「私ね……。どうやら、アイオリアの事が好きみたい。」
「え……? えぇっ?!」
「驚いた? あんな派手な喧嘩を見た後じゃ、ちょっと信じられないかもしれないけど、そうなの。」


目を真ん丸にした私が凝視する中、彼女は苦い笑みを浮かべながら身体を屈めた。
そして、包帯でグルグル巻きになった足首を指差す。
何だろう、何か銀の羽根のようなものが、包帯の上、足首のところで揺れている。


「発掘をしていた国に伝わる、おまじないみたいなものなの。この羽根細工を身に着けているとね、悪い事が直ぐに消えてなくなってしまうらしいわ。悪い事が起きないって意味じゃないんだけど、最小限の被害で済む、みたいな。」
「最小限……。」
「発掘現場で、何度も彼と顔を合わせて、色んな話をした。歳が近かったからかな、私とは話し易かったんだと思う。現場は、父をはじめ年齢層が高めだったし……。でね、ある日、彼がこれをくれたの。発掘現場に向かう途中で売っていて、売り子が小さな子供だったから、思わず買ってしまったんだって。」


アイオリア様らしい。
彼女の言う通り、彼は優しい人だ。
力ない子供や女性に対しては、特に。


「その時かな、彼に惹かれたのは。発掘現場では、とても友好的な関係だったのよ。今の険悪な状況を見れば、嘘のようだけど。」
「でも、アイオリア様の事がお好きなら、どうして?」


あんな風に喧嘩する必要なんてない。
彼の好意に甘えてしまっても良いと思う。
歩美さんは、それだけ辛い目に遭ったのだから、チャンスはチャンスとして受け入れたって良いだろうに。


「分からないわ……。こんな状況になって、怪我や掟で半分は不幸かもしれない。でも、残りの半分はラッキーなのよね。こうして彼の傍に、ずっといられる権利を得た訳なのだし……。でも、私も素直じゃないから、すんなり受け入れられないの。それに、アイオリアの、あの顔。如何にも『獅子宮内では、俺が絶対だ。』みたいな顔して、私に命令してくるとね。やっぱりムカムカッときちゃうの。」


恋愛というのは、そういうものなのだろうか。
正直、恋愛事には滅法疎い私には、いまいち理解出来ない。
これが自分だったら、相手がシュラ様だったら、私はどうするだろう、どういう態度を取るだろう。
考えてみたけれど、まるで分からなかった。
実際に、自分がそういう状況に置かれてみないと、分からない事なんて山程にある。


「それにね、昨日もちょっとだけ思ったんだけど……。さっき確信しちゃった。」
「何をですか?」
「アイオリアが、アンヌさん、貴女を好きだって事。」
「っ?! そ、それは……。」


事実だから否定は出来ない。
だけど、私の気持ちはシュラ様にある訳で、だから、アイオリア様の事は、いつかきっちりケジメをつけなきゃいけないと思っている。


私は彼女の目を見ていられなくなって、静かに俯いた。
歩美さんの想いを知ってしまった今、心の中は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。





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