食後、目の前のシュラ様は、苺をふんだんに浮かべたヨーグルトに、たっぷりの蜂蜜をこれでもかと言わんばかりに掛けて、嬉しそうに口に運んでいた。
正直、見ていて胸焼けしそうです、シュラ様。
本当に甘いものが好きなんですね。
無表情なのに何処か嬉しそうな様子を見ていれば分かります。


これで、この贅肉なんて欠片も見えない見事なスタイルを誇っているのだから、凄いとしか言いようがない。
きっとシュラ様が毎朝こなしているトレーニングは、私如きでは想像も付かない程に過酷なのだろう。
だから、この程度のカロリーなどあっさりと消費してしまうに違いない。


「そんなにジロジロ見て、何が面白い?」
「あ、すみません、つい……。」


シュラ様が甘い物を頬張る姿を、不躾に見過ぎてしまっていた。
流石の彼も視線が気になったらしく、鋭い瞳をコチラへと向けている。


「シュラ様は甘い物がお好きなのだなと思いまして。」
「今更、何を……。」
「それでお酒も結構嗜まれるのですから、不思議です。」
「そうか?」


私がまだ巨蟹宮にいた頃、シュラ様とアフロディーテ様は連れ立って頻繁に顔を出しては、三人で飲み明かしていたものだ。
気に入ったお酒には滅法目がないデスマスク様。
見た目に寄らず豪快にお酒を煽るアフロディーテ様。
淡々と顔色一つ変えずに飲み続けるシュラ様。
何やら楽しそうにお喋りをし、時には言い合い・罵り合いをしながら、空が白む頃まで延々と続けられる飲み会。
そんな日は、私だけ早々に休む訳にはいかず、頃合を見計らってお酒のアテを作って出したり、空いた酒瓶を片付けたりと忙しかった事を思い出す。


「最近は、巨蟹宮へ飲みに行かれないのですね。」
「俺達が行ったら、邪魔になるだろう。」


あ、そうよね。
デスマスク様、今は恋人さんと一緒に暮らしているのでしたっけ。
自分が数日前に追い出された理由だと言うのに、もうすっかり忘れていた。
それもこれもシュラ様との生活が、あまりに濃過ぎるからなのだけど……。


「アフロディーテと二人だけで飲むというのも、こう、何だか乗り気がしないしな。」
「やっぱり三人揃ってないと駄目って事でしょうか?」
「おかしなモンだな。別にそうでなくてはいけないと思ってる訳でもないし、アイツ等といるのが格別に楽しい訳でも、どうしてもなくてはならない存在という訳でもないのに。まぁ、『腐れ縁』といったトコロか……。」


小さく肩を竦めると、シュラ様は空になったガラス容器を私に差し出した。
はいはい、ヨーグルトのおかわりですね。
ちゃんと用意してありますよ。
シュラ様の事、きっとそれだけでは足りないと思ってましたから。


「む、今度はオレンジか?」
「苺があれで最後だったんです。オレンジは、お嫌でしたか?」
「いや、これはこれで美味そうだ。」


そう言って、再び手にした蜂蜜の瓶を嬉々として傾けるシュラ様。
ヨーグルトにたっぷりと注がれる蜂蜜を眺めながら、私は再び激しい胸焼けに襲われていた。





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