お皿やグラスを沢山乗せた大きなトレーを手に、私はキッチンとリビングを何度も往復していた。
今日はただのディナーではなく、いつ終わりが来るとも分からないシュラ様達三人――、良く言って親友、悪く言って悪友仲間の果ての見えない飲み会。
なので、ダイニングではなく、初めからリビングのテーブルの方に全てのセッティングをしていた。


キッチンには、並んで調理をする二人の男性。
共に丈の短い黒のカフェエプロンを身に着け、テキパキと調理を進めていくシュラ様(流石に今は服を着ている)とデスマスク様。
キッチンへと戻る度、二人の長身で見事な体躯の広い背中が否応なく目に入る。
正直、手を止め足を止めて、その二人の後ろ姿に見惚れていたくなる程に格好良い。
軽く会話を交えながら、驚く程の手際良さで次々と見事に料理を作り上げていく。


「オイ、こら。手も足も止まってンぞ、アンヌ。」
「す、すみません。つい見惚れてしまって……。」
「ほぉ? そンなに俺の料理姿が格好良いってか?」
「久し振りに拝見しましたが、やはりデスマスク様の包丁捌きは素晴らしいですね。もう既にプロの域ですよ。」
「って、ソッチかよ。」


ガックリと肩を落とし、ワザと落胆した風にみせるデスマスク様に向かって、心の中でだけ舌を出す。
正確には、どっちの意味でも見惚れていた。
お二人の素敵さと、料理の腕前。
デスマスク様は勿論、シュラ様も。
トルティージャを作っているところを見た事はあったが、ココまで本格的な料理を、しかも、これだけ手際良くやってのけるとは。
普段の自堕落・面倒臭がりなシュラ様からは全く想像出来なくて、ついつい視線が彼へと向いてしまう。


やはり、私は料理をする男性に心惹かれる傾向があるようだ。
普段の、あんなだらしのない状態のシュラ様でも格好良く見えてしまうというのに、料理中の今は、その格好良さが数十倍、いや数百倍。
額の汗を無造作に手の甲で拭いながら、フライパンを振る仕草ときたら。
野菜の火の通り具合を、片時も目を離さずに真剣に見つめる、その眼差しときたら。
もうもう、見ているだけで、お腹一杯になりそうです。


「……オマエ、分かり易いよなぁ。」
「な、何の話ですかっ?」
「さぁ、何だろうなぁ?」


訳知り顔でニヤリと笑って、でも、料理をする手は一切止めず、盛り付けを終えたお皿を、私の持つトレーに遠慮なくドンッと乗せるデスマスク様。
これは確実に私の気持ちに気付いていて、ワザとからかっているパターンだわ。
ていうか、いつの間に、デスマスク様に気付かれていたの、私っ?!


「ま、分かり易いのは、オマエ一人に限った事じゃねぇがな。」


焦り捲くる私に、満足そうにほくそ笑んで。
それから、デスマスク様はクルリと背を向け、何故かシュラ様の肩をポンッと叩く。
勿論、フライパンの中身と真剣勝負していたシュラ様には私達の会話など聞こえてはいなくて、彼は眉を顰め怪訝そうな顔をしてコチラを振り返った。





- 6/8 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -