朝の爽やかな日差しが窓から差し込み、穏やかな風がダイニングを通り抜けていく。
そして、私達の食事は和やかに――、進む筈はなかった。


居合わせてしまった私の方が居心地悪く感じてしまう、それ程の険悪なムード。
それは勿論、マフィアも尻込みしそうな鋭い視線を放つシュラ様と、そのマフィアを率いてそうな凶悪顔のデスマスク様、お二人のせいで。


「……デスマスク。貴様、いつまでもこんなところでノンビリと朝飯など食ってて良いのか?」
「あ? 俺が何処で何をしてようが勝手だろが。メシくらい、ゆっくり食わせろ。」


向かい側の席に着いていながら全く目を合わせようとはせず、淡々と食事を進めていた二人。
だが、沈黙を先に破ったのは、シュラ様の方だった。
食事を進める手は止めず、それでいて、やはり顔を上げないまま氷点下の声色で言い放つシュラ様。
それは暗に「早く帰れ。」との催促だ。


しかし、それに気付いていながら、デスマスク様は顔色一つ変えずに、かつ、食事のペースも全く変えない。
そんなところは流石に図太いと言うか、何と言うか……。


「でも、私もシュラの言う通りだと思うけど。ただでさえ朝帰りな上に、こんな時間まで帰って来ないんじゃ、彼女も心配するだろう?」
「チッ。どいつもこいつも煩ぇな、ったく。オマエ等は俺の保護者かよ。」


食事の席には少しお行儀の悪い舌打ちをした後、デスマスク様は静かにフォークを置く。
そして、カップに残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
それでも、まだ苛立ちは抑えられないのか、もう一度、低く舌打ちをする。


「……アイツ、今は宮にいねぇんだよ。」
「いない? 遂に逃げられたのか?」


無神経なシュラ様の放った一言に、勢い良く顔を上げたデスマスク様が、ナイフのような視線を向ける。
それこそ、視線で人を殺せそうな鋭さで。
横で見ているだけでも、本気で怖いのですが……。


「ぁあ? なンで逃げられなきゃなンねぇんだよ! ただの帰省だ、帰省!」
「ふ〜ん、帰省ねぇ……。」
「男と女の関係には倦怠期は付きモンだ。仕方ねぇ。オマエ等も、そのうち分かるってモンさ。」


凶悪顔から一転、いつものニヤリ笑顔を浮かべてシュラ様と私を交互に眺めやるデスマスク様。
その楽しそうに歪んだ視線にギクリとする。
自分の話から、巧みにシュラ様と私の事へと話題を変える。
デスマスク様はこういう振り方が非常に上手い。


「ま、昨日・今日で、やっと一線を越えた二人には、倦怠期なンてモンが来る事すら、思ってもみねぇンだろうがな。」
「まだ一線は越えていないぞ。」
「ゴホッ、ゴホゴホ!」
「大丈夫かい、アンヌ? 喉に詰まった?」


そして、シュラ様は相変わらず天然だ。
どうして、それを言ってしまうのですか?
それを彼等に暴露する必要なんて、何処にもないのに。
ただ、ひたすらからかわれて弄られるだけだと分かっているのに、サラッと言ってしまうシュラ様の心境が、まるで分からない。


ゴホゴホと咳が止まらないまま、横のシュラ様を見遣る。
彼は何とも思っていないのか、涼しい顔で紅茶を啜っていた。





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