「で、二人の様子は、どうだった?」


料理を口に運びながら、シュラ様が問い掛けた。
私達の前に並ぶのは、湯気の上がる温かいラザニア。
獅子宮の二人に届けたものと同じランチメニューだ。


「大喧嘩をしていました。」
「喧嘩だと? 関係が悪化していたと、そういう事か?」
「私も最初はそうかと思ったんですが、どうもそうではないみたいで……。」
「意味が分からん。どういう事だ?」


私は適当に話を濁しながら、シュラ様に獅子宮での出来事を曖昧に伝えた。
彼にしてみれば、要領を得ない私の話に、ハッキリ言えば苛立ちもしただろう。
だが、幾らシュラ様が私の恋人だからと言って、歩美さんの気持ちを教えてしまう訳にはいかない。
多分、彼女は私が同じ女性で、彼女の唯一の味方だと思っているから、心に秘めた自分の想いを打ち明けてくれた。
その信頼を、私は裏切れない。


そんな私の思いを汲み取ったのか。
それとも、意外にもシュラ様が鋭かったのか。
ぼかした私の話でも、何となく理解してしまったようだ。
そうとハッキリは言わないまでも、その言葉の節々に、理解していると匂わせるものが含まれている。


「つまりは喧嘩は喧嘩だが、見るものが見れば、ただのじゃれ合い、痴話喧嘩だと、そう言いたいのだな。」
「え、あ、はい……。そうです、私もそう思って、ある程度の仲裁はしても、深入りはしないようにしてきました。」
「そうだな、それで正解だろう。アンヌは微妙な立場にあるしな。ヘタに深入りすれば、ややこしい関係に巻き込まれて、抜け出せなくなる可能性がある。」


まぁ、そうなったら俺が力尽くで引き摺り出すが。
そう言い放って、その言葉とは裏腹なクールな視線で私を流し見るシュラ様。
その視線にドキリとした私は、思わず手にしていたフォークを取り落としそうになった。
そんな事態になっては大変だ。
シュラ様は暴走したら、きっと手が付けられないに決まっているもの。


「あの……、この事は他言しないでくださいね。」
「俺がペラペラと誰かに喋るような男に見えるか? 案ずるな、誰にも言わん。」
「なら、良いのですが……。」
「どうせ、デスマスク辺りは、もう感付いているんじゃないのか?」


驚いた。
確かに、その通りだ。
シュラ様、教皇宮か双魚宮辺りで、デスマスク様と出くわしたのかしら?


いや、違う。
だとしたら、確実にデスマスク様にからかわれている筈だもの、あの時に気付かれた『添い寝』の事を。
それを私に何も伝えないという事は、間違いなく今日は、まだ彼と顔を合わせてはいない。
ならば、私は何も言わずにいようと思う。
添い寝をしているのが、デスマスク様にバレてしまったという事を……。





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