あまりに何もなさ過ぎるんですけど。


「まだ、あともう少しだ。もう少し、彼女の心が俺に傾くまで、告白をするつもりはない。」
「焦っては駄目って事ですか?」
「そうだな、そうとも言える。何せ彼女は折り紙付きの鈍さを誇る。ちょっとやそっとで靡いたりはしない。ココはじっくりじっくりコツコツと、な。」


シュラ様の、あの破壊的な流し目光線から逃れられる女性がいるとは思えないけれど、彼のフェロモン垂れ流しなアプローチにも気付かないなんて、その『彼女』、よっぽどの鈍感なんだろうな。
私も、そこそこ鈍いと言わるけれど、『彼女』は、きっとそれ以上に違いない。
一体、どんな人なのだろう?
ちょっとだけ気になってきた。


「彼女、美人さんですか?」
「どうした? 気になるのか?」
「少しだけ興味が湧きまして。」
「そうだな、美人だぞ。本人は全く自覚ナシだがな。お陰で悪い虫が次々と寄ってくるから困る。」
「なら、やっぱり、うかうかはしてられないのでは?」
「言ったろ。ちゃんと牽制してる、とな。迂闊に近寄れないよう堅くガードしているから大丈夫だ。」


シュラ様にそんなにしっかり守られているというのに、その『彼女』自身は、そんな彼の気持ちに、まだ気付いていないというのね。
正直、羨ましいというか、それ以上に、ちょっとだけ腹立たしく思えてくる。
こんなに素敵な方、しかも、至高の黄金聖闘士である彼に想われていて、全く気付かないなんて!
しっかりしなさいよ、顔も名前も知らない、その『彼女』!
と、そんな気持ちでいっぱいだ。


「もう少し、色んな事に自覚を持ってくれれば良いのだがな。吃驚するくらい鈍くて困りものだ。だが、そんなところが彼女らしいというか、男から見れば心を擽られるとも言えるが。」


そう言って、はにかむような苦笑を浮かべ、照れて顔を伏せたシュラ様。
その滅多に見せない表情に反応した私の心が、トクンと音をひとつ飛ばして打った。
この表情、その『彼女』が見たら、きっと心奪われるだろうに……。
目の前にいるのが私だなんて、シュラ様もちょっとタイミング悪いのかも。


「シュラ様も苦労しますね。」
「そうだな。だが、それも悪くない。」


フッと軽い笑みを零し、止まっていた手を再び動かす。
再開された食事が、後僅かで終わりそうな事に気付き、私は用意しておいた食後のフルーツを取りに、キッチンへと向かった。





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