新しい白ワインのコルクを抜きながら、デスマスク様は言葉を続けた。
口調は変わらず、酷く呆れた様子。


「オマエねぇ。暴走猫って言ったら、一人しかいねぇだろ。アイオリアだよ、ア・イ・オ・リ・ア。」
「あ、アイオリア様……、ですか?」
「そーそー、アイオリア。オマエ、告られたンだろ?」


どうして、ココでこの話を振ってくるんでしょうか、デスマスク様は。
私は、思わず隣のシュラ様の様子を、チラッと盗み見てしまう。
だが、彼は相変わらず淡々とお酒をグラスに注ぎ、グイグイと飲み続けていた。
それこそ顔色一つ変えずに。


「ま、まだされてませんから! 告白とか、そういうものは……。」
「ぁあ? そっか、あれか? 戻って来てからだっけか?」
「え、何? 任務から戻って来たら、キミに告白するって言ったのかい? あの、アイオリアが。」
「告白というか、大事な話があるから、と……。」


シュラ様の前で話すには、あまり面白い話題ではない。
寧ろ、ソワソワすると言うか、気が気じゃないと言うか。
彼がどんな反応を見せるのか気になって、でも、何度、様子を窺っても、淡々とマイペースに飲み続けているだけのシュラ様に、ちょっと落胆してしまう自分が嫌になる。


それよりも、シュラ様。
今日は、ヤケにハイペースじゃないですか?
あまりに無表情なままで淡々と飲んでるから気付かなかったけれど、よくよく見れば、彼の周りには物凄い数の空き瓶が転がっている。
しかも、結構アルコール度数の強そうなお酒ばかり。


「そこがオマエの鈍いトコロだっての。大の男が、惚れた女に対して『大事な話がある』って言ったンだ。そりゃ、愛の告白しかねぇだろが。」
「告白とは限らないんじゃないのかい? 思い込んだら一直線なアイオリアの事だ。告白などすっ飛ばして、いきなりプロポーズかもしれないよ。」
「ぷ、プロポーズッ?! そ、そんな、まさか?!」


アフロディーテ様の口から飛び出した爆弾クラスの発言に、飲んでいたオレンジジュースを噴きそうになった。
告白かどうかもまだ分からないというのに、どうしていきなりプロポーズだなんて話になってるの?!


「いや、有り得るかもな、ソレ。アイオリアの事だ。『お付き合いから』なンて、まどろっこしい事しねぇで、『俺の嫁になってくれ!』ぐらいの勢いで、子作りから始めそうだモンなぁ、アイツ。クックック……。」
「な、何の話をしてるんですか! どうしてそんな、こ、子作りだなんて……!」


シュラ様の前で何て事を言い出すのだろう、この人は。
こんな話でからかわれるなんて最悪だ。
でも、シュラ様はやっぱり顔色どころか、気にする様子さえ見せない。
それはそれで、ちょっと切なくなる。


「どうするんだ、シュラ? そうなったら、一番困るのはキミだろう。」
「どうするも何も、そんな隙は与えんと言っている。」
「猫が子作り始める前に、山羊が先に種付けしちまうってか? アッハッハ、こりゃ傑作だ。」


誰か、この酔っ払い共を止めてください!
お酒が相当に回ってきたのか、さっきから下ネタのオンパレードなんですが!
仮にも女の私がいるのですから、そういう話は止めて欲しい、本気で止めて欲しい。
酔っ払いさんの話し相手になるのは疲れます。
私もう、お部屋に下がっても良いですか?





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